競輪補助事業紹介

競輪の売り上げの一部は医療、福祉、ものづくり、スポーツ振興など様々な分野の活動に役立てられています。選手の走りと、ファンの皆さんとで創り出す競輪補助事業。どんなところに、どんな形で支援が行われているのか、ご紹介していきます!
今回は、信州大学の飯塚浩二郎准教授の研究「立体構造繊維材料を用いた空気レスタイヤの開発」です。
災害レスキュー車両への活用が期待される、繊維を利用した空気レスタイヤ

繊維を使った空気レスタイヤについて説明を受ける

今回の研究で作製した40kgのロボットを乗せた
空気レスタイヤの車輪

様々な路面を想定して車輪を走らせてみる単輪試験機

大量の釘が刺さった板の上も問題なく進んでいく

興味深そうに飯塚先生に質問する小峰選手

飯塚先生(右から2番目)と研究室の皆さん
 信州大学繊維学部准教授・飯塚浩二郎先生が進めている研究が「立体構造繊維材質を用いた空気レスタイヤの開発」です。どんな研究なのか、長野県上田市にあるキャンパスを訪ね、お話を伺いました。

 まず、一般的なタイヤといえば内部に空気を入れ、空気圧で保持された形状のものですが、空気レスタイヤとはその名のとおり空気のいらないタイヤのことで、空気の代わりに別のものを使って機能させます。空気圧タイヤと違い、パンクやバースト(空気破裂現象)を起こさないのが大きな特長です。
 飯塚先生は、この空気の代わりに「繊維」を用いたタイヤの開発を行っており、繊維の弾性力が空気の代用となる仕組みなのだといいます。

 競輪の補助を受けて行った今回の研究では、実際に40kg相当のロボットを乗せた状態での車輪を作製。色々な検証の結果、この重量でもっとも適した繊維はポリエステルだったそうで、ポリエステルにウレタンコーティングした材料を使っているのだとか。また、飯塚先生曰く「車輪の構造自体はとてもシンプル」で、内部のボルトを回すだけでタイヤの固さも調整できるため、路面に合わせたタイヤ交換などの必要もなし。また、大手メーカーでも空気レスタイヤは造られていますが、現状では使用できる車両が限定されるなど拡張性が少なく、この点でも飯塚先生が研究を行っているタイヤは汎用性を持たせたものになっているといいます。
 繊維を使った空気レスタイヤの研究は他では類をみないそうで、かなり斬新で画期的な開発です。「たぶん大学で空気レスタイヤの研究をしている先生自体いないかもしれません。タイヤを造るのには高額な装置なども必要なので。今回の空気レスタイヤがシンプルな構造でできたのは繊維を使ったからだと思いますが、今のところ他にはない研究だと思いますね」と飯塚先生。

 飯塚先生がこの研究を始められたきっかけは、東日本大震災だったといいます。
 「震災のときに消防研究センターの方と知り合ってヒアリングをしたんですが、ほとんどの道路が瓦礫に覆われている状況で、その中を災害レスキュー車や消防車が入って行くことは難しいと。タイヤがパンクしてしまって、救助活動が滞ってしまったり、タイヤを交換するにも狭い場所での作業は大変なストレスになるということでした。そこで、パンクしないタイヤはないだろうかというお話があり、しかも繊維を使って造れないかということで、検討を始めました」
 飯塚先生はもともと月面探査ロボットの研究をされていたそうで、月や火星の表面を走行することをイメージした軽量で柔らかい車輪の研究を専門に行っていました。その経験を生かして最初に造った空気レスタイヤは、かなり柔らかいもので、地上を走るには適していなかったといいます。そこから試行錯誤し、ようやく現在の固さを出すことに成功。

 この繊維を使った空気レスタイヤが実用化できた暁には「やはり災害レスキューの場で使っていただければと思っています。困っている人の役に立てれば」と話す飯塚先生ですが、実際にレスキュー車両などに使うにはまだまだクリアしなければならない点も多いといいます。
 「今回作製した車輪は荷重40kg~50kgを想定したものですが、災害レスキュー車だと800kgくらい車両の重さがあるので、まずそれに耐えられる車輪でなくてはなりません。そのためには繊維材料や構造などもさらに検討を重ねていく必要があるでしょうし、タイヤ表面のトレッド部分に関してはタイヤメーカーの協力も仰がないと難しいですから。実際に現場で使用するにはもう少しグレードを上げていかないといけないですね」
 今後の展望を伺うと、「来年は原付バイク、再来年は軽自動車、3年後にいよいよ普通の車両とか消防車両に対応した車輪を、というふうに計画を練っています。5年以内にはなんとか実践投入したいですね」と飯塚先生。
 被災地などでの活用が本当に待ち望まれます。

 ちなみにパンクが悩みのタネのサイクリストのために、自転車のタイヤへの応用について伺ってみると、「幅が難しいので、そこは設計を考えていかないといけないでしょうね。あとは構造が軽くできれば。可能性はあるかもしれませんね」とのことでした。こちらも期待したくなりますね!

インタビュー
小峰烈 長野・98期
今回の取材に参加していただいた小峰烈選手にお話を伺いました。

小峰烈選手
─繊維を使った空気レスタイヤの開発についてのお話でしたが、どんな感想を持たれましたか。
「やっぱりパンクしないというのは魅力的ですよね。車にしても自転車にしてもつきものなので。自転車でもぜひ実現してほしいですね(笑)。それとやっぱり災害救助という話を聞いたときに、ああすごく大切なことをやっているんだなと感じました」
─競輪の補助金がこういった研究にも役立てられていることについては?
「なかなか自分たちで直接何かができるというわけではないので、こういうこと知って、少しでも役に立てているんだなと」
─補助事業についてはどんなイメージを持たれていましたか。
「老人ホームとか福祉施設の車両とかは見たことがあったんですけど、こういう研究にも使われていたんですね。普段、身近で補助事業に関わる機会はなかなかないので、今回はいいきっかけをもらったと思います」
─支部で何か社会貢献活動やPR活動などをされたりは?
「去年、松本歯科大学でイベントがあって、長野の選手何人かで参加して。競輪選手と直線で勝負してみようという企画で、一般の参加者の皆さんと一緒に走りました。長野はどうしても競輪場がないし、場外もないので、なかなか競輪と接する機会がないですし、競輪選手のこともよく分からないと思うので、少しでも競輪の宣伝になればいいかなと」
─イベントなどを通じて競輪を知ってもらえたら嬉しいですね。
「そうですね。今、浅間温泉のスケート場のところに新しい自転車競技場を造っていて、今年の夏には使えるようになる予定なんですけど。イベントなんかも今まで以上にやりやすくなると思いますし、せっかく新しくなるのでもっといろいろな人たちにバンクに来てもらいたいですね。長野は選手が少ないので、やっぱり自分たちから発信していかないとダメかなと思うので」
─最後にファンの皆さんに一言お願いします。
「長野は選手が少ないですけど、みんな一生懸命やっているので長野全体を通していろいろ応援してもらえたら嬉しいと思います」