月刊競輪WEB|KEIRIN.JP
 誰もいない整備場。整然と並ぶ自転車が穏やかな光を浴び、まもなくウォーミングアップに訪れる選手を心待ちにしている。
 ここは競輪場。20代前半から50代の選手がファンの期待を背負い勝利を目指す舞台だ。醍醐味の一つは、ベテラン選手の老練の走りと若手選手の気鋭の走りが織りなす勝負の行方。さまざまな思いが交錯する舞台裏を写真で紡ぎます。
2019年5月 前橋競輪場
「最高年齢を目標にしています」
古寺 伸洋
埼玉  78期
47歳  A級2班
コツコツと積み重ねた選手人生の次の目標。
「埼玉で所属登録する選手には高年齢でも頑張る人が多い。
そこで最高年齢を目標にしています。
少しでも多く1着を取りたいです」
一番の苦労は体調管理。何があっても必ず朝7時までに起床する。
「我々の業界はオフシーズンがないし、
レース間隔も中3日や20日、急な斡旋もあり、
朝や夜中走ったりするので軽い時差ボケになることがある。
極力生活リズムを崩さないようにしています」
「2回3回踏み直せる脚力を付ける」
デビュー約4ヶ月で特別昇班。その2戦目で落車した。
「デビュー後数ヶ月は良かったのですが、
鎖骨を折ってしまって、順調とはいえない感じです」
骨折の原因も消極的なレースだったかもしれない。
「レースの流れを見過ぎてチャンスを逸し内に詰まったり、
この位置からじゃ脚力が持たないなど迷いがありました」
反省を活かし次の一歩を踏み出した。
「最近主導権を奪って、ゴール前勝負をできるような競走を心がけています。 S級を目指し、2回3回と踏み直せる脚力を付けたいです」
牧田 賢也
福島  111期
22歳  A級1班
「娘がデビューできるまで続けたい」
インターハイ出場の夢を叶えたのは自転車だった。
「競技をやっていた兄の影響もあったのですが、
1年生の時から自転車部の先輩に何度も誘われて、
もしかしたらインターハイも夢じゃないと思ったんです」
8回目の受験で競輪学校入学。選手への切符を手にした。
「入学後よく怪我をしたなぁ。
15年できたら、20年できたらと思いながらここまできた。
頑張ったと思います。S級に一度上がれたので満足です」
今、高校2年の娘が父の背中を追っている。
「デビューできるまで、できるだけ長く続けていたいです」
藤原 義浩
徳島  76期
46歳  A級2班
写真・文 中村 拓人