解説&分析

今年も競輪界の夏の風物詩であるサマーナイトフェスティバルが松戸で開催。女子も3個レース加わりその色合いが濃くなってきたが、今回は何といっても一連の自粛解除後の初のフルメンバー。すでに向日町G3で4選手が走り村上義弘が優勝はしたが、走り自体は力は当然あるがキレがない印象だった。勿論、復帰明けの選手達が本命を背負うレースが多い。そして33バンクだけに立ち遅れは許されず。1着権利も加わり混沌模様である。
初日は33らしいスリリングな展開が多かったが、やはり位置取りが勝負を決めた。そんな中での最終12R。そこまでの全てのレースをかすませた。深谷の圧巻の逃げ切り。親王牌で2つ目のタイトルを獲り、呪縛から解かれたかの様である。いよいよ深谷時代到来になるか。「決勝」深谷が勝ちに行くか、関東ラインを潰しにいくか。勝ちに行くなら関東作戦で武田豊樹が有利になるが、深谷が力でねじ伏せるか。潰しに行くなら浅井康太が有利になり平原康多がその後ろに切り替えている。それでも深谷の逃げ切りはあるのか。今後のためには潰しに行けば財産になる。それで勝てばもう深谷には手を付けられなくなるだろう。このレースはいずれにせよ深谷にとってターニングポイントになる。

展開予想
関東4車揃い天田がライン先頭と言う事はおのずと平原の番手捲り。あくまですんなりだが4コーナー武田が番手で回ってくる可能性が高い。それに対抗する深谷がどのタイミングで仕掛けるか。向日町G3は地元に一歩引いての様な戦い方だったが、ここは記念ではない。早めに関東を叩きに行くだろう。それで浅井に交わされても今後のレースは深谷に流れる。それはファンの方の目もそうだが、選手や関係者もそう感じ取り競輪界自体が深谷中心に回り始める。実力差は紙一重であったとしてもレースっぷりで大きな差になる。これはどの分野にも言える事と思う。その流れを深谷が作れるかである。展開は武田。力は深谷。その様相である。単騎の選手も3車いるが、いずれも自力選手でかき回す事も出来ない。このレースでは戦い様がない。それがゆえに脚を貯める以外なく、チャンスも少ない。

決勝メンバー

決勝番組
1番 深谷 知広 愛知
2番 平原 康多 埼玉
3番 浅井 康太 三重
4番 川村 晃司 京都
5番 神山 雄一郎 栃木
6番 石丸 寛之 岡山
7番 佐藤 友和 岩手
8番 天田 裕輝 群馬
9番 武田 豊樹 茨城
車券推理
9-2-513
9-5-213
9=1-235
1=3-295
武田がやはり33バンクの番手捲りに乗れるので武田中心。当然深谷のパワー車券も狙う。

結果

1-9-3  45.7倍 15番人気

レース経過

前受けに深谷ライン。そして関東ラインとなる。青板で関東ライン先頭の天田が深谷を押さえに行く。そこに単騎の選手が続く。そして下げた深谷が赤板で天田を叩きに行く。天田と深谷のもがき合いになるが、個のもがき合いならばやはり深谷に軍配が上がる。叩かれた天田が苦肉の策として遅れながらも番手に粘る様な形だったが、掛かり切った深谷の先行では勝ち負けまでは行かず。ただ浅井は少し脚を使ったとは感じる。その結果で平原が浅井の後ろに収まり、そこから捲りに行く。しかし平原ですら不発に終わった。外を捲って来た石丸もこのあおりを受け不発になった。あおりを受けなくても不発だったかも知れないが、石丸の動きは近況を物語る。しばらくは狙える。平原が外に膨らみ武田が2センターから追い込みに行く関東の波状攻撃。しかし逃げた深谷は物ともせず番手の浅井をも振り切っての堂々たる逃げ切りとなった。

車券的推理結果

度胆を抜く深谷のパワーに関東ラインのみならず、誰もが脱帽したレース内容となった。結果は力の深谷と展開有利な武田との両立となり、予想の範疇の結果となった。

この結果で、いよいよ深谷時代の幕開けと感じる。確かに復帰明けの選手達の動きは本調子と言えない所もあったが、それにしても深谷は2周もがきの中、波状攻撃に耐え逃げ切ったのである。ここからは深谷対誰々ではなく、深谷を倒すのは誰かになる。番手を回った浅井の動きも良かったが深谷の番手にいながらもかすんで見えた。それぐらい深谷は絶頂期に突入したと言ってよい。このサマーナイトフェスティバルは世代交代が完結したシリーズと言ってもよいのではないか。来年からはギヤ規制がかかり多くのベテラン選手は自然と姿を消すだろう。しかしそれ以前に深谷が圧勝した事は意味がある。まあ大ギヤ化が無ければすでに深谷時代に突入していたと思うが。大ギヤは運動量よりパワー重視になり選手の体型もそれに伴い大型化。しかし来年からその様な選手は苦戦するだろう。そしてバンクレコードもよほどでない限りこの大ギヤ時代のタイムを上回る事もない。レース形態も以前の姿に近づくだろう。本来の競輪の姿に戻ると言ってよい。そして次回グレード戦は前橋オールスターになる。今年はドリームでなく特選シードレースと捉えた方が良い。勿論深谷の強さが際立つドリームレースになり、労せず勝ち上がって行きやすく有利とここでも感じる。
今シリーズは深谷時代の幕開けを感じさせた、サマーナイトフェスティバルであった。