親子レーサー・坂本英一&将太郎選手が今月の師匠の目に登場します! 英一選手は45歳となった現在もS級戦線で活躍、直線でキラリと光る差し脚で多くのファンを魅了するいぶし銀レーサー。その息子である将太郎選手は昨年7月にデビューを飾った101期生。先日開催されたルーキーチャンピオンレース(若鷲賞)では父親譲りの差し脚で2着に突っ込むなど、将来が非常に楽しみな新鋭です。
息子の負けず嫌いなところは自分よりも強いですね。(英一)
坂本英一選手
─将太郎選手が「競輪選手になりたい」と言ってきたのはいつ頃ですか?
「中学2年生の時でしたね。僕としては、あんまり強要させたくなかったから、『競輪選手になれ』みたいな感じで強くは言ってなかったんですよ。ただ、やっぱり、自分と同じ道を歩んで欲しいっていう気持ちがあったから、僕が落車して帰っても家では明るく振る舞う様にしたり、小さい頃から自転車に魅力を感じてもらえる様にしていたので、息子が『競輪選手になりたい』って言ってくれた時は本当に嬉しかったですね。自分の背中を見てくれていたんだなって」
─では、その頃から師弟として指導されていたんですか?
「いや、中学校では陸上部に入らせていたんです。というのも、息子がもし、将来的に競輪選手になるって言った時の為に基礎体力とか色んな面で陸上部で体を作っておいた方がいいですからね。なので、中学3年の夏前に引退するまでは陸上部を続けさせて、引退してからピストを組んだりしてあげましたね。それで、高校は作新学院に進んだんですけど、そこの自転車部の顧問が僕の先輩だったので、自転車部の練習に関してはその先輩にお任せしてました。もちろん、部活が終わった後の練習は見てあげてましたけど」
─まさに英才教育ですね。ただ、親子であり師弟でもあるというのは、やりにくさもあったのでは?
「それはありましたね。師弟である以前に親子ですからね。息子が自転車に乗るまでは普通に家族として接してきた訳で、そこにどうしてもお互いに甘さが出てしまうというか。もちろん、それじゃいけないので、最初はだいぶ苦労しましたけど、自転車に乗った時にはお互いに割り切って、練習する様にしましたね。言葉使いとかも競輪場では師弟なんで、敬語を使わせたりしましたし、僕も師匠として厳しいことも言ったりしましたよ」
─でも、家に帰れば普通の親子に戻るんですよね。
「もちろん。ただ、家にいても自然と競輪の話になる時があるんですよ。そういう時はなるべく、師匠と弟子としての空気を作ってから話す様にはしてますね。まあ、息子も女房や妹がいる時はさすがに競輪の話はしたがらないですけど(笑)。なので、家で競輪の話をする時は2人でいる時のみで、そういう師弟としての空間は作りやすいですけどね」
─そんな将太郎選手ですが、昨年7月にデビューして、11月にはA級2班への特班を決められました。
「あの時は嬉しかったですね。師匠としても父親としても。ただ、とくに今年に入ってからは数字(成績)が良くないですよね(苦笑)。見ていると、今はタテ脚勝負よりも、ヨコの組み立てが多くなっているんですよ。小さい頃から僕のレースを見てきている訳で、『競輪といえば追い込み選手』という感じだと思うので、自然とそういう組み立てになってしまっていると思うんですけど、そこはデビューしてから1年も経っていない新人ですから、技術が伴っていないじゃないですか。そういう選手がヨコの組み立てをすれば、当然、成績は悪くなってしまいますよね。ただ、だからと言って、『タテ脚勝負に戻せ』とは言わないですよ。やっぱり、将来的にはヨコの動きも絶対に必要になってくるし、そういうのは実際のレースの中じゃないと、なかなか身に付かない部分ですからね。だから、あえて息子のやりたい様にやらせています。もちろん、プロである以上はそこに車券も絡んでくるし、成績を残さないと認めてもらえない世界なので、師匠として息子のレースを見て、なんで負けたのかを分析して、それをアドバイスする様にはしてますけどね。そのアドバイスが息子の成長に繋がってくれれば嬉しいですけね。」
─ところで、将太郎選手は先日のルーキーチャンピオンレース(若鷲賞)で2着と準優勝でしたね。
「僕もレースを見ていたんですけど、もうちょっとでしたね(笑)。ただ、ああいう一発勝負のレースで結果を残すのは、しっかりした練習をしていないと無理だと思うので、優勝は逃したかもしれないですけど、準優勝してくれたことに関しては師匠としても父親としても素直に嬉しいです。息子にとっても、ここ最近、なかなか結果を残せない中で、ああいう結果を残したことで今後の励みにもなると思いますし」
─そういった将太郎選手の活躍は英一選手自身にとってもいい刺激になっているのでは?
「そうですね。一緒に練習していても、だらけた姿を見せると、示しがつかないので、かなり集中してやっています。それは僕にとってすごくプラスになっていますし、師弟でもあり親子でもあるけど、切磋琢磨できているんじゃないかなと。まだまだ大きな背中を見せていきたいんでね(笑)」
─では、師匠から見た将太郎選手の長所を教えて下さい。
「負けず嫌いなところは自分よりも強いと思いますね。それは向上心に繋がるし、すごくいいことだと思うんです。ただ、その負けず嫌いなところが仇となってというか、とくにチャレンジ時代なんかは自分の失敗や負けを認めたがらないところがあったんですけど、2班に上がってからはそれが改善されてきているというか。さっき話した、レース後の僕のアドバイスも素直に聞く様になってきたので、将来が楽しみですね」
─将太郎選手にはどんな競輪選手になっていって欲しいですか?
「まずは、少しでも長く活躍して欲しいですよね。あとは…、まあ、今は息子自身も今後自分がどんな競輪選手になっていくのか、方向性みたいなものがハッキリ見えてはいないと思うんですけど、僕としては追い込み選手としてトップまで登り詰めていって欲しいなっていうのが正直なところかな。僕自身、23~24歳の時に追い込みに変わったので、もう20年以上追い込み選手としてやってきているので、その20年以上培ってきた経験とかを伝えていきたいなと思います」
─それでは、最後にファンの方へのメッセージをお願いします。
「今は、親子揃って期待に応えられないことが多いかもしれないですけど(苦笑)、将太郎はまだまだ下手なりにも、試行錯誤しながら自分の走りを見つけようとしていますし、僕自身も1レース1レースを大切に頑張っていますので、今後も温かい目で見守ってもらえると嬉しいです」
将来は父みたいな追い込み選手になりたい!(将太郎)
坂本将太郎選手
─親子であり、師弟であるっていうのは、やりにくいですか?
「最初はちょっと嫌だなって思ったりしたこともあったんですけど(苦笑)、今は父親が師匠で良かったなって思う様になりましたね。今も一緒に住んでいますし、ごく身近なところに色々と相談できる人がいるっていうことはすごく大きいですよね」
─最初の頃、どんなところが嫌だったんですか?
「今までずっと親子として普通に接してきたのに、急に師匠と弟子になることで、なんかぎこちなくなるっていうか、そういうのが最初の内はあまり慣れなかったですね」
─それこそ、他の方に師匠になってもらうという選択肢はなかったんですか?
「いや、それは全くなかったですね。小さい頃から父親のレースを見てきたし、競輪選手といえば『坂本英一』だったので、面倒を見てもらうなら父親に見てもらうっていうのは心に決めていたことなので」
─英一選手から色々とアドバイスはもらっているんですか?
「レースが終わって帰った時に反省会みたいな感じでアドバイスを貰うことはありますけど、レース前とかはとくに何も言われないですね。『頑張って来いよ』っていうくらいしか。その代わり、レース後は組み立てのことに関してとかすごく親身になってアドバイスをくれるので、それは本当にありがたいです」
─練習メニューなどに関してはどうですか?
「メニューは今はあんまり言われないかな。練習グループがけっこう大きいグループなんですけど、それの練習会が週に2~3回バンクであるので、その時にお互いに開催がなければ一緒に練習するので、そこで練習メニューを考えてもらったりはしますね。ただ、その練習会以外は一緒にやっていなくて、若手で集まって練習しているんですけど、そこに関しては特に何も言われないですよ」
─今年に入ってからはなかなか成績を残せない中で、反省会の時間もいつもより長くなってしまっていたのでは?
「いや、そんなことはないですよ(笑)。ただ、反省会があるっていうことは、それだけ自分にとって課題が沢山あるということでもあると思うので、これからはもっと早く反省会を終えられる様にというか、むしろ反省会をしなくて済む様な成績を残していきたいなとは思っているんですけどね」
─そういった意味では、先日のルーキーチャンピオンレース(若鷲賞)での準優勝は大きな弾みになりそうですね。
「やっぱり、優勝したかったですよね。直線で追い込んでいった時に『優勝出来るかな?』って一瞬夢を見ましたけどね(笑)。でも、結果的に全然届いていなかったので、まだまだ力不足だということなんだと思います。その辺りはこれからもっとしっかり練習して脚力をつけていきたいなと思います」
─あのレースは、三谷竜生選手の捲りを止めて、直線で追い込むという英一選手を見ているかの様でしたが、将来的にどんな選手になりたいっていうプランみたいなものはあるんですか?
「とりあえずは自在みたいな感じでやっていこうかなと思っているんですけど、将来的にどうなるかっていうのは、まだ分からないですね。でも、父親のレースは小さい頃から見てきて、それがカッコいいと思って憧れて競輪選手になったので、ゆくゆくは父みたいな追い込み選手になりたいというのはあります。その為にも自在でやりながらヨコの動きとか組み立てとかで、経験を積んでいければいいかなと」
─トップクラスの追い込み選手として活躍する姿を英一選手が現役の内に見せられれば最高ですよね。
「本当にそうですね。父ももう45歳ですし、1日も早くS級に上がって、安心させてあげたいですよね。出来れば、父がS級にいる間に僕もS級に上がって、同じ開催に参加するのが当面の目標ですね。もちろん、その先には親子連係というさらに大きな目標もあるので、今期S級の点数を取るのはちょっと厳しい感じなんですけど、来期こそS級の点数を取れる様に一生懸命頑張っていきたいと思います」
─坂本親子の活躍を期待しているファンの方は沢山いると思いますので、そういったファンの方へのメッセージをどうぞ!
「最近は車券の方でご迷惑を掛けてしまっているので(苦笑)、少しずつ経験を積んでいって、ファンの方の期待に応えられる選手になっていきたいと思いますので、これからも応援よろしくお願いします」