解説&分析

 過去の競走データを基にして、注目選手を分析する「選手分析シリーズ」。今回のピックアップ選手は和歌山の稲毛健太選手です。昨年はビッグレース7度の出場を果たし、年末のヤンググランプリでは惜しくも優勝は逃したものの2着と好走しました。記念競輪の決勝も経験するなど、ナショナルチームでの活躍もさることながら、競輪でも着実に成長を遂げてきています。潜在能力はピカイチなので、今年は競技、競輪の両面での大活躍が期待される逸材です。
抑え先行だけでなく、今年はいろいろな先行を取り入れます
最近の成績
 2010年1月に和歌山競輪場でデビュー。デビュー初戦を完全優勝で飾ると、その潜在能力をいかんなく発揮して、2011年7月にはトントン拍子でS級に昇格。スピードを活かした先行で、グレードレースでも強豪を相手に真っ向勝負を挑んでいる。またナショナルチームにも所属しており、競技でも世界を転戦して奮闘を続けている。
直近4ヶ月の成績(2月6日現在)
勝率 19.0%
連対率 28.5%
3連対率 42.8%
バック本数 14本
平均競走得点 100.80
「S級に上がるまでは順調だったんですけど、S級に上がってからは、駆け引きも必要になってきて…。A級の時は、それなりに脚があったら勝てていたんですけど、S級は展開も大事になってくることが分かりました。昨年はビッグレースを走ったんですけど、ナショナルチーム枠で出ることが出来ていたので、(権利を取って)実力で出たかったですね。ヤンググランプリに出られましたけど、あまり調子は良くなくて…。競技もやるようになってからは、フレームが違うので自分の乗っている感じが全然分からなくなってしまって、それが一番の原因でした。でも、競技は絶対に必要ですし、いかに競輪にそれを繋げていくかですね。昨年はとりあえず抑えて先行しようと思っていたんですけど、今年は抑えだけではなく、いろいろな先行もしようと思っています。ギアもかかりだしていますからね」
バンク周長別
 500バンクは勝率が44%と他に比べると極端に高いが、S級ではまだ9回しか走っていないので注意したい。だが、全体的に見ても、周長が長いほど成績は上がっているように見える。バンクに対する相性はどのように感じているのだろうか。
バンク別の成績
  333m 400m 500m
勝率 7.7% 18.9% 44.4%
連対率 23.1% 27.0% 44.4%
3連対率 38.5% 41.4% 55.6%
「たまに走る333バンクは、苦手かも知れませんね。333はもがく距離が長くなりますけど、そこは別に気にしていません。そこは気にならないんですけど、333は展開が早くなるので、瞬時の判断が必要になってくるんですよね。500バンクは、自分のペースに持ち込めるので嫌いではないです。でも、400の直線が長いところはあまり成績が良くないんですよね。標識線を切ってから長いところが苦手です。だから和歌山や向日町は良いと思います。風は無いよりもある方が自分の中では良いですね。苦しいのは苦しいんですけど、自分も苦しいと、後ろはもっと苦しいと思いますしね。雨が降っても、雨の中で練習もしているので、別に気にならないです。雨の方が、先行選手は有利かなと思っています」
グレード別成績
 昨年はGI4回、GIIは3回出場(ヤンググランプリ含む)を果たした。まだまだビッグレースでは大敗も多く苦戦が続いているが、記念とFIの成績比較では僅かではあるが記念が上回っている。7月の小松島では初めて記念決勝も経験した。
グレード別の成績
  FI GIII GII GI
勝率 22.8% 21.4% 14.3% 5.6%
連対率 31.6% 35.7% 28.6% 5.6%
3連対率 44.3% 60.7% 28.6% 11.1%
「FIだと変に緊張してしまうんですよね(苦笑)。それと自分はけっこう練習をやって、自信を持ってレースにいく派なので、ちょっと10月はワールドカップのシーズンに入ったこともあって…。ビッグレースを走って、力の差はすごく感じました。後ろに付いてくれる人も強いので、よけいな脚を使ってしまったりして…。まだ、そこまでいっていない自分がいるので、昨年は後ろから抑えて駆けて脚を付けるという感じでしたね」
開催日別
 二次予選は勝率こそ0%だが、3連対率は50%なので、記念で好走していることがよく分かる。だが準決勝、決勝と成績的には芳しくなく、決勝はFIで4度、記念で1度進出しているものの、まだ連絡みはない。対して敗者戦は3連対率も50%を越えて最も良い数字をマークしている。
開催日別の成績
  初日 二次予選 準決勝 決勝 敗者戦
勝率 26.8% 0.0% 8.7% 0.0% 22.4%
連対率 31.7% 16.7% 8.7% 0.0% 36.2%
3連対率 43.9% 50.0% 21.7% 0.0% 51.7%
「(調整としては)競走前は周回とモガキ1本くらいにしています。そうやって開催に入ると、初日は重たい感じもしますけど、準決勝、最終日と軽くなっていく感じですね。周りの先輩もそうだったので、自分もデビューしてからずっとそうしています。ただ、もっと練習を追い込んでいって、前検日に休んで、というようなことも考えて変えていかないといけないのかなとも思っています。
(記念の好成績は)記念は相手も強いので、思いっ切りいけるんですよね。そこが大きいと思います。でも、準決勝はあまり良くないです。記念の決勝に乗った時も、FIの決勝にもそんな乗れていないのに乗れた感じだったんですよ。上に上がっていくにつれ相手も強くなっていきますし、たまに経験の無さが出てしまうこともあります。(敗者戦は)絶対に勝たなくてはいけないレース、昨年は内容で勝つという感じでした。捲りよりも、良い形で勝った方が良いところを見せられますからね」
戦法
 直近4カ月のバック本数は14本。先行主体のレースを志しており、数字を見ても、バックを取ったときの成績が良いのは一目瞭然と言えるだろう。だが今年は、昨年まで貫き通してきた抑え先行から、また一歩踏み出していろいろなバリエーションを作ろうと模索している。
ホーム・バック数から見る成績
  Hのみ Bのみ HB HBなし 番手
勝率 6.3% 36.8% 22.6% 11.1% -
連対率 6.3% 52.6% 32.3% 19.4% -
3連対率 12.5% 57.9% 50.0% 36.1% -
「昨年は後ろから抑え先行していたんですけど、今年はいろいろな先行をしていこうとは思っています。1月の和歌山記念でも、前を取ったり、中団を取ったりしてみました。どちらも出来そうな気がしましたし、後ろよりかは前や中団の方が良いのかなと思っています。でも、流れに沿ってまだ動けないので、そこが課題ですね。前を取ったときも、引いていくときも、バックを踏みすぎて車間が開きすぎてしまったりとか、まだうまく流れを使えていない感じです。(同型がいるときは)けっこう早めに抑えにいったりしていますね。前までは絶対に後ろからと決めていたんですけど、前を取ったり、突っ張ったりと考えていかないと。バック本数については、まだ脚がそこまでないんですけど、バックを取るだけではなく、取って残れる選手が一番だと思っています。バックを取るだけなら誰でも出来るし、取った上で、3着までに残っていかないと。だいたい、バックくらいでスピードに乗っていたら最後の直線も踏めると思っています。でも、アカンと思っている時でも勝つときもありますし、最後の直線で踏めると思っていても抜かれるときはあるので、まずはゴール線までしっかり踏む、ということですね」
メッセージ
今後の出走予定
日本選手権 3月19日~24日
「(好調のバロメーターは)タイムもそうですけど、やっぱり動きだと思います。仕掛けないといけないときに、しっかり仕掛けられているときは調子も良いと思いますね。いけないときは、絶対にそういうときに仕掛けられていないときだと思いますし、自信がないので2~3回も(前を)見てしまうんですよね。自信があるときは、いき切らないと思っているときでも、仕掛けられていると思います。
 今年の目標は、昨年記念の決勝に乗ったので、今年も乗ること。そこで出来れば3着以内に入って競輪祭の権利を取りたいですね。あと、一番身近な目標はFIを優勝することです。(初出場の)ダービーまで日にちもあるので、しっかり乗り込んで練習をしていこうと思います。一戦一戦、頑張っていきますので、ご声援よろしくお願いします」
 ※11年6月30日から13年2月6日までのS級戦の成績を集計したものです。