GI戦線が今年も始まる。全日本選抜競輪は初のGI開催となる別府競輪場です。別府バンクは海がバックストレッチのすぐ向こう側にあります。冬場の別府はバック向かい風。先行選手は非常に苦しむコンディションが予想されていました。2019年がスタートし若手の筆頭である清水裕友が立川記念で浅井康太を破り、そして太田竜馬が高松記念で内容のあるレースで初めて記念優勝を成し遂げました。まず、清水はその後にインフルエンザが発症し、少し勢いが削がれた感があり、逆に太田は直前の記念優勝で勢いがつき、非常に期待されての参加となりました。太田の勢いなら別府のバック向かい風を跳ね飛ばせる雰囲気です。そして迎えた初日。両者対照的な結果でした。それは2日目にも表れました。清水はグランプリユニホームを着用しているプレッシャーを感じつつの出走です。その事が立川ではいい方向に働きましたが、別府では裏目に出ました。位置取りに精彩を欠き、そして気持ちだけが前に進み、むりやり空いてない所に入り落車。結果は最悪の形でした。対して太田は連日に風を切り裂き、結果を残しました。そして多くの先行選手が別府のバック向かい風に敗れ準決勝に勝ち上がって来られない状況で、太田がシリーズリーダーと思えるほどの状況に変化です。しかも準決勝はほぼ先行一車。ここさえクリア出来れば優勝まである感じがします。しかし準決勝の作戦が少し安易でしたし、そう考えていたと思います。連日のスタ―トからの引いての先行策。準決勝では先行一車と思え更にその考えになったと思います。連日の好走で逆に他の選手が太田の動きを中心に組み立てた事で展開が変わりました。清水、そして太田共に経験不足が否めない結果です。しかし今後にはつながると思えます。準決勝3個レースで一番目を引いたのは中川誠一郎です。一気にシリーズを引き寄せた、圧巻のホーム捲りでした。
展開予想
まず先行一車のレース。そして並びですが、中川が単騎。準決勝同様に小倉が付けると思えましたが、松浦がライン先頭で日頃の並びを優先。そこには松浦に強い気持ちがあるのだと感じます。その結果、単騎の選手が3車。まずスタートは単騎でも中川。そして和田。その後ろに関東勢。そして吉田。後方に松浦ライン。関東勢と中四国勢は前後するかも知れないが、吉澤には影響なくどの位置でも受け入れると思う。前後を決めるのは松浦ですが、車番が外枠の分後方と読む。まずは松浦が動き4番手確保のイン切り。そして吉澤が先行態勢となる。松浦の上昇に合わせて吉澤も上がるなら、松浦先行もあり得る。しかしその展開なら吉澤が捲って優勝。吉澤が先行なら松浦の4番手捲りですが、出来的には捲りそうだが、吉澤はペース掛け。少し苦しいか。その上を行けるのは中川しかいない。番手の武田もチャンス十分だが、中川の勢いも十分と感じる。中川が捲った場合、吉田か和田が後ろになるが、交わしまではないだろう。中川が捲り切り優勝。レースでの番手、武田が食い下がれるかの一戦である。
1番 |
中川 誠一郎 |
熊本 |
2番 |
武田 豊樹 |
茨城 |
3番 |
香川 雄介 |
香川 |
4番 |
小倉 竜二 |
徳島 |
5番 |
吉澤 純平 |
茨城 |
6番 |
和田 真久留 |
神奈川 |
7番 |
松浦 悠士 |
広島 |
8番 |
吉田 敏洋 |
愛知 |
9番 |
佐藤 慎太郎 |
福島 |
1-86-8672
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1=2-5689
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2=9-574
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7=2-539
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レース経過
前受に関東勢。そして中川で、松浦ライン先頭の中四国ライン。そして和田、吉田で周回を重ねる。そこからまず松浦が上昇で関東勢を斬る。その上を和田が斬り、下げた関東勢が巻き返してくる。その動きに便乗したのが中川である。打鐘過ぎの隊列は関東勢に和田が追走し、和田、そして松浦ライン。中川が関東勢追走であったが、吉澤が少し流したので中団が和田と中川の並走となる。ここで並みの先行選手なら単騎でもあるので前団を叩くのは単騎でもあるのでひるむ。しかし中川は躊躇せず単騎で吉澤を叩いた。展開的には吉澤が番手にハマり絶好位。誰もが吉澤の優勝と思ったはずです。しかし中川がハイペースで掛け切りバックでも吉澤を寄せ付けない。前半10.9のハイラップ。流石の中川である。吉澤も追走もままならぬに見えた。そして4コーナーを回り中川がしっかり踏み切り優勝である。仕掛けの判断とバック向かいを乗り切った力は流石である。番手にハマる様な形となった吉澤であるが、予期せぬ番手になり違うプレッシャーがのしかかってきたのかも知れない。見た目上は絶好の流れになったが、それ以上に中川が強かった一戦でありました。
今回の決勝はここ最近の流れとは違い、色んな意味で注目すべきところも多く見応えのある一戦となりました。脇本の逃走劇がここ数場所続いていました。それはそれでいいと思いますが、これが本来の競輪と感じたファンの方も多いのではないでしょうか。タイムが出て様が、出てないが関係ないのです。面白い競輪こそが競輪の本来の姿だと改めて感じました。勝った中川のインタビューも非常に良かった。
それと同時に地元の大塚のインタビュー(最終日第7レースでの勝利者インタビュー)にはぐっとくるものがありました。
「日本一のマーク屋を目指してやってきました。今はこんな状態でファンの皆さんにご迷惑を掛けていますが、これからも高みを目指して頑張って行きます。」
今この時代に戦法にこだわりを持っている選手は数少ないです。あの言葉は流動的に走り展開が向いた時だけ勝ちに行く選手達には、突き刺さったと思います。何も感じ無かった選手は、私に言わせればプロでは無いと思います。大塚の言葉はタイトルより重みがあると感じました。タイトルを獲る事は運が左右します。しかし日本一のマーク選手に認められる事には運はないです。全ては実力です。大塚そして中川と良いものを見せて貰った、気分でした。