シューティング・スター・プレス vol.11
悔しさが原動力だ! 偉大な先輩たちの思いを胸に急成長
稲垣裕之は昨年、最もブレイクした一人であろう。気持ちを前面に押し出したその潔いまでの快速先行でメキメキと頭角を現し、今では「村上義弘の魂を受け継ぐ男」とさえ評される。その熱い走りで、ビッグ戦線を賑やかす! 稲垣裕之 京都・86期
9着惨敗から闘志再燃! 特別競輪を走って得たものの大きさ

   昨年9月のオールスター(西武園)での特別競輪初優出、そして今年2月の西王座戦(玉野)優出とビッグでもその先行力をいかんなく発揮している稲垣裕之。そんな大躍進の「きっかけ」と振り返るのが昨年の第57回日本選手権競輪(静岡)の準決勝の一戦である。
「(連勝で勝ち上がった)準決勝で小嶋敬二さんに突っ張られて主導権取れなかったんです。いざ特別競輪、大舞台の準決勝になったら主導権取れへんのか、という印象付けをしてしまったことが一番の反省点になりました。
  だから、そこからもう一回初心に戻って主導権取りを心がけて。ダービーで準決に乗れたっていうのも一つの自信になったし、そこから反省材料も一緒にわかり、収穫のあった大会でした」。
 この時の「9着惨敗」が大きな糧となった。特別競輪の経験を重ねる上で、競走に対する意識の変化もあった。

  「先行選手と番手選手、お互いギブアンドテイクだと思いましたね。どっちが偉いとかそういうのは全くないということ。デビュー当時は、『先行で引っ張っていく!』っていうイメージがあったんで、『引っ張ってるんじゃないんだ』ってことを特別に行って勉強になりました。近畿はマーク選手も自分の仕事をきっちりとする先輩ばかりですしね」
 ラインの意識が芽生え、さらに信頼関係が強固なものになっていく。その上で、先行と番手の役割が明確な近畿は最高の地区であった。
  2月の奈良記念では地元の大井啓世を4日間引き連れ、そして優勝に導いた。その決勝は、大物ルーキー武田豊樹とのリベンジマッチでもあった。
「武田さんに勝つということと、ラインから優勝者を出すというのが奈良記念の課題だったんです。武田さんはやっぱり力は抜けたものがありますし、前回地元(9月京都向日町FI・優勝武田)でもやられてましたからね。だから決勝では、その目的の両方ができたので、僕的には満足できる大会でした。『競輪は力だけじゃないぞ』っていうところも証明できましたしね」
憧れ、目標選手、心の支え… 村上義弘という存在と影響力
競輪は気持ちで走るもの、そう稲垣は断言する。そんな稲垣の快進撃を支えているもの、それは村上義弘の絶対的存在である。2月の西王座戦、準決勝。稲垣は村上と同乗、2回目となる連係を果たすことになる。だが、番手の村上も巻き込まれる大量落車。稲垣も本来の先行を発揮できず、優出はしたが、不本意な結果に唇を噛んだ。
「僕の調子自体もそんなによくなかったんです。とにかく後ろについてくれて、緊張してました。レースでは普段のかかりじゃなかったんで、村上さんには迷惑かけました。

2月西王座戦(玉野)準決勝で、(4)稲垣が(3)村上を引き連れて最終ホームから先行策に出る。
僕がジャンから目一杯行きましょうかと言ったら、『そんなもう無茶駆けはするなて、二人で決勝に乗ろうな!』って言うてくれたし。村上さんもきっちり番手の仕事をやってくれたから、僕の役目ができなかったのが、悔しくて…。先行日本一と言われる人が、後ろついてくれるっていうのは重大な事ですし。これからもがんばらなきゃって思いますね。村上さんより先行意欲あるレースをせんことには、前走らせてもらう資格ないんで。だから今年の目標は、村上さんと3度目の連係を成功させること。僕と村上さんが同乗するためには、それなりに大きいところでないと実現しませんから。僕が頑張らないとね(笑)」
 先行選手として活躍は全国区となったものの、だからこそ負う宿命もある。

「これからは新人の先行争いの挑戦を迎え撃たないといけない立場ですからね。これからが大変です。 自分もそうですけど、挑戦するのは簡単ですし、気持ちも楽です。でも村上さんはそうやって、大きくなったんですからね」
 村上の歩んだ道をなぞるように稲垣も突き進む。そして今年も「きっかけ」となった日本選手権競輪がやってくる。稲垣にとって松戸は感慨深い地でもあると言う。競輪選手になる前に自衛官として3年間、館山航空基地(千葉)に所属していたのだ。
「松戸で競走があると、たくさん仲間が来てくれますからね。今回は、横断幕も作ってくれているみたいなんで(笑)。千葉は僕にとって第2の故郷みたいなもんなんですよ。33バンクも得意なので、がんがんアピールしたいですね!」

(月刊競輪 2005年4月号)


稲垣Photo PROFILE
稲垣裕之(いながきひろゆき)
昭和52年7月28日生。B型。師匠は八倉伊佐夫(京都・42期)。競輪学校在校順位は23勝で14位。練習は「バンクのモガキが中心。ウエイトは松本整さん(引退)にメニューを作ってもらっています」。
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