解説&分析

 過去の競走データを基にして、注目選手を分析する「選手分析シリーズ」。2013年一発目に登場するのは栃木91期の矢野昌彦選手です。12年は初のS級1班入り、そしてS級初優勝を飾るなど飛躍の一年となりました。さらに今年2月の全日本選抜でビッグレース初出場も決まっており、着実にステップアップをしています。関東地区期待の先行選手、今年の走りにも注目していきましょう!
上のクラスで戦えるよう、レベルアップをしていきます
最近の成績
 12年は年始から長期欠場に見舞われて4月にようやくの復帰。当初は苦戦を強いられていたが、歯車が噛み合ってくると持ち前の先行力を武器にグングンと成績を上げていった。昨年7月には初のS級1班への昇格を果たし、9月の松阪FIではS級初優勝も達成した。
直近4ヶ月の成績(12月25日現在)
勝率 7.6%
連対率 30.7%
3連対率 61.5%
バック本数 12本
平均競走得点 109.07
「(12年の)前半は1月の立川を走ったあとに、ヘルニアになってしまって。それで3月いっぱいまで休んでいて、4月から復帰しました。6月までは何とかS級1班の点数を確保できて、7月からは初のS級1班だったんですけど、脚もだんだん戻ってきたし、特選スタートにもなって、一気に点数が上がってきた感じですね。ヘルニアの調子も良く、今はそのケアもうまくやっています。自分でコンディションを作って、うまくいった感じですね。(S級初優勝については)、優勝できたことで目標は達成できたんですけど、内容は3番手からの差し切りで、本来の先行捲りではなかったので、物足りない部分はありました。自力でちゃんと逃げ切っての優勝を今後の目標にしたいと思っています」
バンク周長別
 勝率の比較では333バンクが最も高く、500バンクでは苦戦しているように思えるが、3連対率の比較だと500バンクが最も高くなるなど逆転しており、そこまでバンクによる得意、不得意はないようだ。
バンク別の成績
  333m 400m 500m
勝率 22.2% 19.2% 5.0%
連対率 33.3% 41.1% 30.0%
3連対率 55.6% 58.9% 60.0%
「(バンク周長は)特に意識していないですね。それなりにどのバンクでも安定した成績を残せていると思います。でも今は先行するなら333の方がやっぱり粘れている感じはありますね。直線が短いので、踏む距離が長くなっても残れているというのはあります。400だとちょっと攻め方も難しくなって、失敗するパターンもありますが、どのバンクも同じように走れているとは思います。  風はやっぱり気にしますね。バックが向かい風だと先行はきついし、バック追い風の方が先行はかかるので。そのあたりはちょっと意識しますけど、みんな条件は一緒ですからね。できれば雨は降って欲しくない感じです(苦笑)。雨だと普段の感覚が分からなくなるときがあって、ちょっと走りづらいので、どちらかといえば晴れの方が良いですね。それに寒いときに雨が降ると体が冷えてきて、先行もきつくなってきるので、晴れの方が走りやすいです」
グレード別成績
 現時点ではFIとGIIIでの比較となる。勝率、3連対率ともに大差はなく、12月伊東記念でも決勝に進出し主導権を奪取、自身は7着に敗れたが長塚智広の優勝に貢献した。グレードレースでも徐々に頭角を現してきており、2月の全日本選抜ではビッグレース初出場が決まっている。
グレード別の成績
  FI GIII GII GI
勝率 17.7% 15.6% - -
連対率 41.8% 31.3% - -
3連対率 59.5% 56.3% - -
「う~ん、でも最近は記念でも特選スタートになったので、(GIIIでは)ちょっと勝てなくなった部分はありますね。二次予選では勝ち上がれているんですけど、準決勝でまた上のレベルと戦うと…。戦う相手のレベルが上がってきているので、FIより3連対率が下がってきたかなと思っています。それと(上のレベルは)みんな大ギアを踏みこなしているので、ギアの差は感じますね。伊東記念では4.17を4.25にしたら少し手応えが掴めて決勝にも乗れたので、少しは修正できてきたかなとは思います」
開催日別
 近況は特選スタートなので、予選スタートのときと比べると初日の成績は下がってきている。全体的に勝率は低めだが、決勝戦にコンスタントに進出しており、車券貢献度も高そうだ。敗者戦でもしっかりと数字を残しており、現在の調子からしても今後は全体的に数字も上がっていくことが予想される。
開催日別の成績
  初日 二次予選 準決勝 決勝 敗者戦
勝率 30.3% 0.0% 3.4% 7.1% 25.0%
連対率 51.5% 14.3% 27.6% 21.4% 46.2%
3連対率 69.7% 57.1% 48.3% 35.1% 67.9%
「(調整は)前検の前の日は練習をやらないようにして、マッサージやケアだけしています。だから前検日の前々日まではきっちり練習して、前検を入れた2日間あけて初日に持っていく感じでいます。(その調整方法は)2~3年やっています。デビューしたときはギアも軽かったので、その調整で入れば徐々に上がっていく感じでしたけど、今はギアがかかっているので、疲労が残っている状態で入ってしまうと初日から踏めないんですよね。だから完全にフレッシュな状態で入るので、そうすると日を追うごとに疲労は溜まっていくものなので、(シリーズを通して)尻上がりには良くなることはなく、現状維持か、若干落ちるくらいです。準決勝でも決勝でも、基本の動きは一緒で、あとはどう力勝負に持っていくかということだけ考えています。敗者戦も、競走自体は変えず、力を出し切って、結果はどうなるかなという感じですね。でも3年くらい前、初日と2日目に全然勝てなくて、最終日にギアを4.17に上げたら良くて、一番のキッカケになったことがありました。初日2日目に力が出し切れず終わったら、最終日は思い切り力を出し切って走ろうとは思いますし、(モチベーションは)下がるというより、次のレースに弾みを付けようという感じですね。結果的にも力を出し切った方が成績に繋がるんだなと思っています」
戦法
 これは顕著なデータだと言っていいだろう。バックのみ取ったとき、ホームバックを取ったときに比べると、バックを取れなかったときの数字がガクッと下がっている。逆に、しっかりと主導権を握ったときは、高確率で車券に絡んでいると言えよう。
ホーム・バック数から見る成績
  Hのみ Bのみ HB HBなし 番手
勝率 0.0% 66.7% 21.0% 6.7% -
連対率 23.1% 66.7% 45.2% 23.3% -
3連対率 38.5% 66.7% 67.7% 46.7% -
「バックが取れていないときは先行争いをしてしまったときか、後方におかれてしまって力を出し切れていないときだと思うんですよね。ホームバックを取れているときはしっかり先行が出来ているときなので、うまく自分のスタイルに持っていけているんだと思います。(数字は)その差かなと思います。でもバックを取ったからといって、まだ自信はないですよ。走る前とかはまだまだ不安です。思い切って行くんですけど、行って残れるのかなとか(笑)。  あとはペース配分でオーバーペースになってしまい、あっさり捲られるときがあるので、そのあたりの兼ね合いですね。(主導権が取れなくても)先に仕掛けて、番手にはまって気付いたら良い位置にいたりもするし、あとは先行に持っていくときに相手次第で中団に入ったりもしています。外に浮いてもなんとか諦めないで、外並走から捲っていくパターンもあるので、段々と対処できるようになってきた感触もありますし、何とかなってきている感じはします。バック本数については、あった方がいいとは思うので欲しいですけど、流れというか先行基本で動いてのバック本数なので、何が何でもバックを取らなくてはという風には考えていませんね。結果としてバックが取れているという感じです」
メッセージ
今後の出走予定
高知FI 1月23日~25日
全日本選抜GI 2月8日~11日
「ジャンから逃げていっても、2着3着に残れていれば、間違いなく調子は良いときだと思います。あとは初日に疲労が抜けていて力が出し切れていれば、(そのシリーズは)安定するかなという感じです。  13年は全日本選抜にも出られるので、GI、GIIに向けて、さらにレベルアップして、ランクが上がっても良い結果が残せるように頑張ります。今はステップアップができていると思うので、その流れを崩さず、上のレベルで戦えるように頑張っていくだけですね」
  ※11年7月から12年12月25日までのS級戦の成績を集計したものです。