解説&分析

若手の先行選手が参加しやすい寬仁新王牌は前橋33バンクもあり早めの展開が非常に多いGIです。全プロからの選考がその要因であります。しかしながらGI常連の選手達と比べればやはり力不足は否めない。ただそれでも若手選手の中から果敢な先行で勝ち上がり台風の目になるような選手は過去にはいましたが、ここ最近のレース展開や選手の考え方が変わって来た事もあり、その様な選手の出現も皆無になっています。早めに先行し引き出された選手は確実に勝つために、早めに番手から出るレースが普通になって来たからです。確かに、山崎賢人や清水裕友などの若手はいますが、この選手達は既に実績を残し少しずつ積み上げて来ての参加なので、様相は違います。今シリーズの主役はやはり脇本雄太です。オールスター以降はナショナルチームの活動で、ここがそれ以来の出走です。初日こそ小松崎に捲られましたが、赤版先行で2着にしっかり粘りました。その内容も実に良かった。赤板から全開の先行で他を圧倒しました。オーバーペースではありましたが、これを基準に脇本は調整出来るからです。そしてオールスター、共同通信社杯で活躍した山崎賢人です。初日はスタート牽制で追いかけ、脚を遣い本来であれば叩いて行くレースではありましたが、3番手で脚を休め1コーナーから捲り1着スタート。「山崎強し」の印象を他の選手に与えました。33バンクですから、やはり山崎の先行力は2次予選以降も楽しみになりました。そして清水裕友も共同通信社杯で見せた勝負根性は素晴らしかった。初日も躊躇なく先行し、抜かれはしましたが内容があり清水の戦法には非常にプラスになる先行でありました。こちらは2次予選以降の自在戦に期待が膨らみました。上位陣では平原が初日はイン粘りからの抜け出し。臨機応変で勝ちに対する意識の高さを感じさせました。そして迎えた準決勝10Rでは浅井が番手でしっかりとしたレースで勝ち上がりの出来も良い。11Rは脇本対山崎で注目の一戦となりました。しかしながら脇本のスピードが山崎を一飲みし、脇本の積み上げて来た事の重みを感じた結果。12Rは清水が3番手捲りで、平原が危うい状況になりましたが、何とか凌のぎ勝ち上がり。清水がこの形を作ったのではなく、南潤がこの形を作り先行し、結果、清水が勝ったレースになりました。平原はその分苦しんだレースでした。勝ち上がりを見る限り、やはり脇本がシリーズリーダーです。

展開予想
福島勢がローズカップ同様の並びになり、脇本の先行一車の様相です。番手は三谷。脇本が押さえ先行になりそうなので、三谷が交わす可能性も高まります。注目は中団争いです。単騎の平原とライン2車の清水。そして浅井でとなりますが、浅井が一番脚を溜めそうで富山記念の様な狙いではないでしょうか。平原は清水に位置取りの点では準決勝では後手を踏みましたが、展開の綾で仕方ない。むしろ初日、南先行で三谷の所に粘った事が気になります。ただGPを見据えると粘る作戦は置いておきたいと考えるかも知れません。そこがレースのポイントとなるでしょう。清水は上手く3番手を取れれば、そこからの捲り狙い。とれなければ仕方なしではあるが、脇本を叩きにいくでしょう。その展開で活きてくるのが渡邉一成になります。今シリーズの出来は非常にいいです。展開待ちではありますが十分です。
スタートは福島勢。その後ろに浅井。そして近畿勢。平原がいて、中国勢。まず清水が上昇し平原が切り替える。そこから平原が更に切れば、脇本が来る。平原が番手粘るか粘らないかはタイミングもある。その時に浅井が平原の後ろにいる。清水が浮くなら最終ホームで仕掛ける。そして渡邉がこのスピードを貰い捲れるかである。

決勝メンバー

決勝番組
1番 浅井 康太 三重
2番 平原 康多 埼玉
3番 渡邉 一成 福島
4番 佐藤 慎太郎 福島
5番 脇本 雄太 福井
6番 小松崎 大地 福島
7番 三谷 竜生 奈良
8番 柏野 智典 岡山
9番 清水 裕友 山口
車券推理
5=7-123
5=2-173
5=1-273
3-571-571

結果

5-7-2 1,600(2番人気)

レース経過

スタートを三谷が取りに行き脇本が前受を選択した。3番手に清水ライン。浅井、平原と続き福島勢の並び。脇本が前受した事で他の選手達は脇本が引いてカマシ狙いと思ったと感じる。その思い込みが渡辺を中途半端な上昇とさせた。そして脇本が突っ張った。他の選手は脇本突っ張り先行の考えに切り替え、受け入れた。絶好位3番手にいる清水が脇本の先行を捲れるかと皆が思った。しかし清水は脇本を打鐘で叩いた。清水ラインの後ろにいた浅井が清水の動きを予期していなかったのだろう。反応が遅れ、車間が開き3番手にすんなり脇本が収まる。この時点で勝負は決まった。脇本が絶好位3番手から捲って優勝。脇本前受から脇本のカマシ先行と、清水がまくりで勝負すると思い込んだ後方の選手が翻弄された一戦であった。

それだけ脇本がこれまで培ってきた多彩な先行が、好展開を生んだ要因でありました。それに加えシリーズ圧倒していた事が全てだと思います。清水に関しては、あのまま捲り勝負で良かったのではないかと思う方も多いかも知れません。もし仮にあの3番手から捲って優勝していても、たまたま3番手にいた様な形です。自身で作った3番手ではなかったので、たまたま好位置で脚を溜めて捲ったと思われてしまいます。それを清水が良しとしなかったかどうかは別として、清水の選択は今後の事を考えると正解だったと思います。捲られる展開を自ら作った様にも見えますが、あのレースを見ていた他の選手達には脅威を与えます。若手の代表である清水は、若手らしいレースと、若手らしからぬレースのどちらも兼ね備えた今後を担う競輪選手へと成長して行くと確信した一戦でもありました。