月刊競輪WEB|KEIRIN.JP
 誰もいない整備場。整然と並ぶ自転車が穏やかな光を浴び、まもなくウォーミングアップに訪れる選手を心待ちにしている。
 ここは競輪場。20代前半から50代の選手がファンの期待を背負い勝利を目指す舞台だ。醍醐味の一つは、ベテラン選手の老練の走りと若手選手の気鋭の走りが織りなす勝負の行方。さまざまな思いが交錯する舞台裏を写真で紡ぎます。
2020年2月 松戸競輪場
怪我との闘いだった
松尾正人
熊本  66期
49歳  A級3班
父の勧めで、周りより少し遅れて高校の自転車部に入った。力の差を埋めるべく、毎晩父と相談しながら練習に励んだ。
「死に物狂いだった記憶があります。練習はとにかくキツかったけど、やればやっただけ面白いように強くなれました」
しかし、早くから腰痛を抱えることになった。選手になってからも常に怪我との闘いだった。それでも競輪が好き。
「人と人とが闘うことで、嫌なところもカッコいいところも見えて、そんな人間くささが面白い」
息子・勇吾(115期)が去年夏にデビューした。
「僕と父は手探りでやってきたけど、競輪に必要なトレーニングや人間関係など、プロとしての経験をアドバイスできるかなと思います。そして毎日楽しく、一生懸命に生きて、1日でも長くここにいたいと、今はそういう気持ちです」




目標は脇本雄太さん
北野佑汰
香川  115期
20歳  A級3班
子供の頃から競輪選手に憧れていた。
「近くに観音寺競輪があって、父が連れて行ってくれました。めちゃくちゃかっこよくて、僕もやりたい!!って」
中学2年の時に観音寺競輪でイベントが開かれた。
「そこで師匠(大西祐)に、僕も競輪選手になりたいので、受験する時になったら師匠になってくださいと直接お願いしました。高校3年から練習をみてもらっています」
息抜きはYoutubeでお笑いを見ること。あまり外には出ないというが、その一方で、レースは積極的だ。
「逃げ切れるような選手になりたい。目標は脇本雄太さん。どれだけ時間がかかったとしても、少しずつでも上がって行きたいです」
脚力・持久力とともに、前に出ていける気持ち、メンタル力の強化を目指している。



写真・文 中村 拓人