以前の全プロは競技のみで競輪開催はなかった。そしてその競技では世界選手権の選考大会であって、ほぼ優勝者は世界戦出場のチケットが貰えた。しかし日本にもナショナルチームが創設され、徐々にその色合いは無くなり、現在は寬仁親王牌世界選手権記念トーナメントの特選シードを賭けての競技大会になった。そのため、シード権を持っているS級S班以外にとっては競輪のみならず競技に勝負を賭けてくる選手も中には存在する。
そして今回の全プロ記念はSS11関係での自粛期間が始まってからグレードはFIIではあるが、最初のビックイベントになる。その自粛期間は5月から始まり最初のGIIIが平塚で開催されたが、ゴールデンウィーク真っ只中のシリーズであっため影響も少なく、そしてゴールデンウィーク明けに心配された松阪GIIIもそれなりの売り上げで終了した。ただフルメンバーと言える開催はこの全プロ記念であるため、それ以上の不安はあった。初日を終えた時点では盛り上がりに欠ける雰囲気も確かにあった。
展開予想
ライン構成は浮き駒もいるが2分戦と言ってよい。そして大まかな展開もこのレースは決まっている。浅井が先頭の中部ラインが前受け。後方から脇本率いる近畿ラインが押さえて先行である。問題は目標のない岩津、小倉の瀬戸内ラインと、準地元の単騎となった神山拓弥の出方である。切れ目4番手からとも考えられるが、それではあまりにも単調なレースになってしまう。仮に岩津がその4番手を獲ってもそこから脇本のすんなり先行を捲るのは不可能と感じる。ならばその位置なら3コーナー捲り追い込みになる。近畿ライン番手、3番手は自在選手である。その展開なら内ががら空きのメンバー。内を突けるのは小倉だけである。勿論、その前に浅井が仕掛けているので中団にいても内に詰まり旨みがないかも知れない。個人的には脇本が仕掛けるタイミングで岩津が動けば東口が相手ならまず有利な形となる。そして追い上げもないだろう。瀬戸内ライン絶交の展開になる。そして神山だが、飛び付きも頭に入れて走る。初日の脇本の先行は飛び付く選手がいたため打鐘前に金子を連れ一気に仕掛けた。ただこのレースでは浅井もいる。そのため飛び付きもないと考え、そして2分戦の利を活かした押さえ先行なら、逆に飛び付きやすくなる。単騎で凡走するぐらいならと神山が考えるかどうかである。飛び付いたら浅井の捲りごろと考える方も多いが、番手は自在選手であり競りが強くない選手が回っている。飛び付いても勝負は一瞬で決すると考えてよい。故に浅井の捲りにも対応できると考えるだろう。いずれにせよ、このレースは脇本を7番手から浅井がどのタイミングで仕掛けるかがポイントである。結論としては初日どちらも印象に残ったが、浅井が結果的に捲りきり金子が交わす。
1番 |
金子 貴志 |
愛知 |
2番 |
脇本 雄太 |
福井 |
3番 |
小倉 竜二 |
徳島 |
4番 |
東口 善朋 |
和歌山 |
5番 |
浅井 康太 |
三重 |
6番 |
神山 拓弥 |
栃木 |
7番 |
伊藤 保文 |
京都 |
8番 |
志智 俊夫 |
岐阜 |
9番 |
岩津 裕介 |
岡山 |
1=5-2349
|
5-349-1
|
13459-13459=2
|
レース回顧
前受けに神山。その後ろから浅井が続き、以下予想通りの並びで周回を重ねる。神山にしてみれば、浅井は脇本が来れば下げるのでインを切られる事なく、また中団から脇本に合わせて上昇なら飛び付きを脇本に意識させる事になる。浅井にしても神山が飛び付きなら展開が味方するので切る意味がない。以外だったがその事が功を奏した。そして番手がもつれたところを岩津が追い上げた。競り勝った神山が一瞬遅れた事で岩津が番手にはまった。仮に仕掛けに行っていれば神山との番手勝負になったが、それはマーク戦の王道。出来ればそちらを選択して欲しかったし、見てみたかった。その時点で浅井は5番手。タイミングよりも、捲り切る距離を優先した仕掛けになった。捲りのタイミングとはただ単に捲る選手のレースの流れからくるタイミングと、ゴールまでの距離からくるタイミングがある。レースの流れからくるタイミングでは、いいスピードが乗っても届かない、または3コーナーで番手と合い不発に終わるケースがある。スピードの乗りを重視。そのためタイミングを待って仕掛けられずに終わる。よくあるパターン。距離を考えて捲る選手はクレーバーな選手が多い。結果は浅井の捲り追い込みが決まり、番手を獲った岩津が2着で先行一車の利を活かした脇本が3着に粘った。
推理結果
脇本の粘りをもう少し重視しても良かったかも知れない。ただ番手がもつれると考えたため、浅井がもっとすんなり捲る事を中心に考えた。そのため金子も交わしやすいと思った。結果は的中し配当も2万円台で良しとしたい。
今回のレースはそれぞれの選手が見せ場を作った。そして内容自体は共同通信社杯より上である。共通杯は鮮やかに新田が捲ったが、近畿ラインの連携ミスからの展開。今回はメンバーが手薄だった印象があるが、それぞれが勝負しきった感があり非常に素晴らしいレースだった。レースはメンバーもあるがやはり内容だと思う。メンバーが良くレースが始まるまでは盛り上がっても単調なレースなら冷める。しかし今回の様に勝負すべき選手が勝負してくれれば、車券を買ったファンの方は結果がどうであれ全てを受け入れるだろう。やはり競輪は結果以外の勝負も見ながら楽しむものだと思う。今後も期待して行きたい。