競輪補助事業紹介

目標は「W杯王者に勝利する」

ロボット同士が連携してパスを成功させたりシュートを放つたびに、会場から大きな歓声が上がる

ロボカップ2017名古屋世界大会の会場のようす。
期間中の来場者数は約13万人。
同じ会場で各種ワークショップや大型ロボットの
展示会なども開催された
 繰り広げられる白熱したサッカーの試合に、満員の客席から熱い声援が送られる。フィールド内にいるのは人間ではなく、すべてロボットだ。
 2017年7月、愛知県の名古屋市国際展示場にてロボカップ名古屋世界大会が4日間にわたって開催された。今大会では、42の国と地域から2500人を超える研究者・学生が参加、この世界最大規模のロボット競技大会の実現にあたっては、競輪の補助金が大いに役立てられている。
「今後、社会や生活の中でロボットが活躍する機会はますます増えます。ロボカップは、そうした発展の素地を作るための活動です」
 そう話すのは、大会を主催するNPO法人ロボカップ日本委員会の会長で、知能情報学の研究者でもある大橋健氏。
 ロボカップは、90年代初頭に日本の研究者が中心となり提唱された世界的なプロジェクトで、その目的は、人工知能とロボット工学の研究開発を促進し、各分野の基礎技術として波及させること。1997年に名古屋で第1回ロボカップ世界大会を開催して以降毎年、各国の持ち回りで世界大会が行われてきた。
 折しも、第1回開催の同年には、チェスの世界王者が初めてコンピューターに敗れたことが大きく話題となった。これは、人工知能が部分的にではあるが、人間の能力を追い越した画期的な出来事だった。研究者たちは、さらなる技術発展を実現するために「2050年までにサッカーの世界チャンピオンチームに、自律型ロボットのチームが勝利する」ことをロボカップの目標に掲げた。
 その後、ロボットに関連する技術は飛躍的な発展を遂げた。コンピューターの処理速度は格段に速くなり、センサーの性能も向上、マシンを制御するソフトウェアの技術革新が進んだ。現在のヒューマノイド(人型ロボット)の歩行能力は20年前とは比較にならないほど進化している。
 ロボカップは、こうした技術発展や社会のニーズに合わせて、開催のたびに競技種目やルールを見直しながら現在に至っている。
将来の研究者の育成にも貢献

11~19歳の児童等が出場するジュニアリーグ。
大人顔負けの真剣勝負が繰り広げられる
災害現場での捜索活動をテーマにした「レスキュー」など、
サッカーの他にも複数の競技が行われる
 サッカー競技は、ロボットのサイズや形状などにより8つのリーグに分けて行われる。いずれのリーグでも、人間が遠隔操作するのではなく、ロボット自身が考えて自律的に判断して動くことが前提だ。
 1手ずつ交互に駒を動かすチェスなどと違って、サッカーでは常に変化する状況をリアルタイムで判断して行動しなければならない。当然、スムーズにプレーするには、より現実に即した能力が必要となる。
 大会ではサッカー以外にも、産業用ロボットの技術を競う「インダストリアル」、災害時の救助活動をテーマにした「レスキュー」、日常生活でのロボット利用を想定した「@(アット)ホーム」などの競技を実施。様々な課題を設けることで、より実用的なロボット技術の研究開発を促進する、という狙いだ。
 ロボカップがようやく軌道に乗り始めた2000年のメルボルン大会からは、次世代に活躍する研究者の養成を目的として、19歳以下限定のジュニアリーグを新設。現在、ジュニアの競技は「サッカー」「レスキュー」に加えて、人間がロボットといっしょに舞台上でパフォーマンスを行う「オンステージ」の3種目がある。
 出場する子供達に求められるのは、プログラミングや情報処理など、いわゆる理系分野の能力だけではない。メンバー間でのコミュニケーション力や、審査員に対するプレゼンスキルなど、総合的な能力が必要とされる。しかも、競技やプレゼンはすべて英語で行われるため、グローバル化する世界で活躍できる人材の育成、という面から見ても格好の機会となっている。
ロボット技術が作る未来の社会

NPO法人ロボカップ日本委員会の
大橋健会長(九州工業大学教授)。
「年々、参加者の技術レベルが高まっています」
 大橋氏は、ロボカップ、とりわけその象徴である自律移動ロボットによるサッカー競技の意義を、かつてのアポロ計画になぞらえてこう説明する。
「私たちはサッカーをひとつのランドマークプロジェクトに据え、社会に役立つイノベーションやその種を生み出すことを目指しています」
 月面着陸という歴史的事業を支えた多くの研究が、その後の科学技術や産業の発展に大きく寄与したように、ロボカップから未来の世界を変える研究や人材が生まれる日も遠くはない。
 実際に、ロボット・サッカー競技がきっかけで世界に広く普及するようになった全方位に移動できる駆動輪「オムニホイール」の技術は、既に一部の車イスなどで実用化されている。また、世界的なネット通販企業の巨大な倉庫内で荷物の仕分けをする移動ロボットに搭載された制御技術も、過去大会の出場チームが競技のために開発した研究がベースとなっているという。
 今後、身の回りのあらゆる分野にロボット技術が一層浸透することは疑いようがない。そんな、私たちの未来をかたち作る取り組みの一端を競輪の補助事業が支えている。