解説&分析

日本選手権競輪、通称「ダービー」である。選手権が付くタイトル。文字通り日本一の競輪選手を決めるレースである。ここで調子の上がってない選手はそれが力である。勿論、予期せぬ落車などで戦えない選手は例外だが、調整力も実力の要素である。現在の競輪界で平原康多が一人王者と感じる。昨年の秋から本格化した様に感じるが、それ以前も怪我さえなければもっと早く平原が抜けた存在であっただろう。そして既に今年は2月の全日本選抜を4日間、他の選手を圧倒し制覇した。2年前の京王閣ダービーでは、そこに来るまでも計画的に進め調子も上げダービーのタイトルを獲りに来たと感じた。そしてシリーズもリードし決勝戦を迎えた。しかし最終日は強風が吹き荒れた。平原の様に動いて位置を確保する選手にはきついコンディションであった。中団はしっかり確保した。しかし、後方からの新田祐大の捲り追い込み。僅差の決着。平原にとっては、トンビに油揚げを獲られた様なシリーズだったと思う。今回もダービーのタイトルを獲りに来た。前回とは雰囲気は違うが経験を積んできた。勿論、シリーズリーダーであり、大本命である。
そして迎えた初日特選。ここでは平原にとって両雄である武田豊樹の登場。昨年ぐらいから徐々に年齢との戦いに苦しんでいる感があり、影が薄くなってきていた。しかしここ最近のレースを払拭する様な先行策で逃げ切った。地元の取手での全日本選抜では間に合わなかったが、このダービーでは勝負権があると感じた。2日目ではやはり深谷知広が平原に捲られはしたが、しっかりと粘れて出来の良さを感じさせた。それとは逆に調子を上げ入ってきた地元後閑信一は吉田拓矢と共に落車で姿を消し残念であった。
5日目「準決勝」9Rは深谷がしっかり逃げ浅井康太が交わしワンツー。浅井も2次予選までは出来の良さを感じさせなかったが、開催中に立て直した。6日開催ならである。10Rは武田が三谷竜生の4番手確保からあっさりとまくった。三谷はホーム先行であったにも関わらず少し結果が物足りない。その番手山田久徳は経験不足が露呈した感じである。11Rでは平原がしっかり3番手キープから展開を冷静に見極め抜け出した。準決勝までを見てやはり平原がシリーズリーダー。武田も復活し関東中心になる。そして深谷と浅井の中部勢もそれに迫ると感じるが、三谷がいるだけに平原がやはり有利だろう。

展開予想
細切れ戦。先行は深谷とまず考える。その3番手は守澤太志で、平原となる。しかしスタートが読みづらい。仮に誰も出ず深谷が取れば、平原が1番車でしっかりその後ろをキープ。守澤が来るなら入れる。しかしそのスタート取りなら、山田英明が8番手からになる。準決勝でも位置取りは失敗している。それならスタートを取りに行くか。そこから流動的に進める。平原は何れにしても中部勢の後ろだろう。平原は三谷が上昇しそこをタイミング良くインを切れば深谷の先行で4番手以内を確保できる。三谷が遅めなら前受の山田との絡みがあるかも。それが平原にとっては最悪の展開である。ならば追い上げても深谷の位置で5番手か6番手になる。もしくは深谷を容認し、深谷の捲りに期待する策もあるが、深谷が遅めなら厳しくなる。そして平原自身が納得出来ない選択であろう。例え6番手でも三谷の先行力なら捲れる。注意するのは山田になる。しかし基本は深谷先行で守澤を容認し4番手からの捲り展開。深谷の番手浅井との勝負になる。

決勝メンバー

決勝番組
1番 平原 康多 埼玉
2番 三谷 竜生 奈良
3番 園田 匠 福岡
4番 山田 英明 佐賀
5番 武田 豊樹 茨城
6番 守澤 太志 秋田
7番 深谷 知広 愛知
8番 桑原 大志 山口
9番 浅井 康太 三重
車券推理
1=9-57
1=5-94
1-34579-34579

結果

2-8-9    878.1倍(237番人気)

レース経過

深谷が前受の場合の予想並びで周回を重ねる。ただ守澤の位置が理解出来なかった。深谷が前受を選択した場合は平原ラインからと決めていたのか。それでもその位置ならあって3着になる。深谷ライン追走なら結果も当然違っただろう。まずは最後方になった山田が上昇。その動きに乗り三谷が更に押さえると思った。しかし深谷がすんなり下げた事もあり、山田ラインを追走。この事で深谷は仕掛けやすくなった。三谷が前なら合わされる事も頭によぎるが、ここはすんなり先行。そこから三谷が山田の内から3番手を確保。前受になった山田が内を開けた形になるが、あの状態ならすべての選手は内を開ける。内を閉めていたのでは3番手でも遅れてしまうからだ。三谷は狙っていたと言うより自然に反応したと感じる。結果的ではあるがそれが全てである。山田はそこから平原と絡み、平原の仕掛けるタイミングを潰した。3番手確保した三谷は浅井より早めに踏み込み突き抜けた。番手浅井も深谷が絶好の展開だっただけに、優勝以上の事を考えたかも知れない。三谷に先踏みされ、焦り車は伸びなかった。三谷の日頃の柔軟なレース運びは、時として軟弱にも思える。しかしその事が勝因になった。

車券的推理結果

シリーズリーダーは平原であったが、決勝は少し勝を意識し過ぎたかも知れない。5番手に入りそこから少し脚は使うが、イン切りから深谷を迎え入れるべきだったと感じる。今回のダービーは期待された若手が次々と姿を消すシリーズだった。やはりダービーは経験がものをいう。100期代の初タイトルであったが、三谷は経験を積んできた。その経験が冷静に、かつ自然体で挑めたのだと思う。これから先、ダービー王の称号に恥じないレースをしなければならない。それに打ち勝てば更に三谷竜生の名前は大きくなるだろう。