月刊競輪WEB|KEIRIN.JP
 誰もいない整備場。整然と並ぶ自転車が穏やかな光を浴び、まもなくウォーミングアップに訪れる選手を心待ちにしている。
 ここは競輪場。20代前半から50代の選手がファンの期待を背負い勝利を目指す舞台だ。醍醐味の一つは、ベテラン選手の老練の走りと若手選手の気鋭の走りが織りなす勝負の行方。さまざまな思いが交錯する舞台裏を写真で紡ぎます。
2019年4月 前橋競輪場
「辞めずに頑張ってよかった」
山原 利秀
高知  高知期
50歳  A級2班
「デビューの翌年からは、走れば100万、200万と、
右肩上がりで稼げるようになって、
20代、30代は全く練習しなかった。
ちゃんとしていたら記念の1つは獲れたのではと思います」
ここ2、3年は、サドルやギア規制の影響で暗闇の中。
「20年前から続けてきたフォームでは自転車が進まず、
ベースを上げるトレーニングもやったがダメでした」
小嶋敬二選手の指摘でハンドルとステムを変更した。
「今、競りも楽しいし何でもできそうな感じです。
辞めずに頑張ってよかったと思っています」
「力尽くでも勝ちたいです」
「先に活躍する同期にいつか追いつくつもりで、
焦らず自分のペースで上がっていけたらと思っています」
こだわりの戦法は。
「主導権を握ることを意識しています。
相手の戦い方で早めの仕掛けになるときは腹を決めて、
それでも着に残るよう自分の中でペース配分しています。
平均スピードも徐々に上がり、手応えを感じている」
デビュー2戦目で落車し躓いた時期もあったが。
「特進はしていないですけど描いた道を進んでいる。
S級での闘いに向け、A級戦は力尽くでも勝ちたいです」
林 慶次郎
福岡  111期
21歳  A級2班
「競輪ほどいいものはない」
長期欠場明け初戦。レースの感触を確かめた。
「レースの流れをみながら動けてよかった。
楽しかった。現場は本当にいいですね」
昭和、平成、令和、三時代を走るベテランも、
セカンドキャリアを考える時期があった。
「昨年5月までの3年間、介護をやっていたんです。
お年寄りが好きでボランティアで始め、いいなと思って」
その経験をしたからこそ気づいたこと。
「怪我もあって負ければ悔しいけど僕は好き。
競輪ほどいいものはないなと思ったんです」
廣川 貞治
東京  61期
51歳  A級2班
写真・文 中村 拓人