インタビュー

リオパラリンピックの自転車女子B(視覚障害クラス)ロードタイムトライアルで銀メダルを獲得した鹿沼由理恵選手と、パイロットを務めた田中まい選手が9月22日に帰国しました。
パラリンピックの自転車競技には、これまで日本の女子選手の参加はなく、鹿沼選手と田中選手が初めての出場でしたが、初参加で見事メダルを獲得。快挙を果たした両選手にお話を伺いました。
パラリンピック自転車競技で日本女子初の銀メダルに輝く!
鹿沼由理恵「本当に奇跡だと思った」
田中まい「鹿沼さんの夢を叶えられてよかった」


─まずは銀メダル獲得、おめでとうございます!
鹿沼・田中「ありがとうございます」

─今回のリオパラリンピックでは、トラック競技は1kmタイムトライアルと3km個人追抜き、ロード競技はタイムトライアルとロードレースに出場されましたが、まずは最初に行われたトラック競技について。バンクを走った感触やリオに入ってからのコンディションなどはいかがでしたか?
鹿沼「バンクは伊豆ベロドロームと似た作りで、伊豆よりも走りやすいかなと。最初の練習し始めは移動の疲れとかもあったんですけど、徐々に疲れも抜けてきてバンクにも慣れて、試合前は調子を上げられたと思います」
田中「私もバンクは伊豆以上に走りやすくて、感触はよかったんですけど、今振り返ってみると思うように疲れが抜けていなかったかなという反省点もあります」

─トラック最初の種目、1kmタイムトライアルでは5位(1分11秒075)という結果でした。
田中「最初の緊張感とか、大会の雰囲気とかを感じながらの走りだったんですけど、(照準を合わせている)次の個人追抜きにしっかり繋げていこうという気持ちで走ったので、順位は5位でも、全力を出せたのでそれはよかったなと」
鹿沼「2日後の個人追抜きに向けて、まずは1kmタイムトライアルで(弾みをつけて)というような気持ちで本番を迎えました。タイムとしては自己ベストには至らなかったんですけど、自分は1kmで出し切ることが苦手な中、今回は最初から突っ込めましたし、出し切れたのでよかったと思います」

─一番の得意種目であり、今回最もメダルを狙っていた3km個人追抜きはベストタイムを出しながらも6位(3分34秒892)という、まさかの結果に。上位勢は3分30秒を切る驚異的なタイムをマークし、想像以上のハイレベルな戦いになりました。
田中「自分たちが発走する前から、いいタイムのチームが続いていたので、驚きました…。自分たちのベストは出せましたけど、やっぱり悔しいです」
鹿沼「最初の6周くらいまではいつも以上に突っ込めたんですけど、それ以上に後半の粘りが出せなかったことが順位以上に悔しい結果だったと思います」

─思うような成績に結びつかなかったトラック競技が終わり、次はロード競技へ。気持ちの切り替えはどんなふうに?
鹿沼「次のロードタイムトライアルでメダルを獲らなければ、正直あとがないと思って、トラックが終わってから2日間あったんですけど、タイムトライアルのイメージをしつつ、トラックの疲れを抜いて、当日を迎えました」
田中「正直、どう気持ちを切り替えていいのか迷いながらも、自分はここに何をしにきたのか、しっかり自分の目的を振り返ろうと。鹿沼さんのメダルを獲りたいという気持ちは痛いほどわかっていたので、もう死ぬ気で苦しんで全力を出していこうと、それだけを考えてロードタイムトライアルには臨みました」

─ロード競技最初の種目はタイムトライアル(30km)。2014年の世界選手権で優勝したこともある種目ですが、今回スタート直前に変速機のトラブルが起き、トップに入ったままギアの変速ができないアクシデントに見舞われたそうですね。
田中「気づいた瞬間は少し焦りましたけど、もうスタートのカウントダウンも始まっていたので、とにかくスタートしてから考えるしかないと、すぐに気持ちを切り替えました」
鹿沼「スタート直前で(ギアのトラブルが)わかったので、もうどうしようもないですし、踏んでいくしかないと思いました。自分は最初はトップに入っていることに気づかなかったんですけど、今考えると軽いギアに入っているよりは重いギアに入っていてよかったと思います」

─結局、トップギアのまま30kmを走り続けることになりました。
田中「自分はもう、これはコーチやスタッフさんたちの『君たちはこのギアでいけば絶対勝てる!』っていう作戦なんだと思って(笑)、ひたすら踏むことだけを考えて走りました」

─そして、見事このロードタイムトライアルで銀メダルを手にしたわけですが、銀メダルが決まったときはどんな気持ちでしたか?
鹿沼「重いギアで踏んでいたし、予想以上にタイムは出ていないんじゃないかと思っていたので、そのときは本当に奇跡だと思いました」
田中「金メダルではなかったんですけど、鹿沼さんの表彰台に乗りたいという夢をしっかり叶えられてよかったなと思いました。ホッとしました」

─アクシデントを乗り越えてのメダルは喜びもひとしおだったのでは?
鹿沼「はい、本当にそうですね」

─最後のロードレース(69km)は13位で締めくくり、リオパラリンピック全種目を終えました。応援してくださったファンの皆さんに、一言を。
鹿沼「皆さんの応援が後押しになって銀メダルを獲得できました。本当に皆さんのおかげです。ありがとうございました」
田中「たくさんの応援があって、それに支えられてここまで来られました。本当にありがとうございました」

─最後に4年後の東京パラリンピックへの思いも聞かせてください。
鹿沼「まだ実際どうするかは考えていないんですけど。ただ、今回銀メダルを獲れたときはすごく嬉しかったんですけど、時間が経つにつれて、やっぱり金メダルも欲しいかなという気持ちは生まれてきているので、これからどうしようか考えていきたいと思っています」
田中「自分もどういう形になるかはわからないんですけど、自転車競技をたくさんの人に見ていただけるように、いい形で関わっていたいなと思っています」