インタビュー

 今月の「師匠の目」は兵庫の中村一将選手と藤井栄二選手の師弟が登場!
練習時の雰囲気は厳しくピリピリしたものとなっている様ですが、そんな環境だからこそ藤井選手は沢山のことを吸収している模様。昨年末のヤンググランプリでは最下位の9着と残念な結果になってしまいましたが、将来の兵庫県を背負って立つ逸材といっても過言ではないかもしれません。そして、そんな藤井選手を師匠の中村選手はどんな「目」で見ているのでしょうか。最後までお楽しみ下さい。
僕なんかはすぐに追い抜いてもらわないと(笑)。(中村)
─まずは、藤井選手が弟子入りしてきたいきさつから教えてください。
「藤井選手のお父さん(須恵夫・44期・引退)が選手を辞められたので、それを受け継ぐ形ですかね。最初にその話をもらった時は、自分のことで精一杯だったんですけど、彼(栄二)がすごく真っ直ぐな感じがしたので、この子なら面倒を見てもいいかなっていうところで、弟子にしたんですけどね」
─弟子を取ることに関して不安などはなかったですか?
「正直なところ、自分もまだ人の面倒見ている場合じゃないなっていうのがあったんですけど、お父さんから頼まれたっていうのもあったし、僕のところに来る前に彼自身もお父さんに車誘導してもらったりしていて、まったくの素人っていう訳でもなかったので、一緒に練習することで僕にとってもいい刺激になるんじゃないかなっていうのを期待した部分が大きかったかな」
─これまで一緒に練習してきて、藤井選手の素質はいかがですか?
「そこまで驚く様なダッシュ力、スピードがある訳ではないんですけど、練習をこなしていくスタミナと根性っていうのかな。そういうのはなかなかいいモンを持っていると思うので、今のまま一生懸命練習をしていけば、いい選手になってくれるんじゃないかなと思いますけどね」
─師匠から見た藤井選手の長所と短所を教えてください。
「長所は粘り強さというか、精神的な強さですかね。練習では絶対に弱音を吐かないですから。僕はけっこう厳しいことを言ったりもするんですけど、それでも一生懸命練習についてきますしね。あと、短所ですか…、短所というか、この先身につけていって欲しいのは、自分で感じていろいろ考えられるっていうのかな、こういう力を付けるにはどういうことが必要なのかっていうのを気づいて欲しいっていうことですかね」
─現在は練習で中村選手が色々とアドバイスしているんですよね。
「そうですね。今でも1日1回は必ず一緒に練習していますし、その中で出来る限りのアドバイスをする様にはしてますけど、将来的には早く僕のアドバイスを必要とせずに、自分なりの答えを出せる様になっていって欲しいっていうのはありますけどね」
─師匠として、藤井選手にはどんな選手になっていって欲しいですか?
「とにかく強くなって欲しいです。タイトルを獲るくらいの選手になってもらいたい、もうそれしかないですね。僕なんかはすぐに追い抜いてもらわないと(笑)。1日も早く僕と一緒に練習する必要のない選手になって、ひとり立ちしてくれること、それが僕にとって師匠冥利に尽きることですね」
─『その日』が早く来る様にする為にも、これからはもっとガンガンしごいていかないと。
「そうですね。しごくところはしごいて、後は彼自身に考えさせる為にもそういう時間を作ってあげるのも師匠の役目だと思うので、その辺りのバランスっていうのをうまくとっていかないといけないかなっていう感じですね」
─ところで、中村選手自身は今年の目標などは考えているんですか?
「今年に限らず、ここ何年もずっと一緒なんですけど、とにかく記念優勝することですね。そう言いながら何年も獲れていないですね(苦笑)、この目標だけは達成したいなと。師匠としてカッコいいところも見せたいですし、早く追い抜いて欲しいとは言いましたけど、そう簡単に追い抜かせる訳にもいかないですから(笑)」
─最後に、今後の意気込みを含めてファンの方へのメッセージを。
「ここ最近は弟子が気合い入っているので、彼のレースを見ることがあったら応援してあげて下さい。僕自身は今年で38歳になりますが、まだまだ上を見る気持ちは衰えていないので、頑張っていきたいと思います。これからも温かい応援よろしくお願いします」
一将さんは自分のことをよく見てくれています。(藤井)
─まずは、中村選手に師匠になってもらったきっかけは?
「僕の父親(須恵夫・44期・引退)の師匠と一将さんの師匠が同じ方だったので、その繋がりで師匠になってもらったっていう感じですね。父親に師匠になってもらうことも考えたんですけど、ちょうど僕が選手になったくらいの時に引退してしまったし、やっぱり、GIに出るくらい強い人に師匠になってもらえれば、それだけ僕が強くなれるチャンスがあるのかなと思って、一将さんにお願いしました」
─最初に中村選手に会った時の印象はどうでしたか?
「僕が自転車を始めてすぐの高校2年生の時だったんですけど、すごく迫力がありましたね。ちょっと圧倒されてしまいました(笑)。その時からずっと一緒に練習していて、一将さんには他に弟子がいないので、僕と2人での練習がほとんどなんですけど、今でも緊張しますね」
─練習の内容はどのようなメニューですか?
「バンクよりも街道の方がメインですね。午前中は師匠に組んでもらったメニューを一緒にこなし、午後からは師匠から『自分で考えて練習しろ』と言われているので、1人でやってます。師匠と一緒の時は距離を乗る様なことはあんまりしなくて、もがき練習の方が多いかな」
─練習中は中村選手からアドバイスなどはありますか?
「すごく的確なアドバイスをいつもいただいていますね。僕が悩んでいることに関して、その悩みを解消する様なアドバイスをズバッと言ってくださるんですよね。それって、いつもの練習にしてもレースにしても、自分のことをよく見てくれているからこそ、そういうアドバイスができるんだと思うので、すごく嬉しいですし、一将さんのところに弟子入りして本当に良かったなと思いますね」
─練習中の雰囲気はどうですか?
「怖い方なんですけど(苦笑)、それがいい緊張感を生み出しているというか、ピリピリした空気を作ってくれるので、そういう空気の中で練習する方が刺激にもなりますし、より集中して練習する様にもなるので、僕としてはそっち(ピリピリした空気)の方がいいですね」
─では、けっこう怒られることも?
「そうですね…。『常に考えながらレースをしろ』と言われているので、何も伝わらない様なレースをしてしまうと、『あそこでお前は何を考えていたんだ』という様なことをよく言われてしまいますね」
─ご自身としては今後どんな選手になりたいと思っているんですか?
「やっぱり、先行にこだわって上でもそのスタイルで勝負していきたいんですよね。そして、将来的にはグレードレースに師匠と一緒に参加して、前で頑張ってワンツーを決めることが1番の恩返しだと思うので、それが今の僕の夢ですね」
─「恩返し」という点では昨年末のヤンググランプリもそのチャンスではありましたが、残念ながら9着という結果に終わってしまいました…。
「自分の力の無さを痛感しましたし、課題もたくさん見えましたね。ただ、師匠からは『ヤンググランプリで終わりじゃないから』っていう様なことを言ってもらえたし、『あのレースではお前の意思は伝わってきた。ただ、その上で9着になったのは、それが今のお前の実力』という言葉をいただいたので、内容で自分の意思を伝えるだけじゃなく、そこに結果も伴う様にしていくのが今年のテーマになってくるんじゃないかなと」
─今年は具体的に何か目標を立てているんですか?
「まだFIの決勝にも乗れていない(1月末時点)ので、まずはそこですね。そこから、FI優勝だったり、記念の準決勝、決勝出場という感じで徐々に積み重ねていきたいなという風に思います。これからも先行にこだわって勝負していきたいと思います。今は『師弟連携』というと金子(貴志)さんと深谷(知広)さんのところがかなりの注目を集めていますけど、まだまだ注目の師弟はいるんだよっていうところをアピールしていきたいと思いますので、応援よろしくお願いします」