インタビュー

ヤングの優勝は一つの結果として、これからが大事です
宣言通りの優勝劇だった。12月29日に行われたヤンググランプリ2014は、好位置を奪取した近藤龍徳がまくり一発を鮮やかに決めて優勝を遂げた。若手の登竜門を制した近藤が、2015年はさらなる高みを目指して「昇り龍」のごとき活躍を見せるだろう。
なんでまくれたのだろう?今でも不思議です(笑)
「ほら見ろ!」。誰よりも先にゴール線を駆け抜けた近藤の両手が高々に挙げられた。10月末にヤンググランプリ2014の出場メンバーが決定してから、ここに照準を定めてきた。
「決まってからは師匠(鰐渕正利)と話をしながら、計画を立ててやっていました。11月はあっせん停止になってしまいましたが、そこでもいろいろ考えながら1カ月しっかりと過ごせましたね。特に変わったことはしませんでしたが、愛知県でも吉田敏洋さんや山内卓也さんとか特別回りの選手に調整方法をしっかり聞きながら師匠と一緒にやっていました。計画的にしっかりできましたね」
 だが12月の名古屋FIでは準決勝3着突破するも、途中欠場となってしまった。
「何とかヤングに繋がる競走をしたいというのはあったけど、準決勝が終わった後にインフルエンザだと分かりました。それでどこまで緩んでしまうのか、力が落ちてしまうのかという不安はあったんですけど、2日間しっかり休んでから自転車に乗ったら良かったので、そこからは残り少ない日数を師匠の単車誘導などで仕上げてもらいました」
 このときすでに、ヤンググランプリに対して確信めいたものがあったという。
「変に自信がありました(笑)。みんな信じていなかったと思いますが、『獲ってきます』と言い続けていましたから。今思えば、そう言い続けたのも良かったのかなと。自分が信じていないと絶対に優勝はできないと思いますしね」
 14年前期に初のS級昇格。ここまでビッグ参戦の経験は無く、今回のヤンググランプリが近藤にとって初めての大舞台となったが、レースまでの雰囲気はどう映ったのであろうか。v 「緊張はそんなにしないタイプだし、自分は(FIより)記念の方が成績良いくらいなんですよ。人の注目が集まるレースでは、みんなが見ていると思うだけで、それを力に変えられるタイプだと思います。特別選手紹介のときも大きな声援をいただいたので、『よっしゃ、見とけよ!』という気持ちが日増しに強くなっていきましたね」
 レースではラインも細かくなり、近藤も単騎戦。作戦としては「近畿ラインの後ろから組み立てて、勝負所でどこまでシビアに勝負権ある位置まで車を上げていけるか」と読んでいたが、若手同士の一戦だけに一筋縄ではいかない。赤板から激しいせめぎ合いがあり、近畿ラインが崩れてしまう。この状況を見て、近藤は打鐘で内を突いて中団まで上昇する。この動きが優勝をグッと引き寄せた。
「頭の中では絶対に赤板から始まると準備はしていました。そんなに焦りもなかったし、近畿が分断されて三谷(竜生)さんが下がってきたのが見えたので、そこでどうしようかなと一瞬考えたんですけど、『これは三谷さんより前にいないと勝負権ない位置になる』と判断して内にいきました」
 そして、ここからが勝負強かった。最終バックからまくり発進すると、前団を一気に捕えて先頭に躍り出た。直線で三谷が迫ってきたが、それを振り切って優勝。この大まくりについて、本人はこう振り返る。
「あのときは自分が外からまくっていくなんて思っていなかったんですよ(笑)。緩んだらいこうという気持ちもなくて、そんな準備はしていませんでした。前の方で金子幸央が並走していたので、それを目標にして踏んでいこうと思っていたくらいで。それで、これはいかないと勝てないなという気持ちで踏んだだけなんです。なんで、まくれたんですかね? それが今でも不思議なんです(笑)。意外と(車の)出も良くて、3コーナーでなんとなく後ろを見たらちょっと車間があいていたように見えたので、『これはもしかしたら押し切れるんじゃないか』と思って踏みました。でもゴールは遠かったし、重かったですね(笑)」
 そして冒頭のシャウトに繋がっていく。「ほら見ろ!」にはこんなエピソードもあった。
「(ゴール前で粘れたのは)気持ちかなと思います。ほら見ろ!と思いましたから(笑)。開催中は深谷(知広)さんとずっと喋っていて、僕が優勝したら『ほら見ろ!』と叫んでガッツポーズしますと言っていたんです(笑)。まくりで出切ってゴールが近づいた時から、心の中では『ほら見ろ、ほら見ろ』と叫んでいました。それでゴールして『ほら見ろ!』と実際に言いました(笑)。強い勝ち方ができたのかなとは思いますね」
 その深谷をはじめヤンググランプリ優勝者はスターへの階段を一気に駆け上がっていくことが多い。「若手の登竜門」として知られるゆえんだ。今後は周囲の期待も否応なしに高まっていくだろう。
「自分で言うのもなんですけど、グランプリもGIも頑張れば何回でも出られますけど、ヤンググランプリは出走回数が決まっているし、そう簡単に優勝できるものではないと。そこで獲れたら名前も残るし、(優勝の喜びは)かなり大きいですね。でも、僕はずっとこの競走スタイルでやってきたし、たまたまヤンググランプリではまくりが出て結果として1着が取れただけ。常に1着を狙いに行くスタイルはこれからも変わらないし、何かが自分の中で変わることは無いですけど、自覚というか、ヤンググランプリを獲ったということに誇りを持って走りたいですね。ヤングを獲っただけあるなという見方をされるのか、まぐれで獲ったと思われるのか、それは僕のこれからの一走一走にかかっていると思います。勝てたことはひとつの結果として、これからが大事だと思っています」
 ヤンググランプリ出場を果たしたことで、今年はビッグレース参戦の機会も増えていくだろう。上のステージでも、自分らしいレースを貫いていく構えは変わらない。
「まだGIにも出たことがないので出てみたいし、まず第一歩としてGIに出られる選手になることが目標ですね。僕はチャレンジャーという気持ちが強ければ強いほど、良い結果が出せると思っています。それにいろいろな戦法が出来れば僕の持ち味ももっと活きてくるだろうし、ギア規制も僕はずっと92を主流に使っていたのでプラスにでしかないと思います。これからもとにかく目立ちたい気持ちがあるし、もちろん走りが一番ですけど、ファンサービスだったりと大勢のお客さんの前に出るチャンスを活かしていきたいですね」
 眩いばかりの個性を放ちながら、縦横無尽のスタイルで挑戦を続けていく。これからの大目標は「深谷-近藤」時代を築き上げていくことだ。
「深谷さんがいる以上、僕は深谷さんの番手が目標だし、そこが今、日本一に一番近い場所だと思っています。そのためには愛知だけでなく、中部に認められるマーク選手にならないと。回ってくるという言い方はおかしいので、自分で取りに行かないといけない位置だと思います。これからは、まずビッグレースに出られる選手になれるように頑張るのと、なおかつそこで良い勝負ができるように練習をしっかりと積んでいきたいです。どこからでも連に絡んでくる、厳しい展開でも突っ込んでくる、ワクワクして最後まで期待できる走りをして、レースや画面から目を離せないような選手になりたいですね」

12月ヤンググランプリ2014のゴールシーン。

(7)近藤がまくりで押し切って優勝を決めた。
近藤龍徳 (こんどう・たつのり)
1991年1月20日生まれ、23歳。身長165.5㎝、体重59.7kg。師匠は鰐渕正利 (65期)。在校成績は11勝で6位。「父(幸徳・52期)からは『よくやったな!』と言ってもらいました」とのこと。