インタビュー

岸和田の大歓声の中で掴んだグランプリ初制覇
王者としての一年がまた始まる
熱き9つの魂が競輪界の「頂」を決するKEIRINグランプリ。2014年は初の岸和田開催ということもあり大きな話題を集めた。そしてグランプリ特有の空気感、大声援の中で真っ先にゴールに飛び込んだのが武田豊樹だった。初のグランプリ制覇、チャンピオンユニフォームで挑む2015年についての思いを聞いた。
仲間のおかげで僕の優勝があったと思います
 61走して1着39回、優勝10回、そして着外は6回のみ。もちろん賞金ランキングは1位。武田豊樹が残した2014シーズンの戦績は、数字的に見れば「圧巻」の二文字以外に言葉が見つからないが、武田本人は「良かったとは思いますが、何も満足はしていないです」と評価する。
「どのあたりに満足していないかは一言では言えないですけど、選手として満足してしまったら、そこで終わりじゃないですかね。まだ満足はできていない、そういう感じです」
 9月のオールスター(前橋)で2年ぶり4度目のGI優勝を果たして、グランプリ出場権を獲得。武田以外にも関東勢からは平原康多、神山雄一郎と関東勢が3者、グランプリに名を連ねた。
「関東の実力者は、しっかりと結果を残すと思うので。僕に任せてもらったら自分の走りをするし、その積み重ねでそうなっていったんだと思います。それにお互いの信頼関係もすごく大きいと思いますね。ワンツーもすごく多かったですし、自分たちが走って楽しくても仕方ないし、お客さんに喜んでもらう走りを考えていかないといけないと思うから、そこは良かったと思います」
 昨年のグランプリは、岸和田競輪場での開催となった。関東圏以外での初めての開催ということで、参加9選手にとっても当然、初の経験だった。
「やっぱり近畿のメンバーを見ても、実力者がそろったラインだったし、関東の選手としても負けられないという気持ちで走ったと思います。岸和田競輪場に関しては、関係者の皆さんも本当に一生懸命でしたし、とても良い雰囲気でした。僕はまだグランプリが6回目で何十回も出ているわけではないですけど、良い雰囲気でグランプリができたと思います。盛り上がり方も、今まで僕がグランプリを走った中では一番でしたね。ああいう大歓声の中で走るというのは、ひとつの夢でもありますから、走らせてもらって嬉しかったです」
 そして今回、武田は今までのグランプリとは異なり、「いつも通り」を貫いて開催を迎えていた。
「そうですね。グランプリは特別なレースだと思っていたし、自分の体だったり体調だったりトレーニングだったり、今まではグランプリに向けて特別な形でやっていたんですけど、今年は何もやらずにいった感じですよね。その中でも準備はしっかりやっていました。開催までは長いので平常心でいられるということは難しいですけど、レースの中では平常心でいられたのかなと思います」
 改めて激闘のグランプリを振り返る。周回は深谷知広-浅井康太、村上義弘-村上博幸-稲川翔、平原-武田-神山で、単騎の岩津裕介が続いた。レースは青板から平原が動くと村上義はこれに合わせて突っ張る構え。平原は一旦中団も打鐘から前を叩いて先行態勢に入っていく。
「僕たちより前で周回していたのが近畿のラインでしたし、深谷君も前を取っているわけですから、早めに動いての形になりましたね。赤板からかなり動き出しているので、前を走る選手はみんなそこで力を少し使った形での打鐘でした」
 間髪入れずに最終ホームで深谷がまくりで迫ってくるが、武田がこれを牽制。村上義がさばいて3番手に浮上も、最終バックでは武田がまくりを放って抜け出していく。
「(深谷は)力のある選手なので、どんな形であろうと外から来ると思っていました。でも平原君のスピードもすごく良かったので。役割分担というよりも、前を回った平原君が自分の力を最大限に発揮したレースだったと思います」
 そこから後続を引き離したまま、ゴール線をトップで通過。6度目にして、初のグランプリ制覇の瞬間だった。
「(自分の感触は)途中まで良かったんですけど、バックではあまり良くなかったですね。平原君があれだけいってくれたのにも関わらず、ゴール線まではすごく長く感じましたね。ベストな走りというものは、競輪選手はないと思うんです。でも、その中で勝てるのは仲間のおかげだし、そうした中での1着だったと思います。(ゴールしたときは)『勝てたな』と思って、そんなに興奮はしていませんでしたけど、やっぱり嬉しかったです。本当に仲間が頑張ってくれたおかげで僕の優勝があった、すぐそう思いました。長年戦ってきている仲間で、みんな勝つために走っていますし、その真ん中に僕が入って勝つことができたことは嬉しかったです」
 そして2015年。グランプリ優勝者にのみ着ることが許される「チャンピオンユニフォーム」でのシーズンとなる。
「(チャンピオンユニフォームは)とくに意識はしていないです。今までも意識して見ていたことも無かったですが、和歌山を走って、意識していなくても、あのユニフォームを着ると少し違いました。でも、それは嫌なものではないですし、また頑張るだけですね」
 初戦の和歌山記念では、決勝で鈴木謙太郎の番手を回り、しっかりと仕事をこなして優勝。鈴木が2着に粘り、見事なワンツーを決めた。
「一年間は長いですし、スタートといっても、すぐにいわき平記念がありますから。良いスタートは切れたなとは思いますけど、自分の中では何も変わっていないので、まだまだこれからという感じです。(和歌山でのワンツーは)レースをやる上でのひとつの目標でもありますし、後輩にも自力選手が並んでもワンツーが取れるんだぞというのは見せたい気持ちもありますから。こうした積み重ねで後輩も頑張ろうと思うと思いますし、道を作ってあげたいなと思いますよね」
 変わることのない闘志を内に秘め、王者の一年がまた始まった。
「目標というのはとくにないですけど、毎年のテーマはGI制覇。そこを勝てば、グランプリがあるわけですから。そこは変わらずにひとつひとつ積み重ねていきたいです。お客さんがいてのプロスポーツですから、お客さんを第一に、お客さんに認めてもらえるようにこれからも頑張りたいですね」

KEIRINグランプリ2014のゴールシーン。

(2)武田がまくりで抜け出し初制覇を果たす。
武田豊樹 (たけだ・とよき)
1974年1月9日生まれ、41歳。身長177㎝、体重90㎏。ハイレベルをキープし続ける秘訣を聞くと「特にないですが、毎日の生活とトレーニング、それで自分を鍛え上げて、チャンスがきたときのための準備をしていくだけです」