インタビュー

今月の師匠の目は男女師弟の山賀雅仁選手と篠崎新純選手です。今回の2人のインタビューでは、温厚そうな山賀選手のルックスからは想像もできない意外(!?)な師弟関係が…。それでも、そんな山賀選手を信頼し結果を出してきた篠崎選手。2度の優勝を飾るなど、今後のガールズケイリンを盛り上げていく彼女の活躍には要注目ですし、そんな彼女に負けじとここ最近は1着数も増えるなど好調気配を見せている山賀選手からも目が離せませんね。
彼女が初優勝した時はホッとしました。(山賀)
─篠崎選手が弟子入りしたいきさつから教えてください。
「彼女が競輪学校入学後の夏帰省の時だったと思うんですけど、僕がたまたま競輪場に行ったら、田中進さんから、『今、競輪学校に通っている篠崎っていう子がいるんだけど、師匠がいないからお前面倒みてやれないか』っていうことを言われて。僕の頭に弟子を取るということがなかったので、最初はどうしようか悩んだりもしましたけど、篠崎本人と彼女の父親と会って話をして、当時僕も成績的に低迷していた時期でもあったので、いい刺激にはなるかなと思って、(弟子を取ることを)決断したんですよね」
─山賀選手と篠崎選手では男女の違いがある分、戸惑いもあったのでは?
「それはありましたね。僕にとっては1番弟子ということになる訳だし、それが女子ということで、最初はどう扱っていいものかと思ったりもしたんですけど、最初に会った時に僕に弟子入りすることへの心構えを話していたので、そこまで気は使わなかったですね」
─女子だと使用する自転車も違ってくる中で、指導の難しさもあったかと思います。
「そうですね。しかも、彼女の方が身長もありますし(苦笑)、脚も長いからセッティングとかに関しても僕が乗ったところで、それが良いのか悪いのか、正直なところ分からない部分もあって。ただ彼女に対しては、悩んでいるんだったら試してみればいいじゃんっていうことを言っていて。あれこれ頭の中で考えていても仕方ないし、その考える時間がもったいないだけだから、とりあえず試してみろと。ダメだった時には元に戻せばいいだけですからね。自分がやりたいって思ったことは、やってみろっていうことは常に言ってきましたね」
─今も一緒に練習されているんですか?
「してますよ。だいたい午前中は一緒ですね。午後は僕がウェイトトレーニングしたり、彼女は彼女で自分の練習をしたりするので、別々っていうことになりますけど、午前中は一緒にやってます」
─一緒に練習してきた中で、篠崎選手もデビューから1年以上が経ちましたが、成長を感じるところはありますか?
「やっぱり、成績が良くなるにつれて実力も上がってきているのかなっていう感じはしますよ。実際、2回も優勝してますしね。まあ、僕と一緒の練習だけじゃなくて、宮倉(勇)さんのグループにもお世話になっているみたいで、そういう成果も出ているのかなと」
─レースに関しては師匠としてどんなアドバイスをしているんですか?
「ガールズケイリンにはラインがないから、とにかく勝ちにこだわって走れっていうことは言っていますね。やっぱり、勝たないと練習にもハリが出てこないし、次のレースでも気持ちが入りにくかったりしますからね。戦法どうこうよりも、まずは『勝て』っていうことだけは言っていますね」
─そういった部分では、篠崎選手が初優勝を飾った時は嬉しかったのでは?
「そうですね。嬉しかったのもありますし、ホッとしたなっていうのもありました。せっかく僕のところに来たのに、『成績残せませんでした』じゃ、彼女に申し訳ないなと思っていたので、とにかく良かったなと。ただ、1年近く一緒に練習してきて、体格的にもそうですけど、潜在能力的に光るものは感じていたので、いつか優勝するんじゃないかなとは思っていましたけど。…でも、やっぱり、ホッとしましたね(笑)」
─山賀選手自身もここ最近は1着数が増えてきて好調の様ですが、篠崎選手の活躍が刺激になっている部分も?
「それはあると思います。でも、『弟子に負けない様に』って考えすぎて空回りしても仕方ないんで、彼女に言っていることと同じで、僕は僕に出来ることをまずしていこうかなと。それが、今は成績に繋がっているっていう感じですかね」
─ところで、今まで篠崎選手と同じ開催に斡旋されたことはありましたか?
「1回だけですね。ついこの間なんですけど、僕が前橋記念で、彼女が単発レースのガールズコレクションで同じ開催でした。だから、開催通して一緒っていうのはまだないんですよ。けっこう男子の師匠と女子の弟子で同一斡旋ってよくあるケースみたいですけど、僕のところはその1回だけ。まあ、変に緊張しちゃうからイヤですけど(笑)」
─ただ、今後は同一斡旋の機会も増えてくると思いますよ。
「そうなった時にはお互いに1着を取ってみたいですよね。それが、決勝戦で師弟で同時優勝とかっていうことになったら最高なんですけど。ここ数場所は彼女の方が成績がいいんですけど、僕も競輪祭出場が決まっていますし、お互いに切磋琢磨しながら最高の結果を残していける様に頑張りますので、応援よろしくお願いします」
師匠には怒られてばかりですね(苦笑)。(篠崎)
─山賀さんに弟子入りしたきっかけは何だったんですか?
「競輪学校に入学するにあたって、師匠が必要っていうのがあって、ずっと師匠になってもらう方を探していたんですけど、なかなか見つからなくて。そういったことを夏帰省の時に支部長に相談したら、山賀さんを紹介されたんですよね。それで、弟子入りさせてもらうことになりました」
─山賀選手は傍から見ると優しそうな印象を受けるんですが、実際のところはどうですか?
「確かに、見た目は優しそうなんですけど、私には全くそんなことなくてかなり厳しいです。ほぼ怒られてばっかりで(苦笑)。言われたことを私が出来ていないっていうのもあるんですけど、常に怒られてます。スパルタですね。逆に褒められたことってあったかな…。あ、松戸で初優勝した時はさすがに褒めてもらいましたけど、一緒に練習している時はかなり厳しい方ですね」
─ただ、厳しく接するのも篠崎選手のことを思ってのことだと思います。
「どうなんですかね(笑)。やっぱり、あまりにも怒られすぎてヘコんだ時期もあったんですけど、そうやって厳しくしてもらったことで、『やってやる』っていう気持ちにもなって、精神的にも成長できたと思いますし、色々と厳しいアドバイスを貰ったことを上手く生かせたからこそ松戸での初優勝にも繋がっていったと思うので、今では山賀さんのところに弟子入りして本当に良かったなと思います」
─ここ最近はコンスタントに優出する様にもなってきましたし、成績も安定してますよね。
「やっぱり、1着を取ることで評価される世界ですし、師匠からも『勝ちにこだわって走れ』と言われているので、そこは常に意識してますね。なにしろ、教えを守らないとまた怒られちゃうんで(笑)、常に1着を意識した走りで、優勝回数を重ねていきたいなとは思っています」
─師匠とは現在も一緒に練習を?
「してますよ。師匠は街道中心の方なので、バンクには全くと言っていいほど入らないんですよ。なので、ほとんどが街道での練習で、30~40kmくらいの距離を乗る中で、たまにもがきを入れたりっていう感じですかね。でも、その練習もよく考えられていて、お互いにとってプラスになる様な練習なんですよね。師匠が先頭走って私がそれに付いていったりするのは普通にあると思うんですけど、逆に私が前になると師匠がドン詰まりしちゃうじゃないですか。なので、私が前を走る時には、私がカマシみたいな感じで駆けたあとで、何テンポか後から師匠が踏んでそれを捲っていくっていう様な感じで、2人にとって最善の練習方法を考えてくれるので、その辺りはさすがだなって思います。師匠には本当にお世話になってばかりなんですけど、結果を残して恩返ししていかないといけないなっていうのは強く思いますね」
─そういった中で、何か目標を立てていたりはするんですか?
「目標は3分間のレースの中で自分の出来ることを精一杯やって、それを1つ1つ積み重ねていくことですね。それが優勝だったり、女子の特別競輪的な位置づけになっているガールズコレクションへの出場に繋がっていくのかなと。そして、最終的には年末のガールズグランプリに出場して、そこで表彰台、そして優勝っていう風に、1つ1つの積み重ねが大きな結果に繋がっていくと信じてやっていくことが私にとっての目標ですね」
─篠崎選手は2回の優勝経験がある訳ですし、これからもガールズケイリンを盛り上げていかないといけないですからね。
「そうですね。4ヶ月前に2期生がデビューしましたけど、1期とか2期とか関係なく、今いるガールズの51名全員がトップを目指してやっていると思うので、私も彼女たちに負けない様に頑張っていきたいなと。それが応援してくれるファンの方の期待に応えることにも繋がっていくと思うので」
─大勢のファンが今後の篠崎選手の活躍に期待していると思いますよ。
「まあ、私の場合は松戸(地元)での声援がかなり多いんですけどね(笑)。でも、今はガールズも地方開催される様になってきたので、1人でも私のことを応援してくれる人がいる限り全力を尽くして、『勝ち』にこだわっていきたいですね。それが師匠の教えでもあるので」
─では、最後に今後の意気込みを含めてメッセージをどうぞ!
「いつも応援ありがとうございます。ファンの方々の声援はいつも私の力になっています。その声援に応える走りが出来る様、師匠と一緒に一生懸命練習して、1着を重ねていきたいと思いますので、温かい目で見守っていただけると嬉しいです。これからも応援よろしくお願いします」