解説&分析

 過去の競走データを基にして、注目選手を分析する「選手分析シリーズ」。今回は千葉の小埜正義選手をピックアップしました。今年すでにFIで2度優勝と好調の小埜選手、戦法に幅も出てきて今年はグレードレースでの活躍も大いに期待されます。一時代を築いている同期に追いつくため、奮闘が続きます。
昨年の成績を上回ることをテーマにして頑張っています
最近の成績
 今年は1月小倉FI、そして2月四日市FIで優勝を飾るなど、幸先の良いスタートを切っている。どちらも番手回りからの優勝で、新たな一面をみせているといっていいだろう。全日本選抜は補充での出走となったが、3月の日本選手権を皮切りに、4月には共同通信社杯の出場も決まっており、ワンランク上のステージでどういった走りを見せるか、注目が集まるところだ。
直近4ヶ月の成績(3月13日現在)
勝率 32.2%
連対率 41.9%
3連対率 51.6%
バック本数 14本
平均競走得点 107.64
「僕の調子と言うより、前で頑張ってくれた後輩のおかげですね。昨年の千葉記念の岩本(俊介)君もそうですけど、後輩が増えてきたので、それが好調の要因だと思います。ラインのおかげですね。昨年の年末から戦法について考えて、根本的には自力で変わらないんですけど、前で頑張ってくれるという後輩がいるときは、いつまでも意地を張らずに、自分よりもバック本数が少なかろうが関係なく番手に付こうと決めました。今のところは、それで良くなっていると思います。昨年の千葉記念も自分より年下の自力ばっかりだったし、後輩が増えてきているのに『俺が一番前だ』と言い続けているのもおかしいと思うので(笑)、自然の流れですね。もちろん自分でも前で戦うし、抑え先行だってしますけど、そういう(番手を回れる)チャンスの時は他地区でも関係なく回れるところがあれば回ろうと、そういう風に変えました。ちょっとずつですけど、変わっていければ良いと思います」
バンク周長別
 勝率を比較すると、333バンクが29.7%と一番高く、連対率、3連対率ではともに400バンクが最も高くなっているが、数字的に際立っているところはない。バンク周長への得意不得意はどう感じているのだろうか。
バンク別の成績
  333m 400m 500m
勝率 29.7% 26.0% 17.4%
連対率 32.4% 37.7% 26.1%
3連対率 37.8% 47.3% 39.1%
「あまりバンク周長は気にしていないんですよ。徹底先行でやっていたときは333が一番好きでしたが、今はそこまで先行にこだわりはなく、自分の順番が来たらいく感じなので、333だから苦手とか、500だから苦手とか、そういうところはあまり無いですね。相性が良くて、走りやすく感じるのは広島と四日市で、成績も良くて、1着も多いと思います。
 基本的に冬場の方が成績が上がるので、バンクは重たい方が好きです。僕は人よりギアもかけているし、体重もあるので、どちらかというとスピードで相手にやられるよりも、パワーで押し切る方が戦法的に合っていて、だから、いつも秋口から成績が上がっていくんですよね。そのかわり夏場に良いイメージがないんです(苦笑)。でも昨年から夏場への取り組みをはじめたら、6月7月は良かったので、8月は落車して指をケガをしてしまいましたが、そこでいろいろ乗り方も変えたりして良いキッカケになったかなと思います」
グレード別成績
 FIでは安定した成績を残しているが、グレードレースではまだ苦戦模様。だが補充出走ながら昨年の高松宮記念杯で連勝したり、千葉記念で決勝進出を決めるなど徐々に上位戦線への食い込みもみせてきている。
グレード別の成績
  FI GIII GII GI
勝率 31.0% 13.6% 0.0% 18.2%
連対率 42.8% 18.2% 16.7% 18.2%
3連対率 51.7% 31.8% 16.7% 18.2%
「上位にいくと、みんな隙が無くなっていくんですよね。FIでは、ビッグレースを走る選手とも走りますが、FIで走ってきた集大成をビッグや記念で出してくるので、FIだったら叩かしてくれるところでも叩かせてもらえなかったり、いつもは突っ張らないのに、記念やビッグでは突っ張る人がいるとか、ちょっと戦法が変わったりして、自分の持っているデータと違うことをやってきますよね。もちろん、僕もそうやっているし、やったりやられたりすることが増えてきてますが、僕はまだまだFIの選手なので、そこを課題にしてやっています。昨年は正規配分でビッグレースになかなか出られなかったですが、ちょっとずつ場慣れしながら、僕自身の隙を無くして、相手の数少ない隙を突けるようなレースが出来るようになればもう少し成績も上がると思います。でも、みんな考えていることが一緒なので、なかなかうまくいかないですけど(苦笑)。ただ、ちょっとずつですが、戦える手応えは感じ始めているので、あとはいろいろ噛み合ってくればもっと良くなると思います。もう1ランク、2ランク上がらないといけないし、それも含めて取り組んではいるので、少しずつ詰めていければ良いかなと思っています」
開催日別
 二次予選は勝率45.5%、3連対率に至っては80%オーバーと安定感は抜けている。他にも決勝での勝率が高いところも気になるところで、数字だけ見れば「勝負強さ」と見て取れるが、本人はどう捉えているのだろうか。敗者戦の成績も3連対率46.9%と高めをマークしている。
開催日別の成績
  初日 二次予選 準決勝 決勝 敗者戦
勝率 24.2% 45.5% 25.5% 24.0% 26.5%
連対率 35.5% 63.6% 34.5% 24.0% 36.7%
3連対率 38.7% 81.8% 45.5% 32.0% 46.9%
「今年から弟子をとったこともあり、ここ最近は直前までマックスに練習して(開催に)入ることが多いですね。それと今年は競走が詰まっていたので、それだと練習量が減ってきてしまうし、ケアよりも練習量が上回るケースが多かったです。基本的には調整した方が良いですが、毎回試行錯誤して、ちょっとずつですが調整方法も見えてきました。上位の人と戦うにはどんどん変えていかないといけないし、日々進化している人たちが相手なので、それに対応していかないといつまで経ってもこの位置になってしまいますし…。ちょっとリスクもあるとは思いますけど、その中で戦っていかないといけないですからね。
(二次予選については)本当なら初日に(特選を)突破するのが一番良いんですけどね。二次予選は落ち着いて走れる部分もあるので、毎回ラインもしっかりしていますし、そこが一番大きいと思います。僕はひとりで走って勝てるほど力はないので、番手や3番手の方のサポートがないと今の競輪は厳しいですからね。武田豊樹さんがよく『ラインで勝つ』とおっしゃっていますけど、本当にそうだなと思います。ラインのおかげで勝ち上がり戦は戦えていると思います。
(決勝の数字は)たまたまです(笑)。今年も前で頑張ってくれた選手のおかげですしね。でも頑張ってくれた以上はそれに応えないといけないというのは常々言われていますし、自分でもそう考えています。
 自力の時は、準決でも決勝でも、いつも通りですね。力を出し切れるように、順番が来たら行くし、後方になっても自分が詰まったと感じたらどこからでも行く、そこは決めているんです。できるだけ動いてラインで決めるというのを心がけています。僕は敗者戦になっても気持ちが切れることがないし、一戦一戦を全力で取り組もうといつもやっています。僕が気を抜けばラインの人みんながダメになってしまいますからね。それにデビューしたときから師匠(宮倉勇)に『一戦、一戦全力で戦え』と言われてきました。僕一人で戦っているわけではないですからね」
戦法
 バックを取ったときの成績が良い傾向にあるが、今はそこまでバックにこだわりは無いという。ここまで何度か触れているように、近況は番手を回れるときは番手回りも選択しており、戦法の幅が広がってきている。パワー満点の自力戦と番手のレース、考え方を変えた今年の走りは要注目だろう。
ホーム・バック数から見る成績
  Hのみ Bのみ HB HBなし 番手
勝率 0.0% 66.7% 29.6% 21.7% 57.1%
連対率 0.0% 83.3% 37.0% 31.7% 71.4%
3連対率 9.1% 91.7% 44.4% 42.5% 71.4%
「(自力の時は)基本的には前に前に進んでいくというのがテーマで、番手にはまっても、詰まったと思ったら出ていきます。自分の力を最大限出せるように、そこをまず考えているので、戦法を固定してやっているという感じはないですね。バック本数は4本~5本のときもあれば、今のように14~15本のときもありますけど、結局みんなやることが一緒ですから、あまり気にしないようにしています。バック本数が少ないから先行しないというわけでもないし、順番が来たらいくし、もちろん自分でレースを作ることもあります。相手と自分の状態を見て、臨機応変に戦っていきたいです。まだちょっと追い込みになるには早いので(笑)。
(目標がいるときは)もう少し自分で牽制できるカカリ具合いだったら、それも考えなくてはいけないですけど、今のところは番手捲りばっかりで。僕もずっと前で走ってきた人間なので、そればっかりでは…。そこはいろいろアドバイスをいただきながら、変えていければいいと思います。ラインで決まるのが今の競輪の理想だと思いますし、前で頑張ってくれるのは嬉しいことなので、そこで僕がサポートできないといけないです。だからこそ、ラインで決めるような番手の仕事も頭に入れていかないといけないと思います。番手捲りだけのワンパターンだと自分自身の首も絞めかねないし、いろんなパターンがあって、いろんな戦法をとれるのが一番強い人だと思うので、まだまだですけど、少しでもそこに近づけるように、広い視野でレースを組み立てようと思っています」
メッセージ
今後の出走予定
日本選手権 3月19日~24日
川崎GIII 4月4日~7日
共同通信社杯 4月26日~29日
「とにかく前に前にいこうという意識があるときは調子が良いと思います。引いてすぐカマシにいったり、抑えても他のラインを前に出させない踏み方をしているときとか、番手に入ってもすぐ出ていったりとか。自分で思っているよりも身体が動いているからそういうレースをしていると思うので、そういうときは調子が良いですね。
 毎年、昨年の成績を上回ろうというテーマを持ってやっています。僕は同期でも遅咲きの方ですし、ケガも多かったですが、だからこそちょっとずつでいいので、上を走っている人に食らい付いて、追いついていければいいかなと思っています。うちの道場も山中秀将や矢口大樹がすごい頑張っているので、弟弟子にも負けてられないですからね。まだまだ僕もぺーぺーですけど、這い上がって、少しでも『千葉と言えばこの選手』と言われるような何人かの1人になれるよう、『千葉の小埜』というのを覚えてもらえるように頑張りたいです」
 ※11年1月から13年3月13日までのS級戦の成績を集計したものです。