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―第62回朝日新聞社杯競輪祭「決勝」―
今年最後のG1競輪祭。「競輪王」の称号をかけての一戦であります。しかしここ数年は、グランプリシートを巡る最後の一戦として、注目を集める大会の色合いが濃くなってきました。タイトル戦ではありますが、やはりその事は気になります。今年は、一番賞金の高いダービーが中止になった事が、この争いに影響しているのは勿論です。ダービーの2着選手も順調に行けば、例年グランプリ出場につながっています。そのダービーがなくなり、タイトルも5つですが、脇本が高松宮記念杯と寬仁親王牌のダブルタイトル。その事で賞金争いは例年になく多くの選手で争う形で迎えた競輪祭であります。初日、当確戦上にいる選手達の走りはシビアであると同時に好調さも伺えた。賞金下位ではあるが、浅井の意気込みを感じさせるレースで幕を開けました。郡司、平原、新田と好調さを感じさせ、仕上がっている感がありました。そして、グランプリシートを獲得している脇本が登場。脇本のこのところの戦法は、動かず一気のカマシ先行が主体ですが、他に先行する選手が掛かっているならホームまくりが多い。この小倉バンクは先行選手が有利なバンクで、このレースでも掛かり切り、脇本はまくりになりました。中団の選手も仕掛けはしましたが、不発。その影響をもろに受けた脇本でした。しかし、まくりにはリスクが付き物です。脇本は内を突きこじ開ける事も出来ず、行き場を失い落車し、初日に姿を消しました。シリーズとしての目玉は姿を消しましたが、この事がグランプリシート争いに大きく影響しました。特に引いてのまくりが多い新田にはチャンスを広げたと思います。2日目は、松浦が余裕のある走り。新山の出来の良さがありました。3日目は、ガールズ決勝が2本あり、アメジストは混戦模様を佐藤水菜がゴール前抜け出し、涙の優勝。トパーズは児玉碧衣が余裕の優勝。そして、ガールズグランプリの7選手が確定しました。4日目2次予選。賞金ランキング8位の守澤が勝ち上がれずでしたが、その他の渦中の選手は、順当に勝ち上がりました。そして迎えた準決勝。10Rは郡司がしっかりまくり圧勝。11Rはレースを有利に進めた平原。その後ろは混戦になり松浦が3着ではあったが失格。その結果、松井が初の決勝進出。繰り上がりではありますが、見せたスピードは素晴らしかった。12Rは岩本の先行を巡っての位置争いが注目を集めました。古性と賞金ランキング9位の山田の争いでした。強気に攻める古性が位置を獲り決勝入りにつなげました。対して山田は古性に遅れをとり、ホームから渾身のまくりであったが展開的に厳しい状況でした。山田の1年の思いがあの仕掛けにあったと思います。そして新田が桁違いのスピードを見せ1着でした。そして決勝9選手が決まりました。松井が繰り上がった事で神奈川勢が先手に迷いない。そこに鈴木がライン先頭になった関東ラインが叩き合いか、切込み作戦です。古性、稲川の大阪勢がそこに続く。そして新田が9番手まくりの展開かの様相になりました。注目のグランプリ争いは7位の和田までゴールさえすれば確定。後二つのシートを巡っての一戦となりました。
展開予想
スタートは単騎でも新田が出る。そして神奈川勢で大阪勢。後ろ攻めが関東勢になる。松井と鈴木の脚質の違いがあります。松井は出足が良く、鈴木は粘るタイプ。松井はここでは出足を活かし迷いの無い先行。鈴木は先行策だが叩かれたら番手も考えての作戦。その差が位置取りに出ると思います。まず鈴木が動き、松井にふたをする。引かないならそのままの状況でレースを進める。鈴木は技巧派なだけにタイミングの見極めは出来る。そして鈴木が先行態勢。そこに古性が切り替える。前受の新田は入れる所があれば入りたいが、このメンバーでは入れないでしょう。余儀なく9番手。そして引き切った松井が一気に叩く。鈴木が叩かれるも、飛び付きが成功すれば新田の出番だが、早めの仕掛けになるので躊躇する。飛び付けなくても古性も加わり郡司の後ろは混戦模様。展開は郡司有利。新田は準決勝で待って待っての仕掛けで圧勝している。新田の思考回路なら同じ狙いと感じる。新田に合わし郡司が出る。和田が単独で回っていれば郡司。和田が混戦に飲まれているなら、新田が郡司を追い交わすか。しかし松井の先行は掛かるので、そのまま郡司が有利に進めるかであります。
決勝番組
1番 新田 祐大 福島
2番 古性 優作 大阪
3番 平原 康多 埼玉
4番 松井 宏佑 神奈川
5番 諸橋 愛 新潟
6番 鈴木 庸之 新潟
7番 和田 健太郎 千葉
8番 稲川 翔 大阪
9番 郡司 浩平 神奈川
車券推理
9-7-3518
9=1-7358
1-3=5
1-3-92
レース結果
 9-3-8    268.2倍(79番人気)

レース経過
前受に新田。そして関東勢で大阪勢。後方から神奈川勢の並びで周回を重ねる。まず松井が車間を切り、そして鈴木がそれに合わせ車間を切る。ここで古性がイン斬り。鈴木を封じ込め、松井を迎え入れた。和田が離れたため、3番手に古性が入る。新田は少しでも前にいたかったのだろう。内に留まり、終始イン詰まり。鈴木も古性に斬られた事はミスだったと思うが、ライン先頭の責任を果たすため仕掛ける。この動きで平原は浮上できた。郡司が2コーナーから番手まくり。平原が追い上げる形で両者の直線勝負となり、郡司が振り切った。

郡司が展開を活かし優勝。展開が全てだが、郡司の優勝は多くのファンが納得する、素直に手を叩ける結果だった。これで地元平塚グランプリをタイトルホルダーとして迎える事になった。グランプリシートは競輪祭開催前のランキング8位までと10位の新田が滑り込み、9選手が決定した。 今開催の準決勝以降は非常に見応えがあり、いい競輪祭でした。