通称「ダービー」と言われるG1である。選手権をそのまま読めば選手の権威を掛けて戦うレース。どの国のどのスポーツでも選手権と付く大会は、その国で一番を決める大会である。この決勝は日本一を決めるレースである。
今年に入りギア規制が行われ上位陣でも明暗を分けた。大ギアのままのスタイルで戦う選手は当然苦戦している。そのスタイルしか出来ない選手もいるがここまでです。ギア比が下がり大ギアで苦しみ試行錯誤していた平原が正に水を得た魚のごとくここまで力を示してきた。そしてシリーズが始まったがその事は変わらず平原が連日力を発揮した。縦脚は勿論の事、位置取りもしっかりしている。正に心技体充実である。そして浅井である。こちらも流れの中から上手くレースを運び、準決勝では深谷の番手での捌き。余裕さえ感じさせた。その中で迎える決勝である。
展開予想
まずは関東の並びである。武田がライン先頭になり平原が番手になった。4日目のゴールデンレーサー賞では平原が前回りでホームから捲った。番手武田は少し離れ、更に大塚に絡まれ完全に平原から離れた。それでも武田は2着に食い下がったのはさすがだが、油断もあったかも知れないが衝撃だったと思う。決勝は逆の並び。この事は前検日に感じた。感じたと言うより気づいたと言った方が当てはまる。勿論、両者が決勝に乗ったら成立する話ではあるが、現実となった。武田がオールスターを勝ち、競輪祭ではGPを見据え平原を引っ張った。そして平原が優勝。GPでは武田の思惑通り平原の引っ張りで武田が優勝した。そして今年に入り全日本選抜では、平原が前回り。平原が純粋にライン先頭で勝ちに行くと考えた人は多かった。GPで引っ張ってここでも引っ張る事はないとの考えだ。しかし、平原は先行した。逆に武田が番手から出る気持ちより一連の事柄から平原をかばう走りだった。結局、仕方なしに出ては行ったが、出るつもりではなかったぶん反応が遅れた。そして迎えたダービーである。気づいたのである。平原にとって、全てはダービーである事を。スタートは浅井。その後ろが関東勢。そして新田ラインで原田が後方からと読む。新田が押さえ原田が先行態勢になる。そして武田が強引にそれを叩く。その流れに乗る浅井。新田はこの展開なら内に詰まっている。武田はここまでのG1戦線の事を考えると無理をしてでも叩きにいく。仮に原田がすでに全開で合わされた場合、平原はすかさずその上を捲るだろう。その流れの中、浅井はどこまで平原にせまれるか。平原が優勝に最も近く、その平原が脚を使った場合のみ浅井の優勝と感じる。
1番 |
武田 豊樹 |
茨城 |
2番 |
金子 貴志 |
愛知 |
3番 |
新田 祐大 |
福島 |
4番 |
飯嶋 則之 |
栃木 |
5番 |
浅井 康太 |
三重 |
6番 |
大槻 寛徳 |
宮城 |
7番 |
井上 昌己 |
長崎 |
8番 |
原田 研太朗 |
徳島 |
9番 |
平原 康多 |
埼玉 |
レース経過
スタートは金子が取りに行き中部勢が前受。そして車番通り納まり、予想通りの並びで周回を重ねる。後方の原田から動き出す。この時に新田が前団を切ると思ったが、動かない。切ると3番手確保につながるが脚を使うのを嫌ったか。その理由は強風が吹いていた事もあるだろう。勿論、展開通り武田に合わせられる事も考えたのかも知れない。そして武田がインを切る。原田が先行態勢に入る。武田が3番手。この時点で平原が優勝かと思った。この時に新田が浅井を被せ関東勢の後ろを取った。ここで浅井との明暗を分けた。そして番手から井上が捲る。それと同時に武田も捲る。しかしバック強風でスピードが乗らない。強風のレースは積極的に動く選手の脚力を奪う。逆に後方で脚を貯めた選手に勝利が流れる事が多い。積極的に行かなければならない関東勢にとっては厳しいバンクコンディションであった。武田の番手の平原は何度もバックを踏む。風で前団の選手が流れない。そして新田が捲ってくる。直線では何とか捲り切った武田の番手から交わしに行く平原。しかしスピードに乗れていない。その証拠に直線で新田に当たろうと外に斜行していた。新田が外に居過ぎたため届かず、かえって遠回りになった。浅井は車群をかき分けてきたので風の抵抗をあまり受けず良く伸びた。そして3つどもえデッドヒートを制したのは新田だった。
強風のバック向かい風。この事が関東勢から勝利を奪ったと感じる。今回のシリーズリーダーであった平原は完ぺきなシナリオで勝ち上がってきた。しかし僅差の2着。大敗と言ってよい。辛いシリーズとなった。結果的には出来のいい3車で決まった。優勝した新田はSSみのりのタイトルは獲っていたが、事実上の初タイトルである。やっと真のタイトルホルダーになった瞬間でもあった。