インタビュー

 今月の師匠の目は、静岡県の渡邉晴智選手(73期)、渡邉雄太選手(105期)が登場です。輪界屈指のマーカーとして活躍する晴智選手の甥にあたるのが雄太選手。雄太選手は昨年7月にデビューすると積極果敢なレースでA級戦線をリードする存在にまで成長しています。競輪界の厳しさも教えるための「師弟関係」も重んじつつ、刺激し合いながら切磋琢磨を続けています。
「新田(康仁)のような先行選手を引っ張って、南関の底上げをしてほしいですね」(渡邉晴智)
-まずは雄太選手が弟子入りするまでの経緯を教えてください。
「雄太が僕の甥っ子で、高校生のときにその雄太の兄貴から『弟を弟子にしてくれ』と言われました。親族ということで、その兄貴も普通に自転車をもらえて、普通に乗れると思って俺のところに気楽に来たとは思うんですよ。でも(競輪選手を)目指すとなるとハードルが高い世界ですから、『まず坊主にしてから物を言え』と一喝して、それから弟子にしました。(選手が)身近にいると、俺も気軽になれるんだと勘違いしてしまう人が多いので、そういうのを分かってほしいし、教えたかったんです」
-その後は、競輪学校に合格してデビューを迎えることになりました。素質は感じていましたか?
「選手になってからは、しつこいくらいに練習に誘ってくれるんですよ。僕は一人で練習する主義だったんですけど、一緒にやるようになりまして、『こいつ、ちょっと違うな』と感じるようになりましたね。連絡がくるので、僕もやらざるをえないのですが、やるからには真剣に練習をするし、かなり集中していきます」
-現在の雄太選手は、チャレンジも卒業して、A級1・2班戦でも好成績をあげています。どう評価していますか?
「レース内容が徹底先行なので、僕は先行をしていなかったから、あまり言えないですけど、今のA級の中では良い選手かなと思いますね。僕と違って素直で、しっかりしていますし、いい加減ではないので僕とは正反対だと思いますよ」
-4月にはルーキーチャンピオンレースにも出場が決まりましたね。
「そうですね。僕が経験できなかったことを弟子がやってくれるので、すごいと思います。弟子ですし、甥っ子なので嬉しいですよ。でも、まず最初に兄弟子とワンツーを決めてからS級に上がってきてほしいです」
-今、晴智選手からはどんなアドバイスをしているのですか?
「レースに関しては、とにかくレースを見て毎日勉強しろと。練習面では、今まで僕のやってきたことを一から教えているだけです。今と昔ではギアもレース形態も違うので、僕のやってきたことが正しいのかは分からないですけど、それで答えが出ているので、今はそれを教えて、そこからは自分で考えていけば良いのではないかと。今は僕の考えを押し付けてやっています。甥っ子とはいえ師匠と弟子の関係ですから、僕がしっかりしないと弟子もしっかりしないですからね。先ほども言いましたが、しつこいくらい練習の誘いが来て、練習をしなければならない状況なので、自分がやってきた練習も含めて、弟子の意見も聞きながらメニューを考えて、僕が仕切ってやっています」
-それでは早く同じ舞台で走りたいところですね。
「そうですね。一緒に走る日が、たぶん近いうちにあると思うとは感じています。楽しみですけど、一緒になったときは、それなりの走りができる脚にしておかないといけないので、まだ頑張らないといけないですね」
-逆に晴智選手が、弟子の活躍で刺激を受けることも?
「弟子ができたことによって刺激は受けますし、雄太の兄弟子も刺激を受けて一生懸命にやっています。それから雄太よりも年が上ですけど、競輪学校に受かった奴もいるので、アマチュアも入れて、けっこうな人数で練習しています。僕にしては珍しいですよ(笑)。ただ練習をしろと言うだけではなく、僕も同じ本数をこなしています。きつい部分もありますけどね」
-雄太選手からは「晴智選手を目指したい」とのことでしたが。
「嬉しいですね。でも、新田(康仁)とかを目指してほしいですね。南関をずっと引っ張ってきたのは新田ですから。僕の意見としては、ああいう選手を引っ張る選手になってほしいですね。先行選手を引っ張って、そして南関の底上げをしてほしいです。僕らは『南関』ですから」
-ビッグレースでも最近の南関勢は若手もたくさんでてきて、ムードが良いですよね。
「そうですね。神奈川と千葉が出してくれているので、それに助けてもらっていますけど、今度は静岡から出てきて、南関全部が盛り上がってくれれば良いですね。そうすれば、また以前のような静岡の雰囲気にもなると思います」
-晴智選手の近況も教えてください。1月からギア規制も開始されましたが、影響はありましたか?
「流れは良いですね。脚力的に上積みする年齢ではないと思うので、今の脚を維持しながら、調子が良ければある程度走れると思うので、そのバラツキをなくせば安定して上の方で走れると思っています。それを目指して頑張っていますね。ギア規制がかかっても、強かった人が弱くなったわけではなく、強い人は強いので、あとは僕の努力次第です」
-最後に、読者にメッセージをお願いします。
「今までは一人で練習して来まして、一番弟子もそれを分かっていたから放っておいてくれたんですけど、雄太が出てきたことで、弟子たちが一塊になって練習するようになりました。実際に、僕も成績が上がっています。これはギア規制うんぬんよりも練習できているからで、プラス材料になったのは雄太の存在が大きいです。弟子たちとともに、これからも良いレースが見せられるように引退するまで努力していきます」
「ちょっとでも早く上に上がって、師匠と一緒に走りたいです」(渡邉雄太)
-弟子入りしたキッカケからお願いします。
「小さいころから、強かったのを見ていましたし、選手になりたいなとは思っていました。それを言ったことがありましたが、師匠になってくださいとはまだ言っていませんでした。それで学校に受かったときに、頼みました」
-志願したときは、どういう感じでしたか?
「こういう関係(親族の関係)は、これで終わりだからなと言われました。それが、普通だなと思いました」
-練習面はいかがですか?
「一緒にやっています。でも、すごくきついですね。気合をいれていないと付いていけない、そういう感じです」
-デビューされてから、師匠からアドバイスされたことは?
「まだ先行しているのであまり言われないですけど、強気に出ろとは言われます。本当はまくりも得意なんだろうけど、あまり最近はまくりの練習もしていないですしね」
-近況はA級1・2班戦でも活躍されていますが、ご自身の評価は?
「でも決勝で甘さが出ていると思います。ちょっと優勝を意識しすぎてしまって。でも得意な戦法がまくりから先行になったので、ちょっとは成長したかなと思います」
-師匠は、雄太選手にとってどんな存在です。
「やっぱり目標にしている存在ですね。ちょっとでも早く上に上がって、一緒に走りたいです」
-ルーキーチャンピオンレースの出場も決まりましたが、意気込みは?
「(ルーキーは)出られたらいいなとは思っていて、まだそこまで考えていないですけど、師匠は『何も言わないから好きに走れ』と言っていました」
-今後の目標も教えてください。
「かかってはいないですけど、特別昇級も出来そうな成績なので頑張って、今年のヤンググランプリに出られたらなと思います」
-読者に一言お願いします。
「一戦一戦頑張るので、応援よろしくお願いします」