インタビュー

高木真備が好調だ。
デビュー当初、ケイリンの取材で負けて涙を流していたのが印象的だった高木。
その涙に負けじ魂を感じていた。
競輪学校在校時からその能力の高さには注目が集まっていたが、小林優香、石井貴子という抜けた存在があったため、陰に隠れていたのだろう。
負けじ魂と才能、そして気持ちが切り替わった事で106期からまた新たな注目選手が誕生した。
高校時代の押し付けられる厳しさから、自ら楽しむ事によって更に強くなる!
-まずは近況、玉野(8月7日~9日)と川崎(9月28日~30日)の2度優勝と好調ですね。
「好調というか、デビューしてからは、ずっと勝ちたい気持ちと自力を出さなきゃという気持ちで迷っていて、それで中途半端なレースをしていたんですけど、7月くらいから、もう先行と決めて、3年後に勝てるように(ガールズグランプリで)なればいいという思いで、先行と決めました」
-迷いが吹っ切れた理由は?

高木真備 106期 東京
「色々ありますが、他の選手から、今、楽な勝ち方をしていてもそこで終わってしまう選手になるから、上を目指すんだったら、今は若いんだし、先行した方がいいよって言っていただいたのもありますし、和歌山の時に加瀬(加奈子)さんと初めて同じレースで、先行で行って加瀬さんに合わされてダメだったんですけど、こういうレースをしていたら力もつくし、いいこともあるから、楽な勝ち方は今はしないでほしいって言われたんです。私的にはすごく嬉しくて、すごく憧れていた選手だったので、嬉しくて、それで決めました」
-それが結果に結びついてきている?
「最初の内は結果が出ずに5着ばかりでしたが、でも、5着にならないためにはどうしたらいいんだろうと思って練習するようになったので、練習内容も変わりましたし、力もついてきて、着がちょっとずつ良くなってきて、その結果が川崎の優勝だったと思います」
-その前の玉野の優勝はどうでした?
「サマーナイトFの裏開催だったので、いつもの主力メンバーがいなく、誰が優勝してもおかしくなかったので、優勝しなきゃってすごいプレッシャーがありましたが、ギリギリでしたけど逃げて勝てたのは良い経験になったと思います。 でも、あの時は打鐘から動いていないので。4コーナーからのカマしで、1周しか逃げてないんです。 京王閣(8月)でレースがあった時に、打鐘から自分で切っていけたのが吹っ切れたきっかけでした。あれが初めて打鐘から行けたので。打鐘から動いて、不安でしたけど、それでも打鐘から行っても大丈夫と思えたので」
練習は京王閣バンク。
-今は誰と一緒に練習していますか?
「今は、京王閣に来ている人と一緒にって感じで、決まっている人はいないですね。基本は1人で、師匠(笠原一人・引退)に来ていただける時はバイク誘導をしてもらったりして、先行であれば前を切って走るだけなんで、600mをもがけるように練習しています」
-一括りで先行といいますが、色々な先行があります。高木選手はどんな先行を考えています?
「今は打鐘で動いて、そこから自分のペースに持っていってです。1周半逃げるのが一番脚がつくと思うので。この先、どういう戦法になるかわからないけど、今はそれで行こうと思います。 先行の仕方も段々わかってきて、この辺は流して大丈夫とか、この辺は踏まなきゃダメだとか、まだ全然わかってないとは思うけど、でも、ちょっとずつ出来ている気がするので、そこをもっと磨いていきたいです」
-東京にはもう1人徹底先行がいますが
「奥井(迪)さんは本当にすごいです。奥井さんは色々と教えてくれて、お互い応援し合っている良い関係なので、私も早く奥井さんみたいに逃げたいと思います」
-学校の時をみると、奥井さんは短距離系は苦手そうだったけど、高木さんも記録、成績は強かったですよね。
「でも、私は1周しか逃げてないんですよ。4コーナーカマシしかやってなかったので、でも、あれはあれで良い経験になったし、色々な勝ち方も勉強できたので、良かったと思います。でも、思い返すと奥井さんは全部先行していたんですよ、地脚があるなって思っていましたし」
まさしく自転車漬けの毎日!
-プライベートはいかがですか?
「今は自転車がめっちゃ楽しいんですよ! こんなに練習しようって思えるのが初めてってくらい意欲がわいているんです」
-勝てたから?
「違いますね。徹底先行に定めてからかな。 自分の目標が定まったから、自分の直さなきゃいけないところがはっきりわかったので、そのために練習しようと思えるからですかね。今までは決めていたつもりでも、漠然としていたのかな。 学校時代から、1着を取るつもりでいましたし、レースで脚をつけようと思っていなかったですし。練習で脚をつけてって思っていましたし、絶対1着をって思っていましたし。 でも、先行でって決めてから自分のモチベーションも上がったし、なんか最近楽しいです」
-その練習がレースで活かされているということですか?
「そうですね。前はウエイトもそんなには行ってなかったですけど、ちゃんとメニューを決めてやるようにしているので、それがちょっとずつ自分が変わってきていることが実感できて楽しいです」
-となると趣味は?
「お菓子食べることかな(笑)。自分的には106期のみんなに会えることが楽しくて、競走に行くと会えるので、その時お菓子パーティを競輪学校の時みたいに夜とか出来るので、競走に行くのが楽しいです。レースも出来るし、皆にも会えるから、今はそれが楽しいですね」
-普段からお菓子を食べる?
「競走に行っている時はみんなで食べますけど、普段はそんなに食べないですね。練習をすると食事が食べられなくなって、痩せてしまうので。とにかく食事をきちんと摂ろうと思うとお菓子を食べないですね」
今は自分が強くなるのが楽しみ!周りを気にせずひたすら練習の日々。
-高木選手の目標は?
「この間の川崎みたいなスタイル(打鐘先行逃げ切り)でもっと優勝できるようになったら、きっと、大きいレースにも出れるようになると思うので目標はそこです。 それに、大きいレースに出ても先行で勝ちたいので、今のままでは勝てないのはわかっていますから、普段から奥井さんみたいに逃げて多く優勝できるようになりたいです。一つ一つ頑張っていきたいです」
-3年後にガールズグランプリで優勝ですか?
「はい、夢です!(笑)」
-同期では小林優香選手、石井貴子選手がいますが気になります?
「2人ともすごく強くて尊敬していますが、でも、今は私は先行でって決めているので、周りの人たちは気にならないです。焦らないで、自分は自分でって思っているので。競走で一緒の時は自分から仕掛けて。私はまだまだやらなきゃいけないことがあるので」
-最近、毎日が楽しいですか?
「はい! ハンドボールをやっていた時には味わったことのない感じです。自分から練習をやりたいと思ったことなかったので。監督に怒られたり、やらされる練習だったので、チームだったのもありますし。 いまは個人競技だからというのもありますけど、今は自分が強くなるために自分で考えて練習出来るのでいいですね」
-賞金の使い道は?
「ほとんど何も使っていません。お世話になった人とか友達とご飯行ったりくらいですね。 私、今までバイトとかもしたことがなかったので、初めてお金を稼いでいるので、実感がなくて、この価値がすごいことだけど全然わからないので、貯めています」
-ファンの方々にメッセージをお願いします。
「ファンの方にいつも応援してもらって、先行で負けた時でも『良い走りだった』って言ってくれるんですよ。だから、これからも、そういう走りをして頑張っていきたいと思いますので、応援よろしくお願いします!」
インタビューの終わりに聞いてみた。
-京王閣でグランプリをやる時は出たい?
「それは思います。でも、そう思って走ると、私は競走が小さくなってしまうから、そうは思わないで、勝っていった結果、出場出来たらと思いたいと思います」
-競輪選手になって良かった?
「めちゃめちゃ思います!」
-学校に入る時と今は思いが違う?
「うーん、あの時と同じですね」
-どうしてなりたいと思ったの?
「何か1番になりたいと思ったんですよ、ハンドボールじゃムリと思って、その時にガールズケイリンを見つけて、そういうのをしたかったからです」
-選手になってみて自転車は才能がないとキツいと感じないですか?
「それは思わないですけど、でも、自転車が好きだなって思えるから、頑張れると思います。優香(小林)とか見ているとすごいじゃないですか。でも、努力次第では上を目指せると思うので頑張りたいと思います」
とても、ふんわりとしている印象がある選手なのだが、もの凄くしっかりして目標をきちんと定めて練習に励んでいる。
その成果が如実に現れているのは間違いない。
その日行った練習をきちんと記録し、振り返り、練習を修正していくところはアスリートとしての資質が優れている証拠だ。
トップ選手がトップ選手である所以は、単にフィジカル的な才能だけではなく、自分自身で考えられる才能も必要なのだ。
高木選手の今後に是非注目していただきたい。