インタビュー



競輪学校在学時、ロンドンオリンピックを観ながら漠然とオリンピック出場を想っていた石井貴子。現在はガールズケイリン選手として、自転車競技選手としても頑張っている。2016年は、ガールズグランプリの出場権は獲得できず、寂しい年末となったが、東京オリンピック出場へ向けさらにパワーアップを図っている。その石井に2016年を振り返り、新たな目標に向けて決意をインタビューした。
今年の4月、5月から大きく流れが変わりました。
─まずは2016年を振り返って見ていかがでした?

アップ中の石井
「今年はデビューして3年目になるんですけど、過去2年間もそうだったんですけど、やはり1年を通してトラック(競技)のほうのレースや遠征、また(ガールズケイリンの)競走だったりっていうのをやっていると、なかなかいつもいい調子でいるというのはすごく難しいことですし、そこに持ってきて、さらに力をつけていかなくてはならないというところに挑戦していかなければいけないっというのは、やっぱり大変だなっていうのは毎年ながら感じてはいました」
─特に今年はオリンピックイヤーでリオオリンピックの出場を目指していたと思いますが。
「ロンドンの時はまだ競輪学校の受験生で、オリンピックにいつか出たいって言いながら観てはいたんですけど、実際に走ったこともなかったし、ワールドカップ以上の大会がどんなものなのかも全く想像しないまま、漠然と(渡邉)一成さんのレースとか観ていたんですけど。ただ、それが本当に現実として自分がそこに出るためにはどうしたらいいのかっていうのをわかるようになってから観たリオっていうのは、本当に全然違うものでしたし。2年では厳しくても、これからの4年を足した6年でなんとかそこに行けるようにするためにはどうしたらいいのかっていうのを考えながらレースを観ていました。実際に自分が選ばれて、その場に立ったらどんな気持ちでレースをしようとか、あとはリオに出た選手と2年間、レースとかを共にしてきて、その人たちの性格だったり練習だったりを見た上で本番を観るっていうのは、すごく勉強になったかなという部分もありました」
─今季から初めてワールドカップでケイリンを走りましたが。
「自分にとって4月、5月からっていうのはすごく大きく流れが変わったような感じがしているところがあって、特にケイリンに力を入れ始めて、実際、東京五輪で何に出たいかって言われた時に、ケイリンに出たいんですっというのを前面に押してやるようになったっていうのは、すごく変化でした。過去2年間、スプリントの起用が多かったんですけど、現実問題スプリントでメダルを獲ろうと思ったら、確実に10秒8くらいでハロンが走れて、尚且つトップレベルの対戦技術を持っていないとどうしようもないと思うんですけど、正直自分が東京でそれで戦うっていうのが全然ピンとこなくて。単走で自分がしっかりペースを作って踏んだりとかっていうのは多分あまり得意ではないので、だったらケイリンのほうがなんとか活かせる部分が大きいんじゃないかなっていう気はしています」
─今季のワールドカップ第2戦アペルドールンでのケイリンはとてもいい走りでしたが今レースを振り返ってみるといかがですか?

2016UCIトラックサイクリング ワールドカップ
第2戦 アペルドールン大会 女子ケイリン
7-12位戦 ゴール 8位の石井貴子
「スプリントだとやっぱり1対1でとにかくエンジンを競う、尚且つ相手の裏をかくみたいな能力が求められるんですけど、ケイリンは、変な言い方ですけど群れで走る部分が、自分の能力が劣る部分を少しカバーしてくれるじゃないですけど、チャンスを作る隙っていうのがあるような感じがしました」
─自分の能力を生かせるのがケイリンだと?
「そうですね、そんな感じがします。私はどちらかというと、日本の競輪選手的にいうと、多分自力選手というよりはマーク選手だったり、追い込み選手っぽい性格だと思うんですよ」
─世界のタイプで言えばアワン・アジズルハスニ(マレーシア リオオリンピックケイリン3位)に近い感じでしょうか?
「そこを目指したいんですよ。アワンのような選手になりたいんです。小柄でハロンとかは出ないけど、でもトリッキーで、コースを見つけて突っ込んだり、付いて行ったりっていうのがやっぱりできるようになりたいですね。何度もビデオを見ているんですけど、やっぱり最後(ワールドカップ第2戦アペルドールン)の7-12位決定戦でもきっちり差し切ろうと思ったらもうちょっと脚がないといけないし、追走も内に差したり外に差したりってする瞬間が結構あって、脚をうまく溜めれていない。隣にいるオーストラリアの選手と絡まったのが10分前(ケイリン2回戦)だったので、ちょっと意識しちゃって、無駄な動きも多いなと思ったので、やっぱりそういうのが経験と、あとはああいうレースを重ねていると何回かに一回くらいはきっとアクシデントにも遭遇したりするとは思うんですけど、そういうのも経験として乗り越えながら、これ以上はまずいとか、ここまではできるとか、そういうラインを見つけていく必要があるなと思いました」
─そこから東京オリンピックを目指すわけですが。
「東京オリンピックはやっぱりケイリンで勝負したいっていうのが、私の一番強い今の気持ちです。それが一番いいというか、自分の形にしたいものでもあるし、競輪選手でケイリンにっていうのは理想だと思うので」
─本業のガールズケイリンですが、石井選手のレースを見ていると色々試しているように感じますが
「そうですか?(笑)。本人的にはガールズケイリンを走る時は、ちゃんと自分が3000人の中の一人の競輪選手なんだっていうのを意識して、競技ではない、賭け事の対象の競輪選手なんだっていうのは意識するようにしているんですけど。競技のほうはこのあいだのアペルドールンのようにとにかく2着までに入るとか、とにかく1着をとるとか、走り方とかはもうとにかく食らいつくっていうそれだけを考えているんですけど、でも競輪って、日本で生まれて長い歴史があって、文化もあって、それで今、自分がその内の一人として走っているから、自分も一生懸命走った結果というのを見てもらいたいし、お客さんにもできたら納得してもらえるような走りをしたいなと願っています」
─それはやはり1着をとる競走ですか?
「うーん、だけでもないなっていう。つまらないレースをしてちょっと差して1着でいいかって言われたら、そうではないのが競技との違いなのかなって思うところもあります。基本やっぱり力をちゃんと出して、その時の自分相応の着をちゃんと受け止めるようにしています」
─今年はガールズグランプリ出場を逃しましたがどのように受け止めています?
「私のこの出走本数でガールズグランプリの出場権を得るには、ガールズケイリンコレクションを1本取らないと不可能だということがよくわかりましたので(笑)、今年はガールズケイリンコレクションにちょっと泣かされまして。落、失、7と散々でしたので。来年は早めに1本取れるように、今、選考期間なので頑張っているところです。でも実際問題を考えたら、もちろんガールズグランプリに乗れれば、それに越したことはないんですけど、今年は結構競技のほうでいい思いをさせてもらっている部分もあるので、自分にしかできないことをやらせてもらっているんだと思って、それはそれで頑張りたいと思います」
─さて現在の練習はどのようにされていますか。
「基本的に千葉にいるときは、最近長くても1週間いられていないんですけど、8月以降は丸々1週間いられていないんですけど、でも地元にいるときは立地には結構恵まれていて千葉競輪場にも松戸競輪場にも入れるので、空いているバンクで練習しますし、次の競走が33バンクなのか競技なのかとかによっても使い分けます。あとは街道に行ったり、師匠にバイクを引いてもらったりですね。街道に行く時は師匠とマンツーマンですし、利根川さん(元選手)のところに練習に来ている男子選手とやったりもしますけど、あとはバンクに行った時に来ている選手と一緒にもがかせてもらったりです」
─今の課題は?
「もうずっと課題なんですけど、トップスピードの高さをずっと追求していかなくちゃいけない種目だと思うので、ただこのスケジュールだったり、今の競輪選手と競技との平行運用で、なかなか理想的なトレーニングをするわけにいかないことも多々ある中で、目的を遂行していくためにっていう工夫をずっとしています」
─ファンの方にメッセージをお願いします。
「本当に競技とガールズケイリンの両立で、なかなか皆さんの期待通りに走れていない時もあるんですけど、東京五輪に向けて頑張っていきたいと思っていますので、長い目で見ていただけると幸いです」
─ガールズケイリン、自転車競技とハードな日々を過ごしている石井選手に最近の気分転換方法を聞いてみました。
「体重を増やす方向に気にしているというのもあって、時間がある時とかオフの日とかに、しっかり料理するようになりました。作り置きをしっかりして、3、4日練習の日も1品2品作れば他にもおかずがある状況にしておけるようにオフの日は結構料理していますね。料理を作っていると気がまぎれるし、いろいろ考えちゃうと辛いので」