解説者の目が光る! 第3回
現在、解説者として活躍中の往年の名選手の皆さんに注目する選手をピックアップしてもらう、このコーナー。
第3回は、緒方浩一さんが気になる手島慶介(75期)、有坂直樹(64期)、山崎芳仁(88期)、そして九州期待の先行選手・荒井崇博(82期)。緒方さんが見る北日本選手と九州選手との差とは!? 緒方浩一
緒方浩一のこの選手に注目!!
手島は、混戦になればなるほど信頼できますね。

車 券的に狙いやすい選手っていうことで言うと、まずは手島慶介選手(群馬/75期)ですね。
 本当に力がある選手で、1年2ヶ月でしたかね、長い配分停止があったんですが、よく立ち直ったと思います。僕も現役の時、2ヶ月くらい配分停止をもらってね。やっぱり苦しいですよ。練習やっても、目標がないだけに、どこまでやったらいいかわからないし。
 
手島慶介photo
< 手島慶介選手>
     
  2ヶ月でも苦しかったのに、1年2ヶ月という長い期間ですからね。生活も苦しかったでしょうし、どうやって気持ちを持っていったのかなぁと思いますね。
そういうのを経験している人は、精神的な強さが変わってきますよね。これは難しいな、苦しむんじゃないかなっていうレースで本当に強い。混戦になればなるほど信頼できるんですよね。同じレースに乗り合わせた自力選手がトップの選手でないときは、どの位置にいてもいいというくらい。
 
彼の戦い方は、自分より強いと思う先行選手がいたら番手を狙って、「俺の自力でもなんとかなる」と思うときは中団下降しながらの捲りという風に、完全に分散されているように感じますね。FI戦なんかは本当に安定しています。
 本人は「まわりの練習仲間が良くて、力をつけてもらってます」なんて謙虚なことを言ってますけど、配分停止をもらった時の責任感みたいなもので、一戦一戦を大事に戦っているんだと思います。
 だから、ファンとしても本当にお金を預けられる数少ない選手じゃないでしょうか。
あと、今は東北ラインが充実してますけど、中でも注目は有坂直樹選手(秋田/64期)。追い込み選手ですが、自力も持ってますから、いい意味の突っ込みがすごく光ってるなと思いますね。
 東北ラインの自力選手が強いということで、そのラインに乗って3番手を回ったときの有坂っていうのは、車券的に魅力があるんですよね。
 サマーナイトフェスティバルで優勝して、大きなタイトルを1つ獲ったことで、もちろん自分も変わるんでしょうけど、周りの見る目も変わってきますから、今まで差せなかった選手を差せるようになったり、どうしても勝てなかった選手に勝てるようになったり…っていうことは起こってきますよね。
 レースに対して非常に厳しくて、シビアな考えも持っているので、そういう意味ではすごく信頼をおける選手じゃないでしょうか。
九
合志正臣Photo
<合志正臣選手>
州では、合志正臣選手(熊本/81期)と荒井崇博選手(佐賀/82期)の2人ですね。吉岡稔真選手(福岡/65期)や小野俊之選手(大分/77期)もいますが、若手の中では、この2人が今後の九州を引っ張っていってくれるだろうと思っています。
 合志選手は、ダッシュやスピードに関しては非凡なものを持っています。
 ただ、追い込み選手としては体が小さいというハンデがありますから、俊敏に捌く技術が要求されます。
 横の競り合いで強くなるのか、縦のスピードを活かしながらダッシュで決着をつけるのか。本人がハッキリわかったうえでそれを実際に経験してみないと、追い込みはそう簡単にはできないでしょうからね。
荒
乾準一Photo
<荒井崇博選手>
井選手の場合は、先行選手とはどういうものかということを理解できていますから、FIで勝ってGIに来た選手と対戦することになった時、相手が自分より点数が上で、しかも自分より評価されていたりすると、すごく燃えますよね。所詮はFIの選手じゃないか、自分はGIの選手だというプライドを持っているから。それだけの練習をやっているんだという自信もあるでしょう。先行は厳しい練習をきちんとしないと結果がついてきませんからね。それを荒井選手はよく理解していると思います。
他に、これから強くなってきそうな選手という視点で考えると、やっぱり東北の選手ですね。
 ふるさとダービー豊橋の最終日、神山雄一郎(栃木/61期)選手の前で先行した山崎芳仁(福島/88期)選手はいいと思いますね。
 東北の先行選手は、他県の選手にはない地脚を持ってるんですよね。彼らの地脚はハンパじゃない。
 地脚っていうのは、競輪の基本ですからね。先行や捲りという技術を覚えるのはそのあとです。だから、競輪っていうのは、先行で強いのが一番強いんですよ。そういう意味で、自力で売り出している東北の若手は期待できますね。
 なぜか、九州ではそういう若手がなかなか少ないんですよね。それはやっぱり、アマチュア時代からの歴史でしょうね。
 僕も高校の時に国体やインターハイに行ったんですけど、長距離は東北の選手に勝てなかったですね。
 ヨーロッパの選手と日本の選手が戦うと、日本人は短距離でしか勝てないじゃないですか。それと同じことを、僕たちは東北の選手に対して感じていました。
 4000m速度とかポイントレース、団体追い抜きなんかは勝てないから、スプリントとか1000mで勝負しようかな、という風に。監督の考えもそうだったし。
 東北は、やっぱり耐える力を持っていますよね。それが自然と歴史になっているというか。これはどうしようもないんですよね。
今の競輪の練習は、短期間でボッとやるっていうやり方だから、九州の選手の脚質に合ってるんですけれどね。長く維持しようということになると、東北の選手の方が強くなると思います。
 性格的な違いが大きいんだと思いますね。
 東北の選手は一度つまづくとなかなか開き直ることができないけど、九州のヤツはダメな時でも「どうにかなる」って開き直りが強いじゃないですか。頻繁に台風が来るから、せっかく建てた家が壊れることもある。だけど、それでガクッていうんじゃなくて、「じゃあまた建てんと雨に濡れるから」って考えるのが九州人。そういう環境的なことで基本的な性格ができあがったんじゃないですかね。
東北で雪が降る時に「どうにかなろう」では死んでしまいますからね。九州ならそれでどうにかなっていきますけど。
 もし東北の人がそういう開き直りができるようになってしまったら、本当に強いと思いますよ。
 たとえば伏見(俊昭)君なんか、力的には「この人に勝つ人なんていないだろう」と思うほどなのに、何を悩むのかねぇ。そのせいで勝てないんだと思うんですよ。だからいつも言うんです。「勇気を与えてあげようか」って。なんかそういう台詞があるでしょ、マンガで(笑)。
本当なら、強い選手が強い勝ち方をしなきゃいけないと思うんだけど、今は強い人が勝つんじゃなくて、勝った人が強いんだからね。そのへんが難しいところですよね。
 解説をしていても、真剣に展開を考えて、力的にもコイツで間違いないなって思う選手が来ないから、苦しいことも多いんですよ。お客さんとしても、昔みたいに1点、2点に絞って買って、それでハズれたらしゃあないっていうような競輪をする人は、長続きしないでしょうね。手広く買わないと。
 でも、競輪って、考えれば考えるほど本命・対抗になるんですよね。
 データを集めて、5日制の中で4回走る人を3日間見続けて、コイツは不調だから要らないとかコイツは絶好調だとか、準決勝はこのメンバーでたまたま失敗したけど最終日は固いなとか考える。
 それなのにそれが来ないんだから、困っちゃいますよね。
 競輪を長く見てるファンには「評価は低いけど、コイツはこういうレース形態のとき強いんだよ」っていう選手が必ずいると思うんですよ。本命じゃないから「絶対に勝つ!」っていうんじゃないんだけど、こういうレースではいい競走するから面白いっていう選手が。
たとえば、混戦になったら強いっていうのは、森内章之選手(熊本/64期)とか山口富生選手(岐阜/68期)とか合志とかね。あるいは、初日に強い選手っていうのもいるし、なんでコイツが最近こんなに成績が安定してるの?っていうのもいる。
 本命党じゃないファンは、そういうところを見て、メンバー構成によって「これを買ってみようかなぁ」っていう買い方をすることもけっこうあるんじゃないですかね。それでも当たるから。
 むしろ、高配当を狙うためには、そういう狙い方の方が今の競輪にはあってるのかもしれませんね。
 ただ、選手に言いたいのは、力を出し切れってことですね。今の選手は競走が多くて走りすぎだと思うから、たとえ負けるにしても理由のある負け方があると思うんです。自分が車券を買うつもりで走ってほしい。
 選手たちに競馬とか競艇とかオートレースとかを趣味でやらせた方がいいと思うんですよ。1回、車券なり馬券、舟券なりを買ってみろと言いたいですね。自分の金で買って、負けた時の気持ちはどうなのか、味わってみろと。
 競輪をスポーツと思うのはやめてくれ、と思います。競輪はギャンブルなんですよ。オリンピックのKEIRINとは違う。選手には、そこを履き違えてもらいたくないですね。

(月刊競輪 2005年11月号)

BACK