インタビュー

 今回の師匠の目は千葉県から中村浩士グループ、通称「夢道場」のメンバーが登場です。今まで、千葉といえば利根川グループが有名でしたが、それに勝るとも劣らないほどの一大勢力に成長した夢道場。今回はその中心選手である3選手に直撃。グループ内の雰囲気やそれぞれが抱く夢について話を聞きました。
特別競輪決勝で師弟連係を実現させたい(中村)
─中村選手がリーダーの練習グループ・夢道場ですが、その中でも若手注目株といえば、根田空史選手と鈴木裕選手ですよね。お2人が弟子入りしてきたのはいつだったんですか?
「6年前くらい前ですね。根田はアマチュア歴があったので、彼が高校生の時に顧問の先生と鳥取の競技場で初めて会ったのが最初ですね。それで、縁があったのかそのまま弟子入りしてたっていう感じで。鈴木の場合は、彼の師匠の酢崎良雄さんからの紹介というか、千葉競輪場の開催があった時に僕が練習に行ったんです。その開催に鈴木がいて。その時、『何か変なフォームしてるな』って思ったんですよ(笑)。それで、そのあと千葉の打ち上げがあって、酢崎さんと話し合って、練習に来るかって聞いたら、鈴木も来たいと言ってくれて。『厳しいぞ』って彼に確認したら、『死ななければいいです』と(笑)。それから一緒にやる様になった感じですね」
─お2人ともモノになりそうな予感はあったんですか?
「根田の場合は絶対に強くなるなっていう確信があったんですけど、鈴木の方はフォームから何から全部教えていかなければならなかったんでね。でも、コツコツと積み重ねていける素質はあったんで、これだったら大丈夫だなって。僕が色々な経験をしてきた中で、その中のいいところを教えていくことが出来たし、鈴木もそれを信じてやってくれたからこそ早く成長できたのかなと」
─根田選手が強くなると思った確信があったのはなぜですか?
「乗車フォームと負けず嫌いなところですかね。最初からいいフォームで乗れていたので、フォームを教えるのにかける時間を別のトレーニングの時間に充てられたのが大きかったんですよね」
─両選手ともあっという間にS級のトップクラスまで駆け上がって、師匠としても鼻が高いですね。
「いや、まだですね。やっぱり、一緒に特別競輪の決勝で走りたいという思いがありますから。まだまだ頑張ってもらわないといけないかなと。1人1人とは連係したことはあるんですけど、3人一緒に走ったことがまだないので、いつかそれも実現させてみたいですよね」
─弟子の活躍というのは師匠にとっても刺激になりますか?
「そうですね。一緒に練習している仲間だから、彼らが活躍すると嬉しいですし、師匠として、弟子には負けたくないなっていう気持ちは出てきますよね」
─では、中村選手なりの指導方針などはあるんですか?
「競輪選手として認知度が上がったりすると思うんですけど、その結果、賞金も稼いで社会的にも成功してってなったときに、何が1番大切かっていうのをいつも話しているんですよね。人間的な部分を1番大事にしなさいと。(競輪選手として)強いから偉いっていうことではなくて、(社会的に)成功してるから偉いっていうことではなくて、人間的な優しさというか、人を思いやる気持ちだったりとかっていうのは大事なんじゃないかなと。強くなる分には、ある程度一生懸命練習すれば、皆強くなれるんですよ。だけど、強くて、情の深い選手になってもらいたいんですよね」
─そういう選手はファンからも愛されますからね。
「そうなんですよ。強くなれば強くなるほど、自分のことしか考えられなくなったりっていうことがあると思うんですけど、そうはなって欲しくないんですよね」
─なるほど。では、師匠からみた両選手の長所と短所を教えて下さい。まずは、根田選手から。
「長所はやっぱり、先行力ですよね。あと、負けず嫌いなところ。さらには自転車が大好きなところで、何か1つのことに没頭できるところは大きな魅力ですかね。自分の中で『これだ』と思ったところは突き詰めますから。ただ、逆にそれが短所になることもあるんですよね。『これだ』と思ったら、それしか見えなくなるというか、それだけに集中しすぎちゃうところがあるんですよね。他のことに目を向けるっていうのも大事だったりしますから、もうちょっと視野を広くもってもいいんじゃないかなとは思いますけどね」
─では、鈴木選手はどうですか?
「長所は言われたことを続けられるところですかね。短所は黙っていないといけない時に口数が多かったり(苦笑)。レース前とか、一流選手は黙々と準備したりしているんですけど、鈴木の場合はチャラチャラ喋ってたりするんでね、集中するべき時に集中した方がもっと強くなるんじゃないかなと思うことがありますね」
─根田選手も鈴木選手も明るいキャラクターなので、グループ内の雰囲気はいいのではないですか?
「2人もそうですし、高橋敦史さんという方がいるんですけど、その人がムードメーカー的な存在でグループを盛り上げてくれていますね。おかげで、いつもいい雰囲気の中で練習できていると思います。なので、僕も彼らと一緒になって頑張って。そうすれば、結果は自然と付いてきちゃいますからね。その中で、さっき言った、特別競輪決勝での師弟連係を実現させたいと思います」
─それでは、そんな夢の実現を期待しているファンの方へのメッセージをお願いします。
「一戦一戦、魂込めて走っていきますので、是非、本場まで足を運んでいただいて、応援してもらえると嬉しいですね。これからも、一生懸命頑張っていきますので、応援よろしくお願いします」
オンとオフがハッキリしてるグループです(根田)
─中村選手に弟子入りした理由を教えて下さい。
「師匠は高校の先輩なんですけど、自転車部顧問の先生の紹介で弟子入りさせてもらいました。それで、たまたまプロ・アマ混合の全日本選手権という大会があって、そこに師匠も来ていたので、その時に先生と一緒に直接お願いしたんですよね」
─初対面の時の印象は覚えていますか?
「さすがに緊張しましたね(笑)。でも、見た目どおりの優しい人でした。アドバイスもそんなに厳しい感じでは言わないですし、柔らかめなアドバイスが多いですね。スパルタではないかなと。もちろん、レースのことだったり、練習メニューに関してだったり、的確なアドバイスはくれるんですけど、それを伝えるのが上手いんだと思います。あんまり厳しく言われると、言った方にも言われた方にも変な空気が流れたりすると思うんですけど、師匠の場合はそれがなくて、すごく気持ちよく練習に取り組めるので、それはすごくありがたいですね。多分、相手を乗せるのが上手いんだと思います(笑)」
─では、あまり怒られたこともないんですか?
「怒られたことはないですね。僕だけじゃなくて、他の弟子たちに対しても怒っているのを見たことがないくらいで。そういう意味では珍しいタイプの師匠かもしれないですね」
─中村選手のグループは若手中心ですが、グループ内の雰囲気はどうですか?
「すごい明るいですよ。それに、オンとオフがハッキリしているので、すごく中身の濃い練習が出来ているかなと。なので、全くストレスなく練習出来ているので、環境としては本当に恵まれていると思います。グループも若手中心なので、僕らにとっては、同世代が多いから、負けたくないという気持ちも自然と沸いてくるので、それも大きなプラスになっているとは思いますけどね」
─現在は、利根川グループに匹敵する、千葉を代表する練習グループになっていますからね。
「そうですね。夢はグループ全員で特別競輪に参加することですね。それで、決勝で引っ張ってラインに貢献してみたいなと。それが個人的な1番の目標ということになりますね」
─中村選手とえいば、自宅に低酸素ルームを自費設置したことで有名ですよね。
「僕らも使わせてもらっているんですけど、あれ、かなりキツいですよ(笑)。少ない酸素で普通の酸素濃度と同じ練習をする訳ですから、気を失いかけるくらいで。ただ、その分、心肺機能がかなり上がりますね。それによって、先行していても楽ですし、長い距離をもがける様になるんですよ。それを使わせてもらえるというのは本当に大きいですよね。さすがに、自分で(低酸素ルームを)作ることには踏み切れないですからね。費用もかなりかかるみたいですし。何だかんだひっくるめて500万円近くかかってるみたいですから、僕にはなかなか手が出せないですから(笑)」
─では、2013年の個人的な目標を教えて下さい。
「とりあえず、記念を獲りたいですね。練習仲間の鈴木裕君は僕が先行して優勝しているんで、今度は逆のパターンでっていうのもアリかなとは思っているんですけど(笑)」
─ファンの方も2013年の中村グループの活躍には期待されていると思いますので、そんなファンの方へのメッセージをどうぞ!
「自分は先行が持ち味なので、レースを楽しんでもらいたいですね。そして、ファンの皆さんを感動させられる様に頑張っていきますので、応援よろしくお願いします」
中村道場で南関を盛り上げていきたい(鈴木)
─鈴木選手にとって、中村選手は直接の師匠ではないんですよね?
「そうですね。もともと、(前の)師匠である酢崎良雄さんが中村さんと仲が良くて、一緒にご飯を食べる機会があったんですよ。そこで、酢崎さんから練習は厳しいけど、行ってみたらどうだっていうことになって、中村さんのところにお世話になる様になりました。それが、デビューから半年過ぎた辺りでしたね」
─鈴木選手から見た中村選手の印象はどうですか?
「厳しいっていうことはないですね、皆さんが持ってる様な、温和なイメージそのままの人ですね」
─アドバイスはよくもらっているんですか?
「練習やレースに対する気持ちの部分でよくアドバイスをもらってます。自分の仕事をしっかりやれっていうことだったり、気持で負けたらダメだっていう様なことですかね。怒られたりっていうことはないですね。気持ちの弱いレースをした後でも、怒るといよりも激励みたいな感じで、『あそこはもうちょっと頑張った方がいいぞ』みたいな感じで声をかけてもらってますね。だから、むしろ怒られることよりも褒められることの方が多いかなと。僕は褒められて伸びるタイプなので、すごくいい師匠だと思います(笑)」
─練習グループの雰囲気はどうですか?
「今は皆が上を目指して頑張っているので、すごくいい雰囲気だと思いますよ。師匠の他は根田君とか田中晴基さんとか若手が多いので、盛り上がってますからね。このまま千葉を引っ張っていける様になっていきたいですよね」
─その若手の中でも、鈴木選手は記念優勝を達成していて、一歩リードしている感じですよね。
「いやぁ、あの時はマークされていなかったというのもあっただろうし、何より前で頑張ってくれた根田君のおかげというのも大きいですから。今度は自分の力でしっかり獲れる様に頑張っていきたいですね」
─中村グループの一員として、鈴木選手の目標を教えて下さい。
「やっぱり、グループでタイトルを回していける様にすることですかね。その1番手はやっぱり師匠に獲ってもらいたいという夢はありますね」
─グループが大挙決勝に乗ったとしたら、鈴木選手が1番前ですか?
「いや、そこはじゃんけんになるんじゃないですかね(笑)。その上で、浩士さんに1番いい位置を回ってもらうっていうことになると思います。他はじゃんけんで勝った順に位置を選んでいけるっていうことで」
─仮に、鈴木選手が1番最初にじゃんけんで勝ったらどの位置を選びますか?
「そうなったら浩士さんの後ろでおいしい思いをさせてもらいます。根田君か田中さんに前を回ってもらって、頑張ってもらうということで。根田がイン斬りして、田中さんが先行して…、夢が膨らみますね(笑)」
─では、2013年の目標を挙げるとすると、何になりますか?
「今年以上の成績を残すことですね。とりあえず、来年1年間はS級1班にいれると思うので、その分、勝負の年になるかなと。今年は安定した成績を残すことが出来たと思うんですけど、来年は安定はもちろんのこと、結果も残していかないといけないと思っているので」
─最後にファンの方へ、今後の意気込みを含めてメッセージをお願いします。
「中村道場でもう1度南関を盛り上げていける様に全力を尽くして頑張っていきたいと思いますので、これからも温かい応援をよろしくお願いします」