インタビュー

 今月の師匠の目は、兵庫県の高城信雄選手(77期)、井上将志選手(100期)を取り上げます。近畿を代表する自力型としてS級戦線で活躍し続ける高城選手にとって、初めての弟子が井上選手とのこと。その井上選手は100期のルーキーチャンピオンレースを制し、今期からは初のS級昇格を果たした逸材です。両選手の掲げる目標である「ビッグレース」に向けて、これからもお互いを高め合っていくことでしょう。
どんな練習にも食らいつく、諦めない根性が長所ですね(高城)

高城信雄(左)、井上将志(右)
-最初に、井上選手を弟子にとった経緯を教えてください。
「彼が選手を目指してすぐ弟子になったというわけではなくて、一緒に練習をしていて、(師匠として)誰が見るかという話になったときに、家が近所だったのと、彼は高校の後輩でもあったので僕が見ることになりました」
-高城選手にとっては初めての弟子でしたが、不安はありませんでしたか?
「今は(弟子が)2人いますが、不安は全くなかったです。自分もそのときは行き詰っているときでもあったので、自分にとっての良い練習相手になって、刺激を与えながらも自分も勉強できるんじゃないかなと思っていました」
-師匠から見て、井上選手の長所と短所は?
「体格も良いですし、気持ちの面でもすごく強いものを持っていると思います。(選手を)目指したのがちょっと年齢いってからでしたが、練習で根をあげることもなく、食らいつく根性がありましたから。最後まで諦めないのが長所ですね。短所は、ダッシュ力だと思います」
-今も一緒に練習されているんですか?
「ずっと一緒に練習していたんですけど、今はあえて月に何度かですね。良い意味での放任主義です。ガッツリ一緒にやった時期を経て、今は本人が考える時期だと思って、行き詰ってアドバイスを求めたときは、僕が経験したことを伝える形をとっています。聞かれたことに対しては、しっかりと答えています。もちろんレースは常に見ていますよ」
-井上選手といえば、ルーキーチャンピオンレースでの優勝がありましたが、師匠の立場からあの優勝はいかがでしたか?
「直前の練習中に落車して鎖骨も折っていたのに、ああいうところで勝つという勝負強さを持っているんだなと思いました。正直、嬉しかったですね(笑)」
-今期からS級入りを果たしましたが、将来はどんな選手に育ってほしいと思っていますか?
「もちろん将来は、ビッグレースで活躍する強い選手ですね。今は彼も自力でやっているので、自力で近畿を引っ張っていける選手になってほしいです。僕にはない、粘り強さ、持久力というものを彼は持っていますし、僕のダッシュ力を彼が身に付けてくれれば良いなと思っています。これ(S級入り)が第一関門で、これからさらにレベルを上げていかないといけないですから。自分のスタイルを貫き通しながらも勝てる選手になってほしいですね」
-お二人の目標はどこにおいていますか?
「自分がビッグレースをまた走れるようになるというのはもちろんですけど、一緒にビッグレースを走るというのが目標ですね。僕はそう思っています。そういう気持ちは伝わっていると思います」
-高城選手自身の現状はいかがですか?
「選手をやっている以上は、ビッグレースに戻るというのを大前提にやっています。徹底先行でやっていたときよりも先行力は落ちてきていると思いますが、ビッグレースに戻ることだけを考えて、いろいろな走り方でやっていこうと思っています。(ギア規制も)乗り遅れないように、常に何にでも対応できるようにしたいですね。車券に貢献できるように頑張ります」
-最後にメッセージをお願いします。
「ビッグレースで活躍できるようになる、それがお互いの目標でもあります。僕よりも弟子の井上の応援をお願いしたいですね」
師匠からは競輪選手としての心構えも教わっています(井上)

検車場での師弟のワンシーン
─高城選手に弟子入りしたきっかけは何だったんですか?
「年齢は離れていますが、高校の先輩で。そういう関係もありましたが、(競輪学校)1回目の試験で失敗したときに、別の方が頼んでくれました。それまでも、たまに練習をしたことはありました。僕はまったく競輪を知らないところから始めたんですけど、高城さんはGIを走っておられる方だったので(弟子入りして)嬉しかったし、ちょっと緊張もしましたね」
-弟子入りされてからの練習はいかがでしたか?
「練習は必死でしたね。高城さんも必死にやってくれて、朝から晩まで付きっ切りでした。早朝から高城さんは自転車に乗らず、僕のために車で誘導してくれたりして、高城さんからしたら自分の時間をすごく費やしていたと思います。それがすごく嬉しかったですし、絶対に受からないといけないなと思いましたね(笑)」
-今は一緒に練習する回数は減っているとのことですが。
「高城さんには最近ずっと1人でも強くなれるのが本当の強さだと言われています。これから先、高城さんの方が先に引退されてしまうかもしれないですし、そのときに『みんながいなくなったから出来なくなった』では、やっていけませんしね。そのことは、ずっと言われています」
-井上選手にとって、師匠はどんな存在ですか?
「やっぱり大きな存在ですね。いろいろな面もあるんですけど、めちゃくちゃ優しいと思います。優しいから、すごく怒ってくれますしね。自転車のこともそうですけど、今は競輪選手としての心構えも教えてもらっています。このままでは上にはいけないし、もっと下から若い選手も出てきたら、それでは落ちていってしまうので。今は上に上がるための心構えを教えてもらっていますね」
-井上選手自身、どういった選手を目指していますか?
「自力で戦えるように、自力で何でもできるようになりたいです。自力だけは捨てたくないですね。S級にはなりましたが、今は勝てていないんです。高城さんが勝てるようにと教えてくれたことが、自分ではどこかできていない部分があるんだと思いますし、まだまだ甘いなと思っています」
-ルーキーチャンピオンレースの優勝もありましたが、ここまでを振り返ると?
「ルーキーの優勝は、あれはあれで嬉しかったです。でも、今S級になってから勝てていないですし、競輪選手になったからにはビッグレースを走りたいと思います。ビッグレースにしっかりと出られるようになること、それが目標ですね」
-高城選手も「一緒に出たい」と言っていましたよ。
「はい、出たいです! 川崎(花月園メモリアル)では一緒のレースにならなかったですが、もっと上のレースで一緒に走れるように、前を任せてもらえるように頑張りたいと思います」
-師弟連携をビッグで見たい方も多いと思います。最後に今後の意気込みをお願いします。
「自力で一生懸命頑張ります。まだまだ上を目指しますので、応援よろしくお願いします」