昨年の後半あたりからメキメキと点数をあげてきた飯塚朋子。近況はほとんど決勝進出を外さないなど好調が続いている。その強さの秘訣とは? また、それを支える練習についても語ってもらった。
-まずはファンの皆さんが気になっている、飯塚朋子選手の好調の秘訣を教えてください!
「たまたまです(笑)」
-たまたまで3連対率59.2%(10月5日現在)ですか?
「自力がなくて展開次第なので。最近は位置に恵まれていることが多くて、そのまま流れ込んでと思っていたんですけど」
-でも、その展開はきちんと自分で位置を狙っていっていますよね。レースの基本はまずはいい位置を取るという感じなのですか?
「そうですね。でも、皆がそこを狙っているので、初手から番手じゃなくても、最終ホームくらいでそこにはまれればいいかなと思っているので。最近は、本線の2、3番手が多くて、それが上手くはまれているかなと思います」
-レースを見ていると、勝負どころでは絶対に引かないし、女子の中には並走が苦手な人もいるけど、飯塚さんは平気そうですね。
「全然、大丈夫です(笑)。狭いところにも突っ込んでいくので、いつも危ないって言われてますけどね」
-飯塚選手の並走の仕方って、安定していて危い感じはあまりしないですけど。
「そうですね、両サイドの人たちが視界に入る位置だったら、全然突っ込みます。けど、自分の身体から後ろっていうか、自分の後輪から後ろは見えないので、その間に入っていくことはないです」
-落ち着いてレースが出来ているんですね。
「そうかもしれないですね。身体が平行して、ぶつかるのは大丈夫ですね」
-飯塚選手が、こういう風に変わったきっかけは何だったんですか?
「もともと弱くて、競輪学校の競走訓練の時とか千切れまくっていて、人ともがいた経験がなかったんですよ。デビュー当時も、もう千切れて画面から消えていっていたことが多かったと思うんですけど、練習方法とか乗り方とかを色々と考えてやっているうちに、人につけるようになった、千切れなくなったんですよ。で、そこから、やっとだったので同期よりやっていることは1、2年遅れていますね」
-遅咲きのイメージはあるけど、でも、そうやって自分でしっかり考えて、今に開花しているんですね。
「そうやって、人につけるようになったら、そのつける位置をどこにしようと考えるようになりましたね。いくらついていっても7番手では着はないけど、1番前を走っている人の番手につけば、2、3着、上手くいけば1着があるじゃないか、って単純に考えるようになって、つくことだけにしたら余裕が出てきました。一旦、前を叩きにいって位置を取ってからだったら、追走出来るのではということをやっていったら、段々と慣れていきました。失敗もあるけど、飛びつき失敗とか、そのまま駆けさせられて行かれたというレースもあるけど、その中でレースを覚えていって、今になってきたんですかね」
-最近は、位置を取るために、けっこう踏みっぱなしのレースも多いですよね。
「長い距離を同じペースで踏むのは苦しいかな。目標がいれば。(例えば)前が千切れて、車間が空いて、それを追いかけていくのはいけるんだけど。なんか、前に何もなかったら、我慢出来ないんですよね」
-人と走った方が強いというのは競輪選手ですよね。
「前に人がいてくれたら、力を出し切れますね。苦しくても我慢出来るんですよ。先行に向いてないですよね(笑)」
-でも、自分の長所をレースで活かせているからいいですね。
「そう。でも、今の走りしかないので、若くて強いのがいっぱい出てきているし…。私くらいの脚はゴロゴロいるというか、私の脚くらいだと下から数えた方が早いと思うんですよね。その中で、レースってなったら頭も色々といると思うので、そっちで勝負するしかないですね(笑)」
-落ち着いて走れるところ、強気なレースへの攻める姿勢は飯塚さんの武器じゃないですか。
「そうですね、落ち着いているのは大きいですね」
-今の課題は?
「ダッシュと差し脚ですかね。女子のスピードが上がってきているので、それにまだ対応し切れてなくて、ダッシュにちょっと千切れかけたりとか、ついていけるけどそこから1周になると自分も踏みっぱなしで最後4コーナーで脚が残ってなかったりとか、っていうのがあるので、だから自分のスピードのペースアップですね。そこを底上げすると余裕も出るので、レースも楽になると思っています」
-最近は、決勝をほとんど外していないですよね。
「そうですね、最近は乗れていますね」
-予選で落ち着けているのが大きい?
「気持ちですかね。ポイントが、400でも1ヶ所か2ヵ所しかないですよね、ここっていうところが。そこに集中していかないと、自力ではどうにもならないので、その、1レース、1レース集中して走れていると着に絡めるけど、ちょっと気を抜くとダメですよね。その上下がけっこうありますね(苦笑)、モチベーションっていうんですかね、緊張感というか気合というか、それを維持しないと、すぐに成績が下がります。
5月、6月に調子が悪いというより着が悪くて、1回気持ちが切れてしまって。そうなると点数もどんどん落ちていって、1回49点という点数を見ると『あ、まずい』と思って、そこで気合を入れ直すと、今度はちょっと気合が入り過ぎて52点までいったんですよ(笑)」
-印象に残っているレースはありますか?
「7月の小倉ミッドナイトですね。初日に並んで番手を取って、バックから荒牧(聖未)が後ろにいたので、先捲りで、結果3着だったんですけど、先捲りで自分行って、3着に残れたことと、その時の上がりタイムがよかったので、その前までがあまり調子よくなかったので、それで思い切って自力で行って、着残して、タイムもよかったというのは自信にはなりました」
-最近の癒しの時間は?
「私は基本、引きこもりなんですよ(笑)。午前中練習して、お昼過ぎに帰って、昼ご飯を食べたら、そこからずっと家にいます」
-意外ですね。飯塚選手はアクティブなイメージがありました。
「そうですか(笑)。なんか、歩くのが苦手で、服とか買いに行く買い物がしんどいんですよ」
-自転車にずっと乗っていると歩くのが苦手になるって言いますし、長年、自転車選手をやっているからですね。
「ですよね(笑)。そうなると行くところがなくて(笑)。今だけかなと思って、せっかくだから何かしたいとも思うけど、こんなに時間がいっぱいあるから、逆にいうと今しか引き込もれないじゃないかなっていうのもあって、引きこもっています(笑)」
-最近の練習方法は?
「街道で、和歌山の西岡(正一)さんと一緒に練習して、もがかせてもらっています」
-S級の選手と一緒に走るのは大きいですね。
「そうですね、そこで、一緒にもがきに連れて行ってもらえるようになってから追走も出来るようになりました。もう43点の時代から面倒を見てもらっています(笑)。何と言うか、調整がしやすいですよね。男子なので、調子のいい悪いがあっても、自分よりスピードがあるじゃないですか、そこにつけたり、つけなかったり、ゆるく感じたりとか、自分の調子だったり、乗り方が悪いから千切れたりというのがわかってくるので、調整しやすい、自分で気づきやすい環境かなと思います。
あとはバンクでやっています。バンク練習は大阪の人と一緒にやっていて、バイク誘導の時があり、アップで並走周回をして、そのバイクの並走周回で練習していることが、並走が怖くなくなったきっかけですね」
-なるほど、日々の練習も成果が出ているんですね。
「そうですね。もともと、バランスは悪い方じゃないので。あとはバンクとピストに慣れるだけだと思うので、だいぶ慣れてきたかなと思います」
-やはり、ずっと自転車をやってきて、それが今になって活きているんですかね。
「そうですかね…、全く違う乗り物なので、その時のプライドだったり、乗り方だったりを捨てないとどうにもならなかったです」
-最後にファンにメッセージをどうぞ。
「弱い時代から暖かく見守って、応援してくださるファンの方、本当に感謝しています。これから、どんどん強い人が出てくるけど、それにしっかり対応して、自分らしい走りが出来るように頑張ります!」
元MTBダウンヒルの日本トップクラスの選手だった飯塚、その彼女の「その時のプライドだったり、乗り方だったりを捨てないとどうにもならなかった」という言葉が非常に印象的というか衝撃的だった。その壁を乗り越えた飯塚の今の安定感ある走りはファンにはとても魅力的だ。飯塚の目指す自分らしい走り、それをさらに極めていくところを期待していきたい。