競輪補助事業紹介

競輪の売り上げの一部は医療、福祉、ものづくり、スポーツ振興など様々な分野の活動に役立てられています。選手の走りと、ファンの皆さんとで創り出す競輪補助事業。どんなところに、どんな形で支援が行われているのか、ご紹介していきます!
今回は公益財団法人日本体育協会が主催する「日本スポーツマスターズ大会」です。
競技志向の高いシニア世代のスポーツ祭典

日本体育協会にてお話を伺った関谷卓也主事(左)、
川島雄二事務局長(真中)、青田慎太郎課長(右)

大宮双輪場で開催された
今年の日本スポーツマスターズ大会

男子ケイリン

女子スプリント

60歳以上のクラスもある
 「日本スポーツマスターズ大会」はシニア世代(35歳以上)を対象とした国内唯一の総合スポーツ大会として、2001年から開催されています。
 まずは大会を主催する日本体育協会を訪ね、お話を伺いました。

 日本体育協会は、日本のオリンピック初参加(1912年・ストックホルム)を契機に1911年(明治44)に創立。当初より「国民スポーツの振興」と「国際競技力の向上」を柱に活動していましたが、1989年(平成元)に日本オリンピック委員会(JOC)が日本体育協会から分離・独立。これによりJOCがオリンピックへの選手派遣やトップアスリートの強化などを担当。日本体育協会は「国民スポーツの普及・振興」を中心に、なかでも子供からお年寄りまで安全に楽しくスポーツに親しむための「生涯スポーツの推進」を大きな役割として担うこととなり、現在に至っています。

 日本体育協会では国民体育大会(国体)の開催をはじめ、スポーツ指導者の育成やスポーツ少年団の育成、スポーツ医・科学の研究など多くの事業を行っていますが、そのなかの一つにシニア層に向けた競技大会である「日本スポーツマスターズ大会」があります。
 「スポーツ愛好家の方で、年齢的に競技の第一線は退いたけれど、のんびりスポーツを楽しむだけではまだまだ物足りない、スポーツで競い合いたいという競技志向の高いシニア世代の声も多く、それならそういう層の方々のための総合大会を開いてはどうかというのが大会の始まりでした」と川島雄二事務局長は言います。
 第1回大会は宮崎県を開催地に陸上、水泳、テニス、サッカーなど12競技が行われ、5000人を超える参加者が集まりました(自転車競技は第2回大会より実施)。以降、回を重ねるごとに大会の知名度も上がり、14年経った現在では参加者数も8000人規模にまで増えています。参加者にとって大会への出場は、競技に取り組むモチベーションアップになるのはもちろん、仲間との交流や大会参加後の観光など様々な楽しみ方ができます。また開催地にとっても多くの人が集まることは経済効果に繋がることから、今後さらなる発展が期待されます。
 川島事務局長は「開催地として立候補してくれる自治体も増えてきています。現在は13競技を実施していますが、今後とも競技人口等の調査を行いながら、シニア層の多い競技を新たに取り入れることも検討する必要があるかと思っています」と展望を語ります。

 日本体育協会では、この「日本スポーツマスターズ大会」とともに国体のブロック大会(予選会)の開催や、スポーツをする子供たちに多く見られる怪我の予防や対処法を研究する「ジュニア期におけるスポーツ外傷・障害予防プログラム開発」といった事業に競輪の補助金を活用しています。

 最後に、2020年の東京オリンピック開催に向け、日本体育協会として今後どんな展開を予定されているのか川島事務局長に伺うと、自転車競技ファンにとっても嬉しい話が聞けました。
「オリンピックに関しては、基本的には大会組織委員会が運営を、JOCが選手強化を行っていくことになります。日本体育協会として考えているのは国体からオリンピックに繋がるようなジュニア選手の発掘・育成事業と、もう一つは国体では行われていないオリンピック種目の実施です。特に女子種目が多く、例えば自転車競技もそうですが、レスリング、ボクシング、ウエイトリフティングなどは現在の国体では男子種目のみ正式採用されています。6年後を見据え、オリンピック種目に関しては国体でも男女同じような形で実施できるように進めていきたいと考えています」

「日本スポーツマスターズ大会2014」は埼玉県で開催され、自転車競技はトラック種目が9月20日(土)~21日(日)の2日間にわたり、大宮公園双輪場で行われました。
大会当日、競輪選手会埼玉支部から運営協力で参加されていた高橋京治選手と飯田威文選手に話を聞きました。また、大会参加者にもマスターズ大会の魅力をインタビューしました。
選手インタビュー

左から高橋京治選手、飯田威文選手
高橋京治 埼玉・51期
「今回は主に選手のフォルダー役(スタート時に自転車を支える役)でお手伝いさせてもらいました。
マスターズ大会を見るのは今回が初めてですけど、60代の皆さんのケイリンもすごく迫力がありましたし、自分がその年齢になったときにこうやって頑張れるかなと思うと、本当にすごいですよね。元競輪選手も何人か出場していますけど、元プロだからといってそう簡単に勝てるものでもなくて、マスターズとはいえ全国大会ですから、レベルが高いなと感じました。ある程度年齢がいった方々が、こうやって楽しみながら頑張っているのを見ると、こちらも力をもらいますね。僕ももうすぐ51歳になりますけど、どこまでできるかチャレンジ精神で頑張りたいなと思っています。
埼玉支部ではこういった競技大会やサイクリングイベントなど、自転車に関する企画には積極的に協力しているんですけど、こういう協力を通じて自分はやっぱり自転車が好きなんだなというのが再確認できますね。自分ももっともっと自転車を楽しむという気持ちで頑張っていきたいなと思います」


太田真一支部長もケイリンのバイクペーサーを務めた
飯田威文 埼玉・67期
「僕はケイリンのペーサー(先頭員の役)をメインにお手伝いさせてもらったんですけど、大人の方たちが紳士的に頑張っているので、見ていて気持ちいいですね。競輪選手OBの方も多くて、引退してから会う機会もなかなかないですし、同窓会じゃないですけど、そういう意味でも楽しかったです(笑)。
子供さんや若い方ももちろんですけど、やっぱりすべての年代において自転車を理解して楽しんでもらうためには、(マスターズのような)こういう大会は重要だと思いますね。参加者のなかには、おじいちゃんの応援で娘さんとお孫さんの親子三代でいらしているという方もいます。競輪好きな方も結構いらして、私もいろいろ話しかけられたりしますし、こういう競技大会やイベントへの協力は良い交流にもなるかなと思います。競輪を知らない方にも理解や興味を持ってもらえたら、なお嬉しいですね。
埼玉県は今、自転車の振興にすごく力を入れているので、私たち選手会もイベントへの参加など、いろいろ協力しています」

参加者インタビュー

チームスプリントで優勝。松島さんは第1走者

スプリントでも優勝を飾った
スプリント、チームスプリントで優勝。2012年に競輪選手を引退
松島伸安さん(45歳) ※年齢は2014年4月1日現在
「マスターズ(大会への参加)は今回が初めてです。今、前橋市役所で自転車に関わる仕事をしているんですけど、自転車人口の底辺を広げて行こうという試みのなかで、お年寄りでも自転車がすごく好きで赤城山を毎日登っているような方もいらして、僕もそういう方たちと一緒に楽しく乗れる機会を増やしていきたいなと思ったのが、大会参加を決めたきっかけです。
ただ、仕事しながら練習するのはむちゃくちゃ大変で、仕事が終わってから真っ暗ななか街道練習に行ったり、家でローラーに乗ったり。だから仕事しながら練習している人たちは本当にすごいなと改めて思いましたね。仕事は仕事で頑張って、なおかつ生き甲斐でスポーツをやっているわけですから。
レース中は実況で“元競輪選手”とか何度も言われていたので、変なドキドキ感とかプレッシャーはすごくありました(笑)。でも面白かったです。みんなでまた来年も出場しようって話しています」


2km個人追抜競走で優勝

表彰台の真ん中に立つ小沼さん
2km個人追抜競走で優勝。
マウンテンバイクの元エリートライダー
小沼美由紀さん(42歳) ※年齢は2014年4月1日現在
「28歳までマウンテンバイクのエリートで走っていました。現役引退後は妊娠・出産や仕事もあって、月に2〜3回サイクリングで乗るくらいだったんですけど、今年5月にマスターズに出場することを決めてから本格的にトレーニングを始めました。今回初めてマスターズに参加して、私よりも年齢の高い人もたくさんいらっしゃるんですけど、自転車っていくつになっても楽しめる競技だったんだなっていうのが、嬉しくて励みになる部分でした。あと何年自転車に乗れるか分からないんですけど、残りの人生思いっきり自転車に乗れたらなという思いで、競技者として復帰することを決めました。
とにかく今は、自転車が楽しくて楽しくて仕方ないんです。選手時代は、個人で練習してわりと孤独な部分が多かったんですけど、今は仲間もいて、仲間と一緒に励まし合いながら高め合うという環境がすごくいいなって。こういう大会にくれば知らない人とも顔なじみになったりして、いろいろ話もできたりするし、今の私は孤独じゃないという部分がすごく大きいですね。やっぱり仲間がいるっていいなって。長く自転車を続けていきたいなと改めて感じています」