解説&分析

 3年振りに近畿に高松宮記念杯競輪が返ってきた。
 岸和田では2年前に伏見俊昭が優勝した全日本選抜以来のGIとなるが、このバンクでは数々の名勝負があり、今回はどんな展開が待ち受けているか楽しみなシリーズである。高松宮杯は初日のみ東西別れてであるが、個人的には決勝まで別れての勝ち上がりが伝統であり、ふさわしいと思う。
 確かに東西王座戦があった事もあるが、それは高松宮杯トライアルシリーズとして位置付けすれば済んだと思う。しかし今年からその東西もなくなり、他のGIとの差別化をする意味でも東西別れての勝ち上がり復活を望みたい。準決勝は2個になるが、毎回同じような組合せの準決勝より特色が出て良いのではないか。そしてその結果決勝戦も他のGIにはない盛り上がりが期待できるだろう。
 さて今年の初日一次予選の番組を見る限りでは、東は力が拮抗しており波乱含み。西は軸となる選手がしっかりしていて本線で決まる様な気配であった。
 そして一次予選では新田祐大がここまでの好調さを強調するかの様な走りをした。特選では「青龍賞」を征した佐藤友和が完全復活を宣言したかの様な圧巻の捲りであった。結果、配当的には東西共に、同じような形に終わった。
一次予選新田祐大選手
一次予選新田祐大選手
佐藤友和選手
佐藤友和選手
 2日目二次予選は比較的順当な勝ち上がりで終え、3日目準決勝を迎えた。その準決勝は、3個レースそれぞれ違う特色のある組合せになった。注目は11Rでの脇本雄太、新田祐大、深谷知広の力の対戦である。脇本の先行を強引に深谷が叩きに行き、新田が間髪入れずに捲った見応えのあるレースだった。勝った新田はレースの流れに自然に乗れたのも勝因であるが、持てる力を早めに出し切ったのも勝因だろう。そして4日目決勝となった。
準決勝11レース最終ホーム
準決勝11レース最終ホーム
準決勝11レースゴール
準決勝11レースゴール

 そして迎えた決勝戦。自分の展開予想は以下のこのようになった。

決勝戦展開予想

 近畿ラインは藤木裕を先頭に地元の南修二と稲川翔。福島ラインは新田祐大に成田和也、伏見俊昭の並びになり、佐藤友和は別線勝負で神山雄一郎がつけ、荒井崇博は単騎で切れ目からとなった。
 藤木が押え先行で新田がこれに対抗する形だが、佐藤が連日位置には全くこだわらず最後尾からの仕掛けを選択している。この決勝でもそのレース運びなら新田は容易く4番手もしくは5番手を獲れる。連日佐藤は圧巻の最後尾捲りを披露しているが、その形で新田を前において勝てるのかと言えばさすがに疑問である。藤木ラインの後ろを獲りに行き新田を早めに動かす事がポイントになる。
 新田にとって位置は偶然の産物と考えホームぐらいの仕掛けをすれば十分勝機がある。初タイトルを意識し過ぎ仕掛けを遅らせればタイミングもずれ大敗につながる。そして成田に交わされる事も考えず力を出し切るレースが優勝への近道だろう。佐藤にとっては位置を獲りにいくのはあくまで新田を早めに動かすためであり、その目的を果たせば早く単独になる事が大切になるだろう。そして先手を取りそうな藤木は新田を封じ込め仕掛ける事が理想だが、地元が付けるだけにやはり押え先行を選択するか。他の選手がタイトルを意識している雰囲気が漂っているなら遅めのかまし先行も可能になり、その時は近畿で上位独占も考えられる。いずれにしても新田の力と勢いが勝っている。
決勝番組
1番 南 修二 大阪
2番 成田 和也 福島
3番 佐藤 友和 岩手
4番 神山 雄一郎 栃木
5番 藤木 裕 京都
6番 荒井 崇博 佐賀
7番 伏見 俊昭 福島
8番 稲川 翔 大阪
9番 新田 祐大 福島

車券推理
⑨-②-⑦①③⑧
②-⑨-⑦①③⑧
③=⑨-②①⑧
②=③-⑨
①=⑧-⑤②③

レース回顧

佐藤がスタートを取らなかったことで少し牽制気味の展開のなかで藤木裕が前受けになり、中団に福島勢。そして単騎の荒井で佐藤ラインとなった。
藤木は突っ張り気配もあったが佐藤に押えられ新田先行態勢。藤木は、展開は違うが新田に叩かれれば3番手勝負と決めていたのか少し内を狙った。しかし締められ、巻き返せず。そこから新田の先行でラインが出切った。その瞬間、成田の優勝が決まったと言っていい。好気配の佐藤も下げてきた藤木にタイミングをずらされた事もあったが成す術がなかった。新田祐のケレン味ない先行で連日バンクを湧かせるスピードを披露し、この決勝も本命視され自身も優勝を意識しながらの戦いではあったが躊躇せず展開に逆らわず力を出し切った。優勝こそ出来なかったがこのレース内容は今後の財産になる。優勝した成田は前場所の函館記念で番手追上げ優勝。自ら流れを引き込んだ感がある。勝負する事の大切さを改めて痛感。捲りなら新田を差せなかったかも知れないが、流れが成田にあった。それは準決勝で新田と同乗出来た事。そして捲りになり、成田が差せなかった事もある。その事で新田は先行でも今回の出来なら十分と思ったかも知れない。それらを考えるとやはり成田に一連として流れがきていた。北の番手は成田。今後も更に活躍を期待したい。
決勝9番新田選手・2番成田選手
決勝9番新田選手・2番成田選手
決勝最終ホーム
決勝最終ホーム
先行する9番新田選手
先行する9番新田選手
決勝ゴール
決勝ゴール

推理結果

表彰式
表彰式
的中ではあるが、もつれた展開も考えていたため新田が捲り優勝に重きを置き、そして伏見がそのもつれでついて行きにくいと考えていたので手広くいった。実車券ならいわゆる「取りガミ」になっていたであろう。実際そうであった。

最後に今回の高松宮記念杯競輪は新しい時代を感じた。ここ数年上位選手の顔ぶれに大きく変化がなかった。しかし、ようやくその時が来たのかも知れない。