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―オールスター名古屋2020「決勝」編―
 昨年は新田が番手まくりで優勝したオールスター。今年も引き続き名古屋での開催。シリーズの中心はやはり脇本になりますが、中国ラインの清水、松浦が対抗し、その間隙を狙う平原と郡司の構図、その流れはここでも変わらず。ただ、今回は若手の波を大きく感じます。筆頭は寺崎になりますが、まだまだこれからの選手。どんなレースを見せてくれるか楽しみです。若手全体に言えますが、今日の結果より未来の自身を思い描いてレースに挑んで欲しい。
 初日「ドリームレース」脇本が単騎で打鐘カマシ先行。郡司が追走する形となったが、脇本は単騎のつもりで仕掛けたと思います。そして逃げ切った。この1着は脇本にとっては非常に大きい。準決勝で単騎になる事は考えにくいですが、決勝では無きにしもあらず。単騎逃げを選択し優勝を狙う事もあり得る事になりました。ファン投票1位が後押しした結果だと感じます。
 2日目「オリオン賞」新山がすんなり先行し、番手諸橋が捌き1着。両者が盤石のレース展開と持って行きました。山崎が前受から引く形に加え、三谷が無理矢理早めに仕掛けた事で楽な展開になりました。日頃の両者のレースっぷりがそうさせたと考えて良いでしょう。2日間を見て一次予選で目を引いたのは島川の先行力です。そして寺崎はホームで一気のカマシ先行。抜かれはしましたが良いレース内容で、十分アピールしました。
 3日目「シャイニングスター賞」は脇本が久しぶりに赤板突っ張り先行で、新山とのもがき合い。そして松浦が狙い澄ましたホームまくりの力のレース。最終的には新田がゴール前の接戦を制しましたが、やはり脇本の突っ張り先行はファンの心をくすぐらせられます。優秀競走にふさわしい見応えのあるレースでした。
 そして迎えた準決勝は波乱の幕開けでした。10R深谷が山崎の番手にハマり絶好の展開から2コーナーまくり。しかしその後ろに山田が入り早めに追い込み。深谷はじっくり攻めても良かったですが、そこは仕方ないですね。11R原田が展開を活かし抜け出しました。注目の寺崎にどんな事があっても一気に叩いて欲しかったですが、これも経験でしょう。12Rは脇本が3番手を取った時点で勝負ありでした。

 決勝メンバーが出揃い、やはり脇本が優勝候補筆頭ですが、誰にでもチャンスのある決勝戦となりました。
展開予想
 やはり脇本が人気の中心ですが、原田次第では苦しむでしょう。原田は番手まくりで勝ち上がっただけに、松浦を連れ早めに行く可能性もあります。その時は諸橋に山田ラインが続くでしょう。山田は松浦が出るまで動かない。その松浦を動かすのは脇本になります。早めに原田を叩きに行くなら、叩き合いになり山田がまくる可能性もある。脇本以外で出来のいいのは山田です。
 スタートは脇本が取り中団に原田率いる中四国勢で、その後ろが諸橋。そして山田、内藤の同期ラインで周回を重ねる。山田が上昇し、原田が更にその上を行く。脇本は7番手まで下げ、松浦の番手まくりを避けるために打鐘で仕掛け前団を飲み込みに行く。しかし原田も出足がいいだけに苦しむ。叩き合いが激化すれば山田がまくる展開。仮に脇本がまくりに構えたら松浦の番手まくりになるが、今回の松浦はそれほど動きが良くない。前団にいる選手達全員にチャンスが出てきます。しかし本線はやはり脇本だが、脚を使わされているだけに古性にチャンス到来か。
決勝番組
1番 古性 優作 大阪
2番 諸橋 愛 新潟
3番 松浦 悠士 広島
4番 守澤 太志 秋田
5番 山田 英明 佐賀
6番 柏野 智典 岡山
7番 脇本 雄太 福井
8番 内藤 秀久 神奈川
9番 原田 研太朗 徳島
車券推理
7=1-432
3=6-258
3-6285-6285
5-8-132
レース結果
 3-7-1  62.1倍(15番人気)

レース経過
 山田が前受を選択する意外な形で中団が脇本ラインで後方に原田ライン。そして単騎の諸橋が続く形で周回を重ねる。山田にしてみれば、いずれにしても後方で構える形になるので前受を選択したのかも知れませんが、準決勝の松浦の様に飛び付けない事もあります。原田ラインが結果的に4車となるので松浦と違い5番手飛び付きになります。それで前受を選択したのかも知れないです。ただそれでも脚はかなり使います。そして原田が脇本を押さえるが脇本はすかさず下げました。原田はスローにしタイミングを少しでも遅らせる動き。そして脇本が引き切ったと同時に山田ラインを追い仕掛け打鐘先行。脇本にすれば松浦の番手まくりが容易に想像できそれを封じるのは、やはり早めの巻き返しになります。脇本が仕掛け1コーナーでは松浦に迫りますが、松浦はまだ後ろを見るに留まっていました。それで少し脇本の仕掛けに対して、対処が遅れた様にも感じます。そして脇本の内に潜り込み番手まくりの形。耐えに耐え脇本に競り勝った。1着でゴールを駆け抜けた。脇本は脇本で仕方ないです。あれ以上はないです。

 松浦は優勝インタビューでラインの力で勝てたと言っていましたが、他の選手の様な当たり前の意味合いのコメントではなく、個で勝てていないの意味が含まれていました。勿論ラインに対してのねぎらいに意味もありましたが、流石松浦と感じました。今シリーズはいつも程動けていない様な感じでした。しかしチャンスを活かし、ものにしました。これから先の、更なる松浦の進化はまだまだ期待できるコメントでありました。僚友清水はいますが、松浦には今後、個の力で脇本を倒す姿を見せてくれるだろうと感じます。がんばれ松浦です。

 今シリーズは松浦がシリーズを締めくくりましたが、随所に見所があるシリーズでもありました。期待の寺崎はまだまだこれからの選手です。準決勝での動きには寺崎の本質が見え隠れしていました。そこを他の選手に付け込まれる可能性があり、少し苦しむ可能性もあります。しかし次世代のスターである事には違いありません。
いずれ脇本が競輪に専念しそこからが本当の戦いになるでしょう。これからの競輪に期待大です。