解説&分析

ファンの皆さんもご存知の様に、12月30日のGP、そして12月29日~31日の開催を最後に、12月31日初日の開催から現在の4.58から4倍未満に規制が引き下げられる。
55×14の3.93が事実上のマックスになる。
私は競輪の創成期のギヤ事情は知らないが、いつしか3.57(50×14)が主流になり多くの選手がこのギヤを使っていた。この時代に4.00のギヤを使っている選手もいたが、捲り一発狙いの選手や全盛期を過ぎた選手が使うギヤであり、何か色物の様に感じるギヤ比であった。
そして時代は流れ、山崎芳仁が4.00のギヤでタイトルを量産し、そこに誘導基準タイムが上がった事も加わり一気に大ギヤ化が加速した。
山崎がギヤを掛けタイトルを最初に獲った時もまだ少し色物の感はあった。
それをまねる選手が出てきた事もあったが、やはり誘導タイムのアップが一番の大ギヤ化の要因だろう。
自動車でもスピードが上がればギヤを上げると燃費が良くなる。自転車でも一定のペースでスピードが上がったのであればギヤを上げれば燃費、すなわち脚を使わなくてすむ事になる。
選手は勝負前の周回で脚を使う事を嫌がるゆえ当然の大ギヤ化であったと言えよう。その大ギヤ化が競輪に与えた影響は大きく、レースを一変させた。
多くの選手がギヤを踏みこなしているのではなく、他の選手に合わせている様にも感じる。これはギヤ比が自分と他の選手がかけ離れていると加速曲線が違ってき、踏み込むタイミングも合わせづらくなってくる事などが要因である。
それは上りタイム自体が以前と変わらない事でも言える。
確かに踏みこなした選手や、ツボにハマった時の選手はスピードが出る。それが多くのバンクレコードを生み出した。現在のバンクレコードは余程の事がない限り破られない、永遠のバンクレコードになったと言えるだろう。
車券的にもたまたまいい位置にいた選手、スピードに脚を使わず乗せてもらった選手が伸びて来て3着までに入る事が大ギヤでは多かった。
それが3連単での配当の高さにつながっているのだろう。
しかしこのギヤ規制でそれも減少するだろう。
大ギヤ規制の目的は落車のダメージの軽減。 しかし、競走は変化する。
この狙いもギヤ規制にあったかどうかは分からない。
本来の目的は大ギヤ化での落車の怪我の大きさ軽減がある。大ギヤを踏みこなすために選手も大型化した。
スピードの違いに対応しにくく、そこから起こる落車事故の多さが主にギヤ規制の要因である。
しかしながら今回の規制は一部の選手からギヤ規制に反対する意見もあったが、関係者からは歓迎の声が高い。その辺は選手が車券事情を知らない事が伺える部分もある。
私自身もギヤ比の上限が下がり競輪が面白くなると期待を寄せている。
また、大ギヤ化で選手寿命が一気に伸びた。
物事の発展に活性化は重要な事である。
いくら科学が進化し身体の解明が急加速してもこの競輪界の選手寿命は異常とも思える。大ギヤで練習が楽になったと言う選手は多い。単純に考え、同じタイムで同じ距離なら運動量はギヤの小さい方が多い。大ギヤに対応するために身体を大きくした選手達にとって来年は大変だろう。ギヤ規制が始まれば最初は今までの実績や顔で並びなどには影響しないだろうが、夏を迎えるころにはメンバーもレース形態も徐々ではあるが様変わりしていると思う。
レース自体は選手の脚の有る無しが如実に浮彫にされると思う。ファンの方はそこに罵声を浴びせる方も出てくるとは思うがそれが本来の実力と言える。
ギヤ規制が冬場から始まるのは選手にとっては幸いかも知れない。
なぜなら、冬場は本来寒さや風の影響を受けるため、ギヤが小さい方が楽である。今まではシーズン関係なく流れのなかでギヤを使っていた事もありギヤを落とす事はなかった。
大ギヤでの冬場でのレースでベテラン選手がよく離れているのを見れば一目瞭然である。その意味では冬場は少しベテラン選手も耐え凌ぐかも知れない。
しかし暖かくなってくると脚力の差は一気に出る。大ギヤではごまかせたがギヤが下がればごまかせなくなる。上位レースでは選手の活性化とラインで決まるレースが確実に増える。ゆえに位置取りは重要になる。一発狙いの捲り勝負も決まりづらくなる。確実にレースを進めて行く選手と組立がしっかり出来る選手が活躍するだろう。
その事はどのグレードのレースでもいえる。
現在チャレンジは7車立であり、位置取り不要の一発捲り勝負主体のレースが多く、若手選手にとって得るものは少ない。ギヤ規制が掛かってもその事は言えるかも知れない。しかしギヤ頼りのレースが出来なくなり着実に力を付けなければ上位では通用しないと感じる機会は増えるだろう。
よってチャレンジからGIまでステップが形だけでなく、レース運びや脚力にも反映されると感じる。
また大ギヤで位置争いも減り、その結果並びもあいまいになってきた。以前は同じ地区のマーク屋同士での前後は過去のレースっぷりで決まる事が多かった。番手を回る事がプライドでもあった。そこを回るためにいつも凌ぎを削っていたのである。当然、同じ地区で同じ立場なら納得が行かなければ競る事も致し方なしであった。
その事をファンの方も理解していた。そこに魅了された方も多いはずである。
その様な競り合いも少しずつ増えれば車券以外に競輪の魅力が復活する。現在は戦法がない選手が多い。むしろ、ある選手の方が少ないと感じるぐらいだ。ギヤが下がれば色々な事が出来る。出来る様になれば戦法がなければ勝てなくなる。期待もあるが、少しは上記した事に近づくであろう。
・ 選手の序列
・ 選手の戦法
・ 選手のストーリー
これらが復活する事に期待したい。
競輪はルールや選手の気質によって変化していく。大ギヤ化で競輪の今まで受け継がれていたものが一気に排除されたことが多い。
このギヤ規制からまた新な競輪の歴史のスタートになるだろう。