シューティング・スター・プレス 柴崎淳

   新時代を担うニュースターの誕生を誰もが予感した一戦だった。8月の四日市記念決勝戦。一番人気は武田豊樹−神山雄一郎の関東ライン。そしてS級S班の渡部哲男や好調・石橋慎太郎といった強力自力型に、地元・三重から唯一のファイナリストとなった柴崎淳が挑んだ。「作戦的には中団から、後ろのラインが抑えてきたらすぐ巻き返す予定だった」のだが、前受けの武田が抑えに来た石橋を突っ張ったことで状況が一変。石橋が下がったことで、柴崎に好機が訪れた。
 「どうなるのかなと思ったら石橋さんが引いてきたので、外から行くより内からしゃくった方が良いかなと思って内に行ったんです。後ろの山口(幸二)さんの援護もありましたしね」
   絶好の4番手に入った柴崎は、持ち前のスピードで2コーナーから捲り発進。武田を飲み込み、直線でもマークの山口を2分の1車輪差で制して記念初優出、初優勝を地元で果たす快挙となった。
 「地元戦は練習で踏んだ感じも悪くなかったし、準決勝まで行けたらいいかな、くらいの気持ちでいたんですよ。そうしたら決勝に乗ってしまったので、『優勝したいですね!』みたいなことを言っていたら、実際に出来てしまって(笑)。狙ってはいないんですけど、決勝は展開的にそういう感じになりましたね。優勝はゴールしてから気づきました。『やばい! やってしまった!』って思いました(笑)」
   もちろん、この優勝への布石はいくつもあった。7月の寛仁親王牌でGTに初出場。成績的には8着2着7着9着と奮わなかったものの、気持ちの面でかなりの収穫があった。
 「今は出来すぎみたいな感じで、自分でもびっくりしているし、練習もずっと変えていないから好調理由みたいなものも無いんです。ただ、寛仁親王牌で強い選手と戦ったので、気持ち的には楽になったのはあります。GTに初めて出たことによって、自分の中で変わったと思うので、あの寛仁親王牌はひとつのキッカケだったと思いますね。後ろから抑えたりして先頭に出ても、すぐ叩かれたりして展開が早くて対応できなかったんですよ。まだまだ通用しないなというのも分かったし、また頑張れる気がしたので、そこは良かったと思います」
   
格上の選手だって「同じ人間」気持ちで負けずに上を目指す

 8月の頭には奈良FTで完全優勝。およそ1年ぶりのS級優勝も自信になったという。
 「準決勝、決勝と福島の新田祐大さんに勝てたというのが大きかったですね。それが記念にも繋がったと思います」
 さて、記念優勝後も9月富山FTで完全優勝を飾るなど、勢いはとどまるところを知らないが、柴崎自身はこの好成績を冷静に受け止め、次なる課題克服に努めている。
8月四日市記念の決勝ゴール。(8)柴崎が捲りで記念初Vを地元で決めた。
8月四日市記念の決勝ゴール。(8)柴崎が捲りで記念初Vを地元で決めた。
 「実力がついたかどうかは、よく分からないんですよ。今の成績は、ただビックリするだけで、強くなっている実感はないんです。上位との差を埋めるには練習ももっとしないといけないし、精神面をもっと強く持たないといけないのかなと思いますね。ビッグレースになるほど、対戦する選手もビッグネームになってくるんですけど、そういうのも考えずに、『みんな同じ人間だ』という気持ちでいければ勝つこともできると思っています。レース内容でもスピード的には負けていないと思いますが、4コーナーからゴールまでの粘りがまだまだ。特に先行したらすごく感じるので、もっと強化していきたいです」  快進撃ともいえるほど上昇一途の柴崎だが、四日市記念初日にテレビで北京オリンピックを観戦した。そして、大きな目標を胸に抱いた。
 「永井(清史)さんの銅メダルを見て、すごい感動したんです。永井さんは同じ中部地区としての先輩でもあるし、WCCに行った先輩でもあるので、尊敬していたんです。あれを見て、自分もあの舞台に出たい、メダルを獲りたいという気持ちが強くなりました。ロンドン五輪については師匠の佐久間(重光)さんにも言われているので、自分的にも目指していきたいと思います」
  永井の力走は、こうした後進の心にも強い光を射したようだ。日本で、そして世界でも活躍が期待される柴崎の「挑戦」はこれからも続く。
 「競輪では、これからもグレード戦線で活躍できるように頑張りたいと思います。ふるさとダービー広島もまずは準決勝を、堅く言ったら一次予選突破を目指して頑張りたいですね」


(月刊競輪 2008年11月号)


柴崎 Photo PROFILE
柴崎 淳(しばさき・あつし)
1986年9月19日生まれ。身長174p、体重75s。在校順位は23勝で7位。師匠は佐久間重光(41期)。最近の練習は「午前中は練習グループ(北勢グループ)で街道かバンクで練習して、午後は自由なので街道に行くかウエイトトレーニングですね」
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