インタビュー

ガールズケイリンを代表する徹底先行選手・奥井迪。
そのパワー溢れる先行は、多くのファンを魅了して止まない。
だが、その奥井もデビュー当時は不安と緊張との戦いだったそうだ。それを払拭してくれたのが師匠の言葉だった。
その言葉を胸に、これからも目標に向かって徹底先行を貫く!
立川がきっかけで力まず走れるようになりました。
-デビューから12月までを振り返って、いかがでしたか?
「ここまで出来ると想像していなかったので、なんか出来過ぎです(笑)」
-競輪学校時から奥井選手は強いと思っていた人は多いのですが、本人は自信がなかった?
「はい、自分ではそこまであんまり自信がなかったですね。学校時代は、自信の持てる競走も出来てなかったので。先行しようという気持ちだけで、先行してもなかなか結果は出なかったり、逃げ切れることなんて数回だったから、これでは通用しないかなと思い、不安を持ちながら卒業しました」
-そうすると、デビュー戦の武雄は不安が大きかったのでしょうか?
「いえ、卒業後に師匠(富山健一)から練習を見てもらって、練習はすごくしていたし、それに『自信を持っていけ』と言われていたので、デビュー戦はけっこう強く持っていけたと思います。けれど、あんまりの緊張に結果は…(苦笑)」
-初日はやはり緊張していましたか。
「はい、緊張して、練習とは違う走りでしたね。力んじゃって、身体全てに力が入っていました(笑)」
-名古屋の初優勝を決められたのは大きかったと思いますが?
「予選が3着、4着でギリギリ決勝に上がれたので、決勝戦は気楽な気持ちで走ったら優勝出来ました」
-3日目でやっと力みが取れたと。
「そうですね。だから、最初の頃はどうやったら力まないで走れるのか、どうやったら本番で練習通り走れるのだろうかを考えながら、悩みながらレースをしていました」
-力みなく走れるようになったのはいつぐらい?
「6月の立川がきっかけでしたね。その前の函館は決勝に上がれたんですけど7着で、…ちょっと自信をなくして、先行じゃ通用しないのではないかと思っていました。でも、その時に師匠から『もうちょっと自分を信じなさい。信じて、思いっ切り行きなさい』って言われました。それで、自分を信じて、迷わないで行こう! と思って、それが立川で出来たんです。いつも練習しているバンクだったからというのもあって、力まず走れました。そこで結果も出せたので、そこがきっかけになり、力まず走れるようになりました」
失敗は今後に向けて、いい勉強になりました。
-奥井選手にとって先行とは?
「やはり先行で勝つ人が一番強いというイメージが学校の時からあるので、憧れというか先行への想いは強いですね。やはり誰かが先行しないと面白くないと思うし、その中で魅せるレースをしたいと思って、先行はこだわっていますね」
-今まで一番印象に残っているレースは?
「10月京王閣の決勝戦の加瀬(加奈子)さんとの1周半のもがき合いですね。あんなに気持ちも、体力も全て出し切ったレースはなかったです。優勝は出来なかったけど、そういう本当に自分の全てを出し切ったレースはなかなか出来ないと思うので、自分の中でもあれは印象に残っています」
-見ている方も力が入る名勝負でした。走っている時はどんなことを思っていましたか?
「もう加瀬さんの胸を借りるつもりで、真っ向勝負を挑もうと思ったので、途中で食い下がれないと思って、とにかく必死でしたね。気持ちだけで踏んでいた感じでした」
-今の課題は何ですか?
「ダッシュ力というかトップスピードが低いので、最初の踏み出しとトップスピードをあげるというのが今の課題です」
-11月佐世保の決勝戦のような包まれる展開になった時は?
「あの時は自分の中で油断というか、来ないだろうなっていうのがあったので、今はあの経験があるので、あのような展開にならないように意識しながら走っています」
-一つ経験値が増えたという事ですね。
「そうですね。すぐに引けば良かったことを突っ張っちゃったりしたので、そういう所がまだ経験が浅いというか。でも、この時期に経験したことは、逆に良かったと思います。1月からはガールズグランプリ2015に掛かってきますし、そこであまり失敗をしていられないので、この時期に失敗をしておいて良かったなと思います。いい勉強になりました!」
先行は強い気持ちで走っています。
-ガールズグランプリ出場への想いというのは強くなっていますか?
「そうですね、2015年に向けて、ガールズグランプリに向けて一戦一戦を戦いたいという気持ちはあります。ただ出場したいというのではなく、先行で戦って、先行で出場権を取りたいと思っているので、それだけの力をつけたいと思っています」
-グランプリへの想いが強くなったのはいつから?
「ガールズケイリンをやると目指したからには、トップを目指したいと思ってやっているので、やはり最高峰のレースを目指してはいました。でも、そこに行くにはもう少し時間が掛かると思っていたので、そこまで意識はしていなかったんですけど、今は気持ちの面でも上を目指したいと本気で思えてきているので、2015年は出たいですね!」
-そういう強い気持ちって絶対にレースに出てきますからね。
「特に先行するには強い気持ちがないと、迷いがあると出来ないので、やっぱり気持ちで負けないようにと思っています」
これからも自分らしいレースでお客さんに魅せていきたいです。
-ジンクスはありますか?
「それが一度崩れたら何か気になったりするから、そういうのは作らないようにはしています。調子も良いとか悪いとか思わないようにしています。常にいつも通りというか、決め事しないようにしています」
-普通は言い訳したいところを、あえて封じ込めているわけですから、そう言える人は強いですよ。
「いえいえ、自分は気持ちが弱いので(笑)、常にいつも通りと言い聞かせています」
-では、レース後の楽しみは?
「美味しいものを食べたりするのが楽しみですね」
-お酒の方は?
「お酒は全然飲まないんです」
-食べる時は人と一緒? 一人?
「開催が終わった後は何人かで食べに行ったりしますが、普段は1人ですね」
-10月小倉オールガールズが終わった後に東京勢一緒にご飯に行っていて仲良いなと思いました。
「そうですね。立川はいつも一緒に練習していて、仲良いし、同期でも仲良いんで、私は恵まれていますね」
-奥井選手がデビューしてから、東京勢が勢いがついていますよね。
「そんなことないです(笑)」
-奥井迪選手と一緒に練習することによって、モチベーションが上がるみたいです。
「逆に私にとっても、増茂るるこちゃんや小林莉子ちゃんらトップで戦っている人と練習出来るから、すごいいい環境です」
-また、106期の皆も強いし、確かにいい環境だったのですね。
「そうですね、同期は(小林)優香を筆頭に皆が強かったから、練習からもレベルが高かったというのは良かったと思います。そこでもまれて相乗効果でした。だから、環境的に本当に恵まれていたと思います」
-今の練習は?
「午前中は、莉子ちゃんやるるちゃんがいたら一緒に、男子選手と練習させてもらったりとか、午前中は自力の練習中心で、午後は師匠とバイクで練習しています」
-きちんと練習しているからこそ本番で力が出せるわけですね。
「そうですね、自分は素質がないと思っているので、練習量でカバーというか、練習はやっている方だと思います」
-他の人が聞いたら奥井選手は才能がないなんて怒りますよ(笑)。
「いやー、自分は時間が掛かるタイプなんで、だから、しっかり乗り込んで力をつけていかないと。そのためには練習しないといけないですね!」
-でも、それは裏を返せばまだまだ強くなるということですね。
「そうですね、自分は不器用なので、まだまだ伸びシロはあると思って練習しています」
-では、最後にファンにメッセージをどうぞ。
「これからも自分らしい、力強い先行で、魅せるレースをしていきたいと思うので、応援よろしくお願いします!」
 
強い走りと謙虚さのギャップが奥井選手の一つの魅力かも。
印象的だったのは、11月小倉のオールガールズの決勝戦後に奥井選手が「優香には1年後リベンジします! 年末で!!」と言っていたのだ。奥井選手の力強いガールズグランプリ2015への宣言も印象深かったが、その言葉を聞いて増茂るるこ選手や小林莉子選手が「私も負けない。私も京王閣のグランプリに出る」と2人とも言っていたことがさらに印象的だった。
奥井選手の存在が東京勢のガールズに大きく活力を与えている。
この同地区のガールズ選手相乗効果で強くなっていく奥井選手から、これからも目を離せない!