インタビュー

昨年7月に福井競輪場でデビューした野原雅也。高校時代から自転車競技で輝かしい実績を残し、競輪学校在校時から将来を嘱望されていた存在だったが、その期待にしっかりと応えた活躍を見せている。近畿から、また新たなスター候補生の誕生だ。
 まさに快進撃と言っていいだろう。野原雅也は昨年7月にデビューすると、同9月には9連勝で早々にチャレンジレースを卒業。そして、A級1・2班戦でも先行力を武器にして勝ち星を積み重ね、2月の名古屋FII、3月の福井FI、そして豊橋FIIで完全優勝を果たし見事にS級特別昇級を決めた。
「割と順調にここまで来たかなと思います。デビュー戦を走ったときは、全然体が動かなかったので、特昇なんて言っている場合ではないなと思っていましたから。(A級1・2班戦では)前も6連勝までいって、特昇できればいいなくらいの感じで、とくに意識せずに走っていましたが、2回目はけっこう意識して走っていましたね。チャレンジの9連勝目はすごく緊張したんですけど、A級ではそこまで緊張もしませんでした。(豊橋の決勝は)もっとバーンといかれると思っていたので、予想外の展開になって『あ、やってしまった』と思ったんですけどね。A級(1・2班戦)で特昇できると思っていなかったので、9連勝はたまたまかなと思っています。でも、早くS級にいきたいなという気持ちはずっとあったので良かったです」

3月松山で行われたルーキーチャンピオンレース決勝。
(5)野原が後続を引き離して103期の頂点に立つ。
 名古屋のあとには、松山競輪場で103期のルーキーチャンピオンレースが行われた。全選手が自力を持ち合わせる難解なレースだったが、野原は巧みな動きで先手の3番手を奪取すると、そこから豪快な捲りでぶっちぎりの優勝を遂げた。
「けっこう予想通りでした。まず前受けは誰も行かなかったらいこうかなと思っていて、後ろになったら先行してと思っていましたが、前受けして内が開いたら、そこにいく作戦でした。前が開く気がしていたら、本当に開いたなという感じ。開かなかったらちょっと危ないレースになっていたけど、下げても間に合わないと思っていたので」
 見事にルーキーチャンピオンを制したが、レース内容には厳しく己を律する。
「レース内容が良いものではなかったので、喜べるものではなかったです。上の人、たとえば脇本(雄太)さんの練習を見ていても、すごくて絶望してしまうくらい。そういうところで自分を下に見ている感じですね。目指すところがもっと上というか、自分の上には、まだまだいるという実感があるので」
 特別昇級を決めて、S級デビューとなったのが4月の福井FIだった。地元戦だったが、初日予選は主導権を握るも8着。敗者戦でも先行勝負を挑むが、2日目・3日目ともにゴール前で強襲され3着に終わり、ほろ苦い初戦となった。
「まだ通用しないと思っていたので予想通りだったかなと思っていますが……落ち着いてレースができていなかったです。道中は踏みすぎていて、駆ける前から脚がけっこう一杯だったりして。でもS級では打鐘前で緩めていたら、行かれてしまう。だから、そこが下手なんだろうなと思いました。それに脚自体もまだまだだというのがありました」
 初めてのS級戦を経験して、冷静に自己分析をする。「また一から」の心構えで、レベルアップを誓う。
「先行して最終バックをペースで走っていたら、みんな仕掛けてくるんだなと。A級なら逃げ切れていたような、最後の直線も残るような感じの走り方をしても、いかれてしまう。自分に脚力がないというのもあると思いますけど、『あれ、おかしいな?』とは思いましたね。まずはS級のレースに慣れること、あとは脚力……もう全部です。ギヤについても、全然4回転を踏みきれていませんでした。今まではルーキーチャンピオンと特昇場所の決勝だけで、練習ではちょくちょく使っているんですけど無理でしたね。ギヤにも慣れていかないと。そのためにも、もっとしっかりと練習しないといけないというのはありますね」
 現時点の課題は山積だが、先行意欲に関しては「今までよりも強く思うようになったと思います」と言う。20歳の新鋭が、近畿を代表する機動型へ。その成長を今後も楽しみにしたい。
「まずは先行で予選を勝ち上がれるようになって、それから徐々に上げていきたいかなと。大きい目標なんて全然見えていないです。大きい目標を立てられるほど、今はまだ周りが見えていないし、上も見えていないので。目の前の目標を一個ずつクリアしていきたいなと思います。地道に一歩ずつですね。先行で、これからも一生懸命頑張るので応援よろしくお願いします」
野原雅也 (のはら・まさや)
 1994年1月23日生まれ、20歳。身長166㎝、体重66kg。師匠は野原哲也(引退)。在校成績は21勝で9位。練習は「鷲田幸司さんに練習メニューを考えてもらって練習している感じですね。世界選手権などで大変そうですが、脇本(雄太)さんにも合宿に2回ほど誘っていただきました」