2015年からギア規制が始まり、最初のGIが静岡での全日本選抜となった。ギア規制で何が大きく変わったのか、ここで検証してみたいと思う。
それまでの1月からのGIIIはほとんどが名前のある選手が優勝した。
これはギアに対応が出来ているのではなく、昨年の流れの中での優勝と言っていいだろう。
立川では村上義弘、和歌山では武田豊樹と優勝したが、どう見てもギアにまだ対応出来ていなかった。
確かにギアが下がった事によりレースの中で救われた形もあった。ただそれはたまたまであったと感じる。それに加えGIII優勝の結果である。上位陣はしっかり対応していると思っている関係者や記者も多いであろう。だがあくまでそれは選手上りの方たちではない。
選手の目はごまかせない。本人達は自身もそれはわかっているはずだ。ただ口に出さないだけである。
そして静岡での全日本選抜競輪を迎えた。このギア規制後の最初のGIは非常に重要と思っていた。なぜなら競輪界では過去においてGIのレーススタイルがGIIIやFI、そしてFIIまで影響していくからである。
1月からのレースは昨年のレースとはあきらかに違う。レースが前団で決まる事が多くなった。昨年までは自力選手の仕掛けが選手個々のタイミングであった。今はそれが通用しなくなってきているのである。ゆえにしっかりとレースの組立をする選手が勝ちに近くなった。
この事は重要である。選手にとって大ギアは少し展開もあるが力比べの様なレースであった。しかし今は違う。マーク選手も機敏に動く様になり離れる事も減った。後ろから仕掛ける選手が合わせられても昨年までは離れて車間の空いている所に入れたがそれも減ってきた。
展開重視のレースになったのである。
ファンの方にとっても展開を読む事が当然必要で、レースを見る量やデータの蓄積が重要になってくるのである。ギア規制前の当て物的な要素が減ったのである。
競輪が究極のギャンブルと言われた由縁はその事があるからである。
「本当の競輪。面白い競輪」が復活しつつある。そして横の動きがレースに非常に影響を与えている。競りも増えつつある。この事に関しても、まだ大ギアの流れがある。全日本選抜でも競りはあったが、数的にはあまり以前と変わらない。ただ競りの中身は全然違った。昨年までは踏み出しのタイミングで決まる競りがほとんどであったが、今回は見応えのある競りになっていた。
過去、落車を減らすために横の動きに対するルールを厳しくした。その事で競輪の魅力が半減した。個人的には度を過ぎた牽制や当たりは絶対するべきではないと思う。しかしテクニックにより相手を後退させる事はプロの技である。それまでも規制している。その違いを分かるのは本当のマーク選手にしか判断出来ない事はある。残念な部分である。
落車は落車する選手も悪い。最近はほとんどがそう感じる。プロの自転車乗りがそんな簡単に落車してはならないはずである。当たりがきつくても受け止める。それがプロである。ただ単に自転車に乗ったら早い人が多くなってきたとは感じる。
しかし全てはルールに加え大ギアの影響でそうなった。
これからは競っても出足勝負が減る。横のテクニックもしっかり身に付ける事は選手にとって重要になる。自力選手が並び番手捲り決着は減るであろう。何故なら昨年までは出足や飛び付きにくいレース形態であった。それはなくなりつつある。ファンの方には競ったら着順が悪くなるだけと思われる方もいるだろう。それは間違いである。私が現役時代の一つの目標というか夢は、GIの決勝で先行の番手を打鐘から最終4コーナーまで回り、そしてちょい差し。3番手以降は飛び付きや追い上げで混戦となっている中での優勝である。この意味を理解出来る人は余りいないかも知れないが、これが最高の集大成のレースであるのだ。その展開なら誰でも勝てると思う方がほとんどだろう。確かに誰でも勝てるだろう。それはそうなればの話だ。まず先行選手にこの人ならと思われる選手になる事。それは過去の連携実績ではない。過去のレースで番手を回っている時、どんな事をしたかが重要なのだ。先行選手は番手選手の動きを他のレースでも見ている。そしてこのマーク選手は信頼出来るかどうか判断するのだ。
次に例えると先行一車でも飛び付かれない、追い上げられず競りがその後ろからになっている事である。なぜ先行一車で飛び付かないのか。飛び付いても勝てないイメージをその選手が持っているからだ。仮に飛び付かれたとしたら優勝がなくなるかもしれないが、とことん競る。その事が、相手が引く理由なのだ。そうなるには普段から勝ち負けに関係なく、例え目標の先行選手から力尽きて離れても競りに来た選手、もしくは競りにいった相手に共倒れでもとことん競るのである。飛び付く側、追い上げる側の選手から勝ち目がない、しぶといと思われるレースを普段からしている事が重要なのだ。理想のレースはその事があって生まれるのだ。ゆえに誰でも勝てるレースではない。レースに勝つにはまずは自分で看板を挙げている戦法に恥じない内容かどうかが重要なのだ。少し話はそれたが、この様なレースが再び出来る様にギアが下がった事でなるだろう。
面白いでしょ。以前から強く大ギアでも対応した選手はいずれ時間がかかってもしっかり成績を残すだろう。しかし大ギア以降活躍した選手はギアが下がった時の強くなる成り方を知らない。むしろギアが下がったがギアの影響を受けていたのにその部分を忘れ、強くなった時期の事のみ追い求める選手は厳しいだろう。ダービーが終わる頃には力関係がはっきりしてくる。そこから本当の競輪が始まる。全日本選抜はいいレースが多かった。特に「決勝」は素晴らしいレースだった。あんなに手に汗握るGI「決勝」は久々であった。勝った山崎に関しては展開待ちだったかもしれないが、他の選手が早めに動き激しいもがき合いに横の動きもあり、見た目に面白かった。ギア規制があの決勝戦をつくったと感じる。
余談ではあるが国際ルールにもギア規制が引かれる可能性が高まってきている。こちらは危険回避である。これからは知識が車券ゲットにつながるだろう。
楽しみです。