インタビュー

久しぶりの師匠の目は、いま競輪界注目の若手の鈴木竜士選手(茨城・107期)の師匠である戸邉裕将選手に鈴木選手について、色々とお伺いしました。
自転車経験がほとんどなかった鈴木選手を、教えられたのはご自分の経験をしっかり伝えられたからだと感じました。
また、鈴木選手からは、言葉の端々に戸邉師匠を信頼している絆があることを見せていただきましたよ。
最初の遠乗りから比べると大きな進歩ですよね(戸邉裕将)
―鈴木選手の弟子入りの経緯をお願いします。
「今茨城県は育成会がありまして、竜士のおとうさんが鈴木天従さんで、一応練習に来て、師匠をやる人がいないという形で、自分の兄弟弟子の池澤義文(茨城・56期引退)さんからも紹介されて、見てもらえないかという形で、僕が面倒見る事になったんです」
―最初の印象はどのような感じでしたか?
「普通の高校生だなという感じで、見に来て最初は。冬休み前までバスケットボールをやっていたので、バスケットボールのウインターカップがあって、それが終わるまではそっちに専念して、それからだねという話をして、それが終わって、部活が終わって、僕のところに練習来るようになったんですね。高校3年生の冬休みぐらいからですかね」
―それまでの自転車経験は?
「自転車経験はなしです」
―見られていて、どんどん強くなるなという感じだったのでしょうか?
「そうですね。まあ、一番最初に来た時に、自転車を少し一人で乗っておけと言って、そして1ヶ月ぐらい乗っているっていうから、いつも僕たちが乗っている筑波まで行くコースがあって遠乗りに連れて行ったんですけど、それで行って、帰って来る途中でヘロヘロになっていたんですよ。コンビニで休ませてあげようと思ったら、そこでスッ転んじゃって、ゼリーも開けられないぐらいで、「開けられないですよ」なんてやっていたんですよ。だから、大丈夫かな?って最初思いました。 で、もう辞めてもいいと思って、厳しい練習を最初っからやっていたんですよ。それでも、自分からやってきたので。自分から強くなるという気持ちがなかったらダメだよと最初から言っていたので、もうそういう気持ちを持っていたみたいです。見ていなくてもしっかりやっていましたし。逆に、強くなるかなと思っていました。もともとバネはあるから着実に上がってきていたんで。ただね、105期のときも後半が垂れたりしていたんで。そこが問題で、落ちちゃった。そのあともしっかり頑張ってくれたんで」
―そのところは克服して?
「107期でも1000mが不安だったんですけど、200mは大丈夫かなという感じだったんですけど、1000mが試験で確かベストタイムを出したんで。よかったですよ」
―今現在、鈴木選手はS級で活躍していますがどのように思われていますか?
「予想外に早く上がったし、よかったと思います。しかも積極的にやっているんで。ま、本人が、S級に特進するぐらい、頂点まで行きたいと言っていたんで、そしたらいま、勝ち負けのレースをするより、3年後ぐらいを見て、しっかり基礎を作って競走してればいいんじゃないのと言って。その通りにやっていますけどね」
―いまは先を見て練習をしているわけですよね。
「もちろん!GI獲る人たちはみんなね、しっかり抑え先行で、タイトル戦線まで行っているような人たちですから、今の時代。そういうつもりでやっています。得意パターンは見てわかると思うんですけど、カマシとかなんですけど、いまはガマンしてやっています。 俺は学校の時から弱くて全然ダメだったので、お前はいいものを持っているんだから上で全然大丈夫だよって。俺みたいにすごく弱くても、それなりにS級で特別競輪に行けるぐらいにはなれるんだから、頑張れば。竜士お前は全然行けるからって言っていました。 俺は競輪学校0勝ですし、エルゴメーターも60km/h行かないような弱っちいやつだったし、競輪学校も5回目で受かったし。 周りの先輩の選手たちに、戸邉純一さんの息子だからあんまり言えないけど、選手になれないんだろうなと実は思っていたんですよとよく言われていたんですよ。僕はたたき上げでやってきたんで。そういうところは竜士に教えてますけどね。気持ちの面では言えますけど、素質の云々は、何も言えないので僕は」
―戸邉選手にそのようには感じたことがなかったですけど!
「同期生に聞けばわかりますよ、学校の頃を。努力って本当にすごいなと思いますもん。学校に受かっているんだから、それなりの素質は持っていると言われますけど、その中でも、弱くても頑張れば頑張っただけ成果が出る世界だと思うんで。競走していく中で自分で考えて強くなろうと思っていれば。そこらへんは言っていますけどね」
―将来が楽しみですね。
「茨城背負って、日本を背負って立ってくれるようになれれば。今ちょうど、吉田拓矢も山岸佳太も同期3人頑張っているんで。3人仲いいし、お互い連絡取り合って練習もよくしているし。茨城は他の若手も今連絡取り合ってやっているんでいい傾向だと思います」
―今戸邉選手と鈴木選手と一緒に練習されているんですか?
「今はたまにはやっていますよ。明日もバンクは。どっちかというと若手がバンクはいるときに僕が誰もいないといれてもらう形ぐらいで。街道練習は、僕らの練習仲間だとみんな年取ってきちゃったから、若手と一緒だと練習にならないから好きにやっていいよと言ってあるんですけど、たまには、一緒に行ってやったりしています」
―そうすると茨城は若手は若手中心で練習をしている?
「強い奴らがどんどんやって切磋琢磨していったほうがいいと思うし、たまには自分たちにも付き合ってやって(笑)。この間ちょっと前も、街道行きましたけど」
―鈴木選手は始めた頃と今とでは雲泥の差になっていますか?
「(今は)ゆっくり頼むぞと言わないと。昔はほらほら、踏め踏めって言っていたのが、もう踏まなくていいよって感じですね(笑)。強くなってくれて嬉しい事ですよね」
―さて戸邉選手の近況は如何でしょうか。
「今期S級戻れて、前期A級では2回失格してしまったので、来期はA級2班に落っこちてしまいます。前期A級落ちたときに色々な事考えて、空回りばかりしていたので、もう一回頑張ろうと練習内容とかセッティングを考えたらちょっと今期のS級で戦えるようになってきたので、1着は取れないんですけど。前回の高知記念も自分なりに番手勝負にいって、そういう気持ちは持ってやっているんですよ」
―現在の練習方法はいかがですか?
「僕は街道練習基本で、時折バンク練習に入る形ですね。練習仲間は師匠の戸邉英雄さんで、山崎悟、根元雄紀、須賀和彦、工藤広太郎ですね。あとはたまに竜士がやったりとか、小林申太とかもたまに街道にいったりしてます。申太も最近若手のほうにいっていますけど」
―今、目標をどこに定めていますか?
「今期S級は取れるかまだわからないですが、来期A級落ちしますけど、来来期のS級を取って、長く頑張りたいです。デビューした時と同じに気持ちで、ちょっとでも上に行こうと思っています。デビューの時の気持ちを忘れずにやっていきたいと思っています」
―ファンにメッセージをお願いします。
「弟子の鈴木竜士がどのようになっていくかわからないですけども、ファンの声援はありがたいと思うので、実際レースに来た時には暖かい声援を送っていただきたいなと思います。また取手競輪場には最終日、地元応援席を設けて、地元選手と一緒に交流しているので、ぜひ取手競輪場にも遊びに来てください」
―鈴木選手にメッセージをお願いします!
「初心を忘れずに頑張ることだ!」
「いつか競走で一緒に乗れたときは必ずワンツー決められるように走りたいです」(鈴木竜士)
―師匠の最初の印象は?
「最初の印象は、まあ普通の人だなと思いました(笑)」
―厳しそうな感じはありました?
「初めてだったのでそういうのは何もわからなかったんですけど、いざ弟子入りして練習を見てもらったら、厳しいというか、練習に対してすごくストイックな人なんで、自分とか弟子にもそういうふうな感じでやらせてくれましたね」
―初めて遠乗りにいったときは大変だったようで。きつかったですか?
「きつかったですね(苦笑)」
―競輪選手になろうと思った理由はどのようなことでした?
「やっぱり賞金が結構高いっていうのはちらっと知っていたんで、自分の体一つで稼げるってところに魅力を感じて目指しました」
―お父さんの影響もある?
「父がやっていたからってわけではないんですけど。始めてからも自分は生で競輪を見たこともなかったですし。父のレースも見たことがなくて、全然興味もなかったんですけど、まあやることないし、お金稼ぐためにはやっぱりスポーツ選手かなと思って目指しました」
―それまではバスケットをやっていて。転向するのは大変でしたか?
「いや、特に大変だったと思うことはないんですけど、まあただ自転車はきつかったですね」
―最初に師匠からどんなアドバイスをもらいましたか?
「師匠からはやっぱり、強くなるのは自分次第だからなっていうのは、常日頃から言われていたんで、与えられたメニューの中でもやっぱり自分が強くなるために自分で考えてやっていました」
―それはとにかく決めてからずっとという感じですか?
「そうですね」
―自転車経験がなかったと聞きましたが最初に105期を受けて落ちて、107期で競輪学校入学ですが、一発で合格できると思っていました?
「いやまあ、ちょっと最初始めた頃はちょろいだろと思って、なめてかかってたんですけど(笑)。一年あれば大丈夫だろうと思っていたんですけど、実際そうじゃなくて。タイムも最初の一年目は全然出なくて苦労したんですけど、師匠とか家族とか周りの協力もあって、なんとか2回目で受かることができました」
―師匠に聞いたところでは1000mで最後にタレると。そのあたりを努力した感じですか?
「そうですね。やっぱりそこを重点的にと思ってやっていたんですけど、結局タレちゃうんで(苦笑)。それなら前半を頑張ろうと思って、前半を出すように意識していましたね」
―前半を上げて、あとはひたすら堪えるみたいな?
「そんな感じですね(笑)」
―学校のときにベストタイムが出たと師匠が言っていましたが?
「入学試験のときですね」
―本番に強いというイメージはあります?
「いやあ、どうなんですかね、出ちゃったっていう感じですね(笑)」
―学校時代の師匠からのアドバイスはどんなものでした?
「学校のときは特にアドバイスというのはなかったですけど、自分自身で考えて練習とか競走訓練とかに臨んでいたんで。何かある度に結果とか報告していたんですけど、特にあれしろ、これしろとか言う師匠ではないんで。自分で考えてやるのが一番と思ってくれているんで」
―そのところはしっかり見てもらっているという感じでしょうか?
「そうですね。ポイント、ポイントでは言っていただけるんですが」
―デビューしてからの師匠からのアドバイスはなにかありましたか?
「一応競走終わる度には連絡して、気になるところがあると言ってくれるんですけど、毎回毎回、的確にというか、その部分だけアドバイスしてくれるんで。ちゃんと見ていただいています」
―今、練習はどのようにやっています?
「練習は街道とバンクに入ってますね。バンクは今、基本は若手で集まってバイク誘導だったり、自力でもがいたりとか。街道練習だったら少し距離乗って、追い込む形でみんなで先頭交代するって感じで。メンバーは街道練習だと吉田拓矢とかと行くのが多いです」
―今、茨城は若手が集まって練習している感じなんですね。
「バンクはそうですね。バンクは若手が集まって。街道に行く人が若手はあまりいないので、グループの方にお世話になって一緒に行ってもらったりとか。あとは吉田拓矢とかと二人で行ったりもあります」
―今の目標を教えてください。
「今の目標はとりあえず取手の全日本選抜に選ばれればなと思っています。あとはヤンググランプリですね。ルーキーチャンピオンレースの借りを返さないとという感じですね」
―将来的な大きな目標は?
「もちろんタイトル獲るのもそうですし、グランプリを獲るのもそうですし、それ以上に自分が競輪開催に行ったときに、自分がお客さんを呼べるような選手になりたいですね。自分を目的に来てくれるようなお客さんがたくさん増えてくれればいいんですけど」
―ファンの方にメッセージをお願いします。
「自分は同期にたくさん強い人がいるんですけど、自分は自分のペースで頑張って、将来的にはSSなり、トップで活躍できるような選手になるので、末永く応援してほしいなと思います」
―そして師匠に一言お願いします。
「今までもすごくお世話になって、これからもまたたくさんお世話になって迷惑かけると思うんですけど、いつか競走で一緒に乗れたときは必ずワンツー決められるように走るので、これからもよろしくお願いします」