競輪補助事業紹介

競輪の売り上げの一部は医療、福祉、ものづくり、スポーツ振興など様々な分野の活動に役立てられています。選手の走りと、ファンの皆さんとで創り出す競輪補助事業。どんなところに、どんな形で支援が行われているのか、ご紹介していきます!
今回は、シニアを対象とした競技大会「2018全日本自転車競技選手権大会マスターズ」です。
シニア世代の日本チャンピオンを決めるトラック競技大会

ピット風景。今年も「全日本オムニアム」と
同時開催で行われた

各種目の優勝者に贈られるチャンピオンジャージ

対戦種目の花形、スプリント

唯一の団体種目、チームスプリント

今年初めて行われた男子スクラッチ

今年は60歳以上のカテゴリーには4名が出場
 「全日本自転車競技選手権大会マスターズ」(以下、全日本マスターズ)は、公益財団法人日本自転車競技連盟(JCF)が主催する、シニア世代(男子35歳以上、女子30歳以上)を対象としたトラック競技大会です。トラック、ロード、MTB、BMXなどJCFが開催している他の全日本選手権と同様に、日本チャンピオンを決める大会であり、2014年からスタートしました。

 この大会の最も大きな特徴は、各種目の優勝者に授与されるチャンピオンジャージ。1年間着用が許され、競技大会の参加時はこのチャンピオンジャージで走ることができます。
 また、日本スポーツ協会が主催し、シニアの国民体育大会とも呼ばれる「日本マスターズ」(この大会にも競輪の補助金が活用されています)でも自転車競技は行われていますが、同大会は所属する都道府県代表としての参加となるのに比べ、「全日本マスターズ」は個人やチームでのエントリーが基本。出場種目数にも制限はないため、様々な種目にチャレンジすることが可能です。
 そして、毎年伊豆ベロドロームで行われていることも特徴の一つ。周長250mの木製バンクでのレースは参加者の技量も問われ、まさに日本一を争う大会に相応しい、本格的な戦いが繰り広げられます。

 2018年の大会は10月6日~7日の2日間にわたり開催されました。今年は男子が54名、女子が4名のエントリーと、女子は昨年の10名に比べかなり少ない人数となってしまったものの、30代~60代まで男女合わせて60名近い参加者が集いました。
 レースは基本的に年齢ごとのカテゴリーで行われ、男子は35歳~39歳、40歳~49歳、50歳~59歳、60歳以上の4つ。女子についてはカテゴリー分けはありません。
 種目は男女ともに個人追抜き、タイムトライアル、スプリント、チームスプリントの4種目が例年行われていますが、今年は男子のスクラッチも実施。これまで集団でのレース系種目は採用されておらず、今回のスクラッチは初めての試みでしたが、落車などトラブルもなく、単独で逃げた選手が優勝するという熱い展開に、会場からも大きな歓声があがっていました。

 この「全日本マスターズ」には、元競輪選手や元MTBのエリートライダーなどプロとして自転車に携わっていた方から、ずっと趣味として競技を楽しんでいる方まで幅広く参加しています。
 チャンピオンジャージを懸けて競い合う大会は、やはり特別な位置づけであり、参加者たちの気合もかなりのもの。ベロドローム用の機材選びやポジション出しから、より速いタイムを出すためのライン取りの研究など、ストイックに取り組んでいる方も少なくありません。
 なにかと忙しいシニア世代にとって、練習時間を確保するだけでも簡単なことではありませんが、多くの方々は仕事や家庭と両立しながら、練習に励んでいます。優勝すれば得られる日本チャンピオンの称号は、そんな参加者たちにとって大きな目標であり、モチベーションになっています。
 また、この大会の存在は、若い頃に自転車競技を経験したものの、その後一旦離れてしまった方が、シニアになってから再び挑戦できる場にもなり、将来的に幅広い年代で自転車競技人口の増加に繋がることも期待されています。

 今年で5回目の開催となった「全日本マスターズ」。大会としての歴史はまだ浅く、その分実施種目や参加人数など、これから様々な部分で変貌を遂げていく可能性は十分にあり、どのように進化していくのか、今後が楽しみな大会です。

参加者インタビュー

小原洋未さん


昨年は個人追抜きと1kmタイムトライアルで優勝したが、
今年は惜しくもそれぞれ2位と3位という結果に
小原洋未さん(大阪・VC VELOCE) 49歳

元競輪選手で2013年に現役を引退。全日本マスターズは3回目の出場

「自分はトラック競技だけでなく、クリテリウムだとか色々な大会に出ていて、普段は大学生とか若い子を相手にレースをしているんですけど、この大会に来ると全国には強いおじさんが結構いるんだなと実感します(笑)。こんな強い人がいたのかっていう驚きと、やっぱりチャンピオンジャージも懸かっているので、みんな本気ですし、ピリピリした緊張感とかそういう面白さがありますね。みんなであれこれ情報交換もするので、毎年参加者のレベルは上がってきていますし、全体的にタイムが上がれば大会自体もどんどん盛り上がってくるんじゃないかなと思います。
競輪選手の場合、辞めてからもずっと自転車に乗っている人は案外少ないんですけど、自分は自転車が好きというよりは、自転車の競技でどうタイムを出すかを考えるのが好きなんです。競輪選手時代は仕事としてのレースがあって、調子を崩すわけにもいかないので、ギヤだとか試したくてもやれないことが色々あったんですけど、今は好きなように試せる。自分がどれだけタイムを出せるか、自分のやり方でどこまでいけるか、それを突き詰めてやってみたいと思っています」

越田恵美子さん


スプリントと500mタイムトライアルに出場し、
スプリントでは優勝を飾った
越田恵美子さん(石川・keiG) 43歳

昨年競輪選手を引退し、全日本マスターズは今回が初出場。スプリントで優勝

「もともと趣味で自転車競技をずっとやっていて、それが競輪選手を目指すきっかけでもありました。今は介護の仕事をしていて、ストレスもありますし、なにか息抜きをとテニスとか他のスポーツもやってみたんですけど、やっぱり自分には自転車しかなくて、結局また自転車競技に戻ってきてしまいました(笑)。趣味で参加する大会はプロのときのようにプレッシャーもないし、好きなように走れてやっぱり楽しいです。時々練習を見てもらっている小嶋敬二さんには、もう選手じゃないんだからそんなに頑張らなくてもいいんじゃないと言われて、無理せず、ほどよく自転車が楽しめればいいかなと思っていたんですけど、今回500mタイムトライアルで恥ずかしいタイムを出してしまったので、やっぱりもうちょっと練習しなきゃと思いました(笑)。この大会にはまた来年も出たいですね。もっと女子選手の参加が増えてくれたら嬉しいです」