解説&分析

サマーナイトフェスティバルが意外なことに初めていわき平競輪場で開催された。
このシリーズは2日間自動番組で1着権利で決勝進出。2日目のその他のレースも6着までそれぞれの着順に応じて組合せとなる。
それが故に決勝進出も運が重要な要素となる。そして本命視される選手、特に自力型は1着を意識しての仕掛けになる事は当然だが、その事を余りに意識し過ぎると何もできず大敗してしまう。ファンの方から見れば凡走とも思える。
しかしこれが1着取りの競輪である。
競輪は全ての戦法において3着まで入れる事を基本とする作戦を組む選手が多い。そしてその教えをほとんどの選手が頭に入れている。力が突出していない限りこの事を出来ない選手が大成する事はあまりない。先行選手と番手選手。そして3番手の選手と現在の競輪は圧倒的に3分戦が多い。そして車券は3連単が大きなシェアを占める。
車券と言う観点から見れば、普段の競輪とは考えを変えて推理しなければならない。それが故のフェスティバルでもある。
その中で行われたサマーナイトフェスティバル初日は、1Rでは坂本兄弟が乗り合わせ、兄である健太郎が勝ち上がった。7Rでは近畿の自力選手が揃いライン形勢。今、最も乗れている地元の新田祐大がこのラインに屈した。そして逆に有利と感じた6Rの成田和也であったが、展開は万事休すとなったが、それをはねのけ見事に1着。8Rの深谷知広も竹内雄作を目標とし最悪の8番手、竹内も不発に終わり大外を回されたが力で1着。さらに最終9Rの村上義弘は凄かった。番組的には鈴木謙太郎が先行しやすい構成で村上が少し苦しむかにも思えたが、打鐘からの押え先行。自分のペースに持ち込み逃げ切った。
さすがだった。
初日を勝ち上がった選手による決勝は近畿勢が脇本雄太に村上がつけ松岡健介まで3車になり、俄然有利。
成田は佐藤友和を目標とし、深谷は単騎となった決勝戦である。
初日1Rゴール 6番坂本健太郎が1着。
初日1Rゴール
6番坂本健太郎が1着
初日6R最終ホーム 1番成田和也。
初日6R最終ホーム
1番成田和也。
初日7R最終ホーム 4番山田久徳、2番水谷好宏、7番松岡健介の近畿勢が先行。
初日7R最終ホーム
4番山田久徳、2番水谷好宏、7番松岡健介
の近畿勢が先行。
初日8R 2番深谷知広が1着。
初日8R
2番深谷知広が1着。
初日9R 最終ホーム 1番村上義弘が先行。
初日9R
最終ホーム 1番村上義弘が先行。

第9回サマーナイトフェスティバル(GII)決勝
近畿勢は役者が揃い万全の先手取りから。その後ろを単騎の坂本健太郎が追走するか。
関東勢の乗れている池田勇人には岡田征陽の2車。このラインが中団か。
そして深谷に北日本ラインとなる。
番手村上が圧倒的に有利と感じる。
脅威になるのはやはり佐藤の早めの巻き返しだろう。佐藤の先行なら番手成田の優勝濃厚となる。
その時でも村上は4番手になる。脇本が順当に先行なら村上の抜け出し。このメンバーで内を突けるのは成田のみである。内を突ける選手とは間隔が空いていなくても入って行ける選手である。ただ単に内を行ってたまたま空いていれば1着。締まっていればバックを踏む選手ではない。故に佐藤が後手を踏み不発でもある程度の着には来る。その他の選手は外を踏むため深谷は大外を回される。結論として脇本先行なら村上。2着候補に成田、深谷。佐藤が先行なら成田。2着候補が村上、深谷である。

決勝メンバー

決勝番組
1番 村上 義弘 京都
2番 成田 和也 福島
3番 深谷 知広 愛知
4番 池田 勇人 埼玉
5番 松岡 健介 兵庫
6番 坂本 健太郎 福岡
7番 岡田 征陽 東京
8番 脇本 雄太 福井
9番 佐藤 友和 岩手

車券推理
①-②③⑤-②③⑤
②-⑨①③-⑨①③
③-①②-①②⑤

結果

9-2-4  153.3倍 50番人気
的中無し

レース回顧

スタート牽制のなか深谷がまず誘導員の後ろに付く。そして脇本が上昇し深谷と並走し、深谷が下げ脇本が前受けになった。まず深谷も渋々の前受けを一旦選択したが脇本に並ばれ下げた事は深谷自身前受けを好んでいなかったと言う事。そして脇本も深谷1車の後ろなら、それなら一番前が良いと判断した事と思われる。しかし組立で最初から前受け策なら脇本自身がスタートを早く出る。もしくは1番車の村上がスタートを取りにいったはずだろう。しかしそうでは無かった。近畿ラインの作戦は後ろ攻めからの組立であったと考えられる。そしてこの事で北日本ラインや関東勢は走りやすくなった。脇本自身が他のラインの押えが早めなら前でも巻き返せる自信、遅めなら突っ張って掛ける気持ちがあったと感じた。そして赤板ラスト2周で池田が押え脇本がすんなり下げ巻き返す展開。脇本は池田が中団取りを基本としていると考えていたのかもしれない。確かにそうであったと思うが、あの展回なら池田も先行意識が高まる。仮に池田があの流れで脇本を行かせたら4コーナー山降ろし先行になり掛かり切り、巻き返すチャンスは無いと考えるのが普通だろう。そして池田が先行。脇本も打鐘3コーナー辺りで前走車の横に出たが、これは仕掛けたと言うより自然と前に出た感じだった。しかしこの事で脇本の仕掛けるタイミングは完全にくるった。あそこから下げてもう一度立て直してでは完全に遅い。そして仕方無しと言う感じで叩きに行くが、やはりタイミングを逸しただけにスピードを乗せ切れず岡田のけん制に会い不発。その番手村上も外を無理やり行ったがダメ元の仕掛け。労せず3番手をキープした佐藤が2センターから仕掛け優勝となった。その番手の成田もあの展開なら抜く事は不可能である。深谷も脚を貯めていたが近畿ラインが外にいたので仕掛けられなかった。このレースはスタートの位置取りが結果に大きく影響したと感じた。前受けを選択した脇本も事故点の兼ね合いもあると思う。サマーナイトを含め、オールスターと競輪祭が事故点累積4ヶ月の期間に入る。その事もスタートけん制のなか、頭をよぎったのかも知れない。優勝した佐藤は労せずグランプリシートへ一歩近づいた。
周回中の佐藤。
周回中の佐藤。
最終ホーム。先行する4番池田、その3番手に9番佐藤
最終ホーム。
先行する4番池田、その3番手に9番佐藤
最終バック。8番脇本が捲り不発。
最終バック。8番脇本が捲り不発。
第9回サマーナイトフェスティバル(GII)決勝ゴール
第9回サマーナイトフェスティバル(GII)決勝ゴール
優勝した佐藤友和。
優勝した佐藤友和。

推理結果

脇本の先行を中心に考えていた事で佐藤が後方かもしくは強引に脇本を叩くと考えていたため、佐藤の2着はあっても優勝はないと考えていた。これも初手の位置取りによる所である。次回オールスターは頑張ります。

サマーナイトフェスティバルは真夏の競輪界の祭典である。
ゆえに車券も1着権利の勝ち上がりで普段とは違う読みをしなければならない。なんとなくお祭りの当てものみたいな感じだったが、トップレーサーがナイターを走る事はあまり無い。ヨーロッパではナイターでのレースのなか、バンク内で食事を取るレースが行われる。しかしあくまで一つの興行としてである。
そこには若手の有望選手はあまり参加しない。参加させないと言った方がよい。それは選手の成長の妨げになると考えられているからである。その意味合いでも今回のサマーナイトは年に一度のお楽しみ競輪であると言っていいだろう。