解説&分析

 過去の競走データを基にして、注目選手を分析する「選手分析シリーズ」。今回は千葉・95期の山中秀将選手を取り上げます。今年前期はA級でナンバー1の好成績をあげ、7月から初のS級入りを果たすとさらに勢いは加速。記念決勝進出や、S級初優勝を飾るなど着実に力をつけています。今後はビッグ戦線を賑わすこと間違いなし、見逃せない選手のひとりです。
力を付けるため、どんどんチャレンジしていきたい
最近の成績
 2009年1月に小田原でデビュー。今年の前半はA級で10度の優勝を飾るなど圧倒的な成績を残した。勢いそのままに、初のS級入りした7月以降も好成績を挙げており、8月の松戸記念では3連勝で決勝に進出、9月の別府FIでも3連勝でS級初優勝も早々に達成した。破壊力ある先行捲りで、今後の成長が楽しみな逸材だ。
直近4ヶ月の成績(11月10日現在)
勝率 54.1%
連対率 54.1%
3連対率 62.5%
バック本数 10本
平均競走得点 106.95
「僕としても今のところは出来すぎという感じはしています(笑)。最終的な目標はもちろんもっと上なので、今は通過点でしかないんですけど、その中でも1期目からこれだけ1着を取れるとは思いませんでしたし、驚いているところではあります。昨年9月くらいから少しずつ良くなってきて、今年のはじめのA級戦は1位で終わることが出来たんですけど、僕の場合はそこから何も変えなかったのが逆に良かったのかなと思っています。特別に何かしようと思うよりは、練習や競走自体の持って行き方もあまり変えなかったのが良かったのかもしれませんね。S級初優勝は、なかなか取れないより早いときに決められて良かったですね。これから長い間決勝に乗っていく中で、ずっと優勝できないままだと焦りも出てくるので、その分でも先に取れた方が、今後余裕を持って臨めると思います」
バンク周長別
 7月からのS級戦では、11月10日現在で333バンクは1開催、500バンクも1開催のみの出場につき、数字には注意したい。周長別では、400バンクが一番走りやすく好感触を持っているようだ。
バンク別の成績
  333m 400m 500m
勝率 75.0% 61.9% 25.0%
連対率 75.0% 61.9% 25.0%
3連対率 75.0% 71.4% 50.0%
「333と500だったら、僕はどちらかといえば短走路(333)の方が得意かもしれないですね。僕の場合は、根田(空史)とか鈴木裕とか千葉の他の若手と比べると、断然、脚は劣っていると思っているので、それを考えると短走路の方が先行しても残れますし、いろいろ幅も出てくるのかなと。500バンクはモロに脚力の差が出ますし、なかなか500で先行して残るのは難しいですからね。 400が一番良いと思います。走りやすいですね。出来れば直線も短い方が良いです。直線が長いイメージがあると、4コーナーから抜かれると思ってしまって仕掛けが遅れて悪循環になってしまいますけど、直線が短いと、早めに仕掛けられますからね。走路については、重い軽いよりは、風の強いところがあまり得意ではないですね。元々、体重が軽いので風の影響を受けやすいんです。追い風で流れてくれればいいんですけど、向かい風や横風はきついですね」
グレード別成績
 7月から初のS級につき、いまのところビッグレースの出場はなし。FI、記念ともに勝率は50%を越えており、成績からも充実度がうかがえる集計といっていいだろう。
グレード別の成績
  FI GIII GII GI
勝率 56.5% 50.0% - -
連対率 56.5% 50.0% - -
3連対率 65.2% 62.5% - -
「準決勝や決勝にいけばSSの人と走ることもあると思いますけど、予選や二次予選では普段走っているメンバーとそこまで変わらないので特別な意識はしていないです。でも、記念の方が相手が強いのでもちろん力は入ります。僕の場合は今まで走った記念が両方とも地元(松戸、千葉)だったので、なおさらかもしれないですけど。松戸記念のとき、レースでの気持ちの入れ方など、いつもと変わらないで臨んだんですけど、準決勝と決勝で武田豊樹さんと一緒に走ったときに、走る前の雰囲気から違ったんですよね。威圧感やオーラをもの凄く感じたので、それはレースに対する意気込みや今までしてきた準備が全然違うんだなというのを感じたました。S級に上がってすぐのときは何も変えていませんでしたけど、これからどんどん上の選手と戦っていくにあたっては、気持ちの面でももっと今から変えていかないといけない時期なのかなと感じています。S級に上がってすぐに記念決勝を走れることなんて少ないと思うし、僕は運良く体験することが出来たので、これから先に活かしていく上で、アドバンテージがあるかなとは思います」
開催日別
 初日の予選は勝率60%、3連対率80%と堅実に突破している。注目は準決勝で、7回走って6勝と固め打ち。松戸記念の準決勝では武田豊樹を破り1着突破を果たしている。
開催日別の成績
  初日 二次予選 準決勝 決勝 敗者戦
勝率 60.0% 50.0% 85.7% 16.7% 60.0%
連対率 60.0% 50.0% 85.7% 16.7% 60.0%
3連対率 80.0% 50.0% 85.7% 33.3% 60.0%
「他の人と比べたことがないので分からないですけど、直前はあまりやらない方だと思います。(開催の)前の日は丸一日、自転車に乗らないですし、トレーニングもしないです。その前までは強めにやったりしますけど、今はだいだいそう決めていますね。一日乗らない期間を作ると、早く乗りたいなという気持ちに僕の場合はなるんですよ。それに一日乗らないで好きなことをしていると、リラックスできるし、緊張感を高めすぎないで過ごすことが出来ます。そうしないと僕は完全に高めすぎてしまうタイプなので、意識してそうしています。 準決勝はそんなに1着ですか(笑)。自分では分からなかったです。僕は気持ちで走るタイプだと思うので、準決勝は決勝よりも大事なレースだと思っているし、そこで結果を出せているというのは自分の気持ちの入り方がそこに向かっているからだと思います。 僕は元々、徹底先行でもないですし、どこのレースでもそんなに意識を変えないようにと思って走っています。だから予選、準決勝、決勝でも、後ろに誰が付いているとかもあまり意識しないで、自分の力を出せるレースをしたいなと思っています。本当は考えなければいけないんですけどね。僕の場合はいろいろやろうとすると、そこしか見えなくなってしまうので、それならレースのタイミングで先行するなら先行、先行したい人がいるなら後ろからでも捲り、そういう方が自分に向いているのかなと思っています。 敗者戦は、負けた時点で一旦、気持ちは切れてしまうので、そこから立て直そうと思っています。先輩方にも『敗者戦の方が大切だぞ』と言われているので、そういうところだと思います。気持ちだけ切り替えて、保てれば、あとは何とかなると思うので、そこだけ頑張りたいですね」
戦法
 バックのみのときは勝率も70%越えと圧倒的な数字を残している。ホームバックを取ったときは43%、取れなかったときは60%。徹底先行ではない山中だが、戦法に関しての考え方はいかに。
ホーム・バック数から見る成績
  Hのみ Bのみ HB HBなし 番手
勝率 0.0% 71.4% 42.9% 60.0% -
連対率 0.0% 71.4% 42.9% 60.0% -
3連対率 0.0% 85.7% 57.1% 66.7% -
「ホームバックを取ったときはそんなに勝っていると思いませんでした。僕の場合はカマシ、捲りが多いので、ホームを取れないで、バック線では前に出ているような、そういう仕掛けが多いんです。僕のスタイルがはまったから、こういう形になったのかなと思います。自分を客観的に見たとき、ホームバックを取ったときの数字が、バックのみ取ったときの数字に近づいてくれば、成績も上がってくると思いますね。バック数は、自分ではそんなに気にしないんですけど、相手に対しても、ラインに付いてくれる人に対しても、周りの人の目や考え方を見たときに、絶対に必要な数字だなと思いますね。抑えで駆けたにしても、カマしたにしても、捲ったにしても、バック線で先頭に立つというのは、後ろの人も有利になるし、そういうのを考えたときに、バック本数は大事なものだと思います。 バックを取っていないときは、勝率60%ですか。あまり名古屋の準決勝みたいな捲り追い込みは好きではないので、出来ればああいうレースはしたくないですね。後ろの人も活かせないし、僕自身も仕掛けが遅いと自分の体としても楽なので、それを覚えはじめるとレースの展開が厳しくなるし、リスクが大きくなると思っています。たまにはいいですけど、普段は早めの仕掛けを見せておきたいですね」 
メッセージ
今後の出走予定
豊橋FI 12月3日~5日
京王閣FI 12月28日~30日
「僕の場合は、初日のレースを見てもらえれば、開催の調子が分かるのかなと思いますね。条件が悪ければタイムはもちろん出ないので、まずはレースの内容を見てもらえれば。初日が良ければ2日目、3日目に悪くなるということはあまりないですね。 来年からは少しずつビッグレースにも出られると思います。そこで戦えてはじめて選手としてやっていけるかどうかが試されると思うので、今のうちに力を溜めて、活躍できるように頑張っていきたいです!気持ちとしては楽しみな方が大きいですし、僕はずっとエリートでやってきたわけではないので、今はたまたま流れが良いだけ。本当に力を付けて勝てるようになりたい、そういう風に思いますね。どんどんチャレンジしていきたいです」
 ※12年7月から12年11月10日までのS級戦の成績を集計したものです。