世界選手権記念トーナメントとして誕生した寬仁親王牌。青森、弥彦開催も長くあったが、世界選手権が行われたのはこの前橋グリーンドームである。当時の世界選手権は現在の様に250バンクと決まっておらず、33バンクでの開催であった。さらに競技と競輪ではバンクの仕様が違うため、現在使用しているバンクの上に更に競技用のバンクを作って開催したのだ。そしてこの寬仁親王牌も今年で早26回目となった。この前橋で開催されるときは無欲の若手先行選手が脚光を浴びる事が多い。選考基準も全プロ参加選手の中から選ばれるため、若手の先行選手も増える。今年はそれが誰になるか楽しみなシリーズである。その候補としてはやはり野原雅也、吉田拓矢、新山響平、取鳥雄吾、太田竜馬などになる。しかしこの選手達はすでにある程度活躍し無欲のレースと言う感じではなくなってきている。その事が影響したか2次予選までに若手機動型は全て敗退した。33バンクでのレース。ここ最近は仕掛けが早くなり、位置取りも必要なレース形態になったのかも知れない。しかし積極果敢な先行は見るものを魅了する。そして準決勝はいつものメンバーでの戦いです。新田祐大の勢い。深谷知広の本格化。層の厚い近畿勢。そして地元地区の関東勢です。関東のゴールデンコンビは武田豊樹が復帰戦で無理矢理出場した感がありレースにはまだならなかった。一方の平原康多は初日落車にアクシデントでハンディを背負ってのシリーズ。2次予選はいつも通りの中団取りから捲って流石の平原ではあるが、やはり本調子とは言えない状況だった。関東勢では木暮安由と諸橋愛が好調であった。そして準決勝を迎えた。準決勝10R。古性優作の出方がポイントとなったが深谷の番手に飛び付き浅井康太に競り勝ち番手を奪った。そのもつれを渡邉一成が捲り決着。浅井は競り負けはしたものの、内をしゃくり、難を凌いだ。深谷も早めの先行だったが良く粘った。11Rは九州ラインの出方がポイント。坂本亮馬が志願のライン先頭。しかし脇本雄太相手に先行は余程でないと叩けない。中団で捲り追い込みなら後ろの二人はノーチャンス。その中でのイン粘りだった。しかし新田祐大が一気にそこを叩き決着。九州は負け勝負を最初から選択した気がする。別線勝負でも良かったのではないか。12Rは平原が前受を選択したが、三谷竜生がいるだけに7番手もある。その場合は竹内雄作の先行になるので、7番手では厳しい展開。結果もそうなった。
展開予想
中部4車となったが、愛知3車と浅井が分かれた。その愛知先頭は勿論深谷。そして深谷先行が濃厚である。番手吉田敏洋にもチャンスがある。単騎選択の岡村潤がこの4番手追走だろう。そして浅井がいて北日本となる。スタートは新田。中団深谷。後方に浅井。岡村は初手から愛知勢追走。浅井が切るなら展開は変わるがおそらく切らないだろう。新田が下げる方が確立は高いと考える。しかし深谷がスタート4番手からの展開ならカマシ気味になるので、浅井は外並走の展開。その結果浅井はスタート4番手を無理矢理取りに行くと読む。深谷が新田をまず押さえる。その時に新田が下げるかがポイント。深谷は早めに動くので、下げるなら7番手からの勝負である。中団の浅井は動かないので、新田がその展開で深谷を叩けるか、もしくは捲れると考えるかである。厳しいと判断するならやはりイン粘りだろう。番手吉田に競り勝ち抜け出す。これが最初の考えである。すんなりなら吉田の優勝もある。
1番 |
深谷 知広 |
愛知県 |
2番 |
渡邉 一成 |
福島県 |
3番 |
浅井 康太 |
三重県 |
4番 |
成田 和也 |
福島県 |
5番 |
椎木尾 拓哉 |
和歌山県 |
6番 |
吉田 敏洋 |
愛知県 |
7番 |
新田 祐大 |
福島県 |
8番 |
岡村 潤 |
静岡県 |
9番 |
金子 貴志 |
愛知県 |
7-2-135
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7-1-235
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7=3-125
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6-9-1835
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レース経過
スタートは岡村以外想定通り。深谷が後方からの上昇に合わせ、岡村がインを切る。そして飛び付き番手勝負。深谷も新田の飛び付きは想定していたと思うが、岡村は想定外だろう。その混乱から浅井がイン切り。新田のラインを待つ形になるが深谷が後方まで下げたため新田は3番手に納まる。そして浅井が成り行きとも言える先行。この時点で福島勢に勝負は流れた。深谷も後方から仕掛けたが、新田がホームから合わせて出る。それを交わした渡邉一成が優勝した。
混乱の決勝戦であった。深谷も赤板での上昇から先行と考えていたと思う。しかし岡村の想定外の動きで動揺したのだろう。浅井の動きも手詰まり的な動きと感じた。冷静にレースをすすめたのは新田であり、そつのない動きであった。
車券的推理結果
今回は若手の活躍が無かった事は残念であったが、決勝戦は混乱ながらも見応えのあるレースであった。優勝した渡邉もG1連覇であるが、新田の陰に隠れている存在が強かった。しかしここ最近は勝負所を逃さない走りである。決勝は新田に乗ってだが、その決勝に乗るには自身で打開しないといけないレースはある。それは今回、準決勝であった。そして今回のみならずここまでで一番印象に残るレース運びであった。本人もその自覚があったと感じる。それがレース後のガッツポーズに表れていた。ここからGPまで一気に突っ走るだろう。