インタビュー

 月刊競輪のWEB化に伴い、新企画がスタート! その名も「師匠の目」。競輪界に於いて師弟関係は切っても切れない堅い絆。「師匠の目」はそこにスポットライトを当て、師匠が弟子のことをどの様に見ているのか、そして、弟子はそれに対してどう思っているのか、それぞれにインタビューしていきます。記念すべき第1回は神奈川の遠澤健二選手と中山麗敏選手。最高の師弟関係であることが垣間見えるインタビューになっていますので、必読ですよ。
平塚でのデビュー戦は感動したし、初優勝は本当に嬉しかった
─まず、中山麗敏選手が弟子入りしてきたのはいつだったんですか?
「1番最初に紹介されたのは競輪学校に入る直前ですね。その時は弟子入りっていう感じではなかったんだけど、面倒をみてもらえないかということでね。最初にその話を聞いたときはちょっと戸惑いましたよ(苦笑)。女子に教えたことも当然なかった訳だし、男子と女子では勝手が違うのかなとか思ったりもしたしね。男子だったら、鉄拳制裁じゃないけど、多少手をあげてもいい様なところはあるけど、女子だとそうもいかないでしょ。どうしたもんかな…って感じでしたね。それで、結局、1週間くらい一緒に周回練習だけして学校に入学していったんですよね」
─その1週間の周回練習で中山選手がモノになりそうな予感はあったんですか?
「体格的に強くなるものは持ってましたからね。その時点で才能的な部分はよく分からなかったんだけど、『力』は練習さえきっちりやれば付くだろうなっていう感じは確かにありましたね。いいふくらはぎしてましたし(笑)、練習さえやれば強くなるだろうなと」
─その後、中山選手が学校を卒業してからは一緒に練習しているんですよね?
「そうですね。一緒に練習をやり始めてから、すぐに強くなっていったんで、『強くなったんだな』という風には思ったんですけどね」
─当然、男子と女子では指導方法も変わってくると思いますが、中山選手に教えるにあたって、気をつけている部分などはありますか?
「いや、俺の場合はそんなに変わらないですよ。やる気のない選手にはやらせないですから。本人にやる気がなければ、意味がないから、指示を出したりとかそういうこともしないですからね。だけど、麗敏は自分から進んでやってたんで、練習はまじめだなと。だから、俺もアドバイスはするし、これからもっと強くなっていってくれるんじゃないですか」
─遠澤選手はかなりのスパルタなんですね(笑)。
「スパルタっていうか、練習をやらないで、その選手が勝手に弱くなっていくのは俺には関係ないから。だけど、ついてくる選手に関しては一生懸命面倒を見てあげるっていう感じですかね」
─そんな遠澤選手からみて、中山選手の長所と短所とは?
「長所はやっぱり負けず嫌いなところじゃないかな。いいハングリー精神を持ってるなと思うんでね。短所は調子に乗りすぎちゃうところかな。勝った時の喜び方も激しいんだけど、負けた時の落ち込み方も激しいっていうね。その辺がレースに悪い影響を与えてしまうこともあるかもしれないから、そういう気持ちの部分での切り替えがもっと上手に出来る様になると、もっといい選手になってくれるんじゃないかなとは思っているんですけど」
─中山選手の成績についてですが、平塚でのデビュー戦では1着1着2着と幸先のいいスタートを切りましたよね。
「デビュー戦はいい競走をしていたと思いますし、僕も感動する様なレースだったんで、それは師匠として嬉しかったですね。その後の8月の平塚では初優勝も決めてくれたし、面倒みてきた甲斐があったかなと。ただ、アイツもデビューしてから3ヶ月くらいしか経ってないのに波乱万丈すぎるからね(苦笑)。だって、デビュー戦であれだけいいレースしたと思ったら、練習で鎖骨を折っちゃうし、その後に復帰して初優勝したと思ったら、その後の松戸で失格して(苦笑)。さらに、その後、タクシーに乗ってたら追突されてムチウチになって欠場ですからね。ツイてない部分がありすぎるので、もうちょっとリズムよくいい成績を残せる様になって欲しいっていうのが、師匠からのお願いですかね。せっかく一生懸命練習やってるのに、それが発揮できないんじゃ意味がないですからね」
─ガールズケイリンのトップ選手の1人である中山選手の師匠ということで、遠澤選手自身の注目度も上がってきていますよね。
「まあ、麗敏があれだけ頑張っていると、男子と女子でレース形態が違うとはいえ、俺も負けたくないっていう気持ちも出てきますよね。これからも、師匠と弟子でお互いに強くなっていきたいと思うし、これからも注目してもらえる様に頑張っていきますので、応援よろしくお願いします」
師匠が「いい弟子を持ちましたね」と言われる様に頑張りたい
─遠澤選手は師匠としてどんな方なんですか?
「本格的に一緒に練習させてもらう様になったのは、競輪学校を卒業してからなんですけど、そこからデビューまでの3ヶ月で本当に色々なことを教えてもらったんですけど、怖い方ですよ。褒められたこともないですしね(笑)。いつも、『練習が足りない』とかって言われてばっかりで、怖いイメージしかないですね(苦笑)。まあ、師匠は自分自身に厳しい方なので、弟子に対しても厳しくなるんだとは思いますけど、もうちょっと優しくしてくれてもいいかなって(笑)。怒られすぎてヘコんだこともありますし…」
─どんなことで怒られたりしたんですか?
「生活態度のことですかね(苦笑)。練習に関しては任されているというか、師匠から『こういう感じの練習メニューを組んでやってみたらどうだ』って言われて、それをやるっていう様な感じですからね」
─遠澤選手は中山選手は言ったことはちゃんとやるって言ってましたが、やはり、それは強くなりたい一心で?
「口先だけの選手にはなりたくないんですよね。口では大きいことを言っても、やることをやってない選手も中にはいると思うんですけど、そういう選手だけにはなりたくないというか。それに、自分は学校を卒業してからの3ヶ月で本当に強くなれたと思っているので、これからも師匠を信頼して付いていけば間違いはないかなっていうのがありますからね」
─そういう気持ちの強さが中山選手の長所だと遠澤選手も言っていましたよ。
「本当ですか!? 『お前は気持ちが弱い』っていつも言われているんですけどね(笑)。とにかく褒められたことがないので。私は褒められて伸びるタイプなんで、もうちょっと褒めて下さいっていつも言ってるんですけど、『お前は褒めると調子に乗るからダメ』だって」
─その「すぐ調子に乗る」ところは中山選手の短所だとも遠澤選手は言ってました(笑)。
「まあ、褒められないからこそ、いつか褒めて貰える様に頑張っているという部分もあったりするので、師匠は私のことをよく分かってくれているということなのかもしれませんね」
─お互いがお互いを分かっているというのは最高の師弟関係ですね。
「最高の師匠だと思います。この出会いには本当に感謝してます。師匠は練習を絶対に休まないので、そんな中で弟子が練習休む訳にはいかないじゃないですか。そうやって態度で示してくれるのは本当にありがたいことですし、これからも見習っていかないといけないなとは思います」
─そんな中山選手が考える師匠への最大の恩返しとは?
「とにかく強くなって活躍していくことですね。今年は色々とアクシデントが重なってしまって、競走得点は高いのに、賞金ランクは下の方っていう訳が分からない状況になってしまったので、来年はケガとかを無くして、『賞金女王』になりたいですね。あとは、この先、師匠と同じ開催になることもあると思うんですけど、その時にアベック優勝することが恩返しになると思うのでその2つを目標に頑張っていきたいと思います。そして、いつか師匠が周りの方たちに『いい弟子を持ちましたね』って言われる様になりたいですね」
─最後に、今後の意気込みを含めてファンの方へのメッセージをどうぞ。
「魅力あるレースをしつつ、ファンの方の期待を裏切らない、人気にしっかりと応えられる選手になっていきたいと思いますので、車券は私から買って下さい(笑)」