インタビュー

「競輪はスピード、アドレナリン、戦いです!」
初めて日本の競輪に参加したのが2014年。それから4年。今や短期登録選手の中でもキャリアを積んだ選手になったドミトリエフ選手にインタビューしました。
初めて参加した時の競輪の成績から今を見ると格段の進歩と実績を積んで素晴らしい選手になっています。
自転車競技のケイリンと日本の競輪の違いは、調子、強さだけでは勝てないものが、日本の競輪にあると言っています。
そして、日本の競輪は素晴らしいと。
今後のさらなる活躍に期待したいですね。
一歩競輪場に入るとそこに「競輪ワールド」という異世界が広がっています。
-日本の競輪に参加して、今現在どのように思われています?
「これは日本人が創造して作り上げてきた、素晴らしい競技だと思います。色んな人が自転車に乗って参加するわけですが、自転車が好きでこの競技を選んで参戦してきているわけで、それで、好きな世界で、なおかつ賞金がもらえると、その仕組みを考えたのがすごいと思います。自分にとって、まず一番はトレーニングをしていても楽しいですし、レースを走っていても楽しいですし、もうアドレナリンも出てきて、人生の何かを賭けた楽しみですよね。もう1つは、もちろん賞金があるところです。
競輪の世界で、皆が悲喜こもごもの人生の経験をするわけで、勝てば嬉しいし、負ければ悔しいし、本当に人生をエンジョイ出来る要素が日本の競輪にはあると思います。その中に自分も参戦しているわけですが、前検の日から始まる、そこから違う世界に入るようなマジックのような、それが競輪の面白いところだと思います。
そして、レースというのはお互いに敵同士なんですけど、でも、レースが終われば、皆フレンドリーで、友達というか家族みたいな感じで、レースだけ見るのと、その側面を見るとまた違っていて、競走が終わった後に、(自転車を取りに行ったりなど)助け合うという、お互いを尊敬し合うことも競輪には含まれていて、色んな要素があって、この競輪の世界をエンジョイ出来ていると思います。

ルールも国際的なものとはやっぱり違っていますし、落車も多いし、ラインがあったりとか、僕らが国際大会で走っているものでは経験できないものがたくさんあります。
国際ルールに比べると、勝つにはいろいろすることが沢山あって、例えば、選手の調子がいい、強い脚をもっている、普通なら勝つための条件がそろっているんですけど、それだけでは競輪を勝利する要素には足りないです。色んな要素が噛み合ってこないと勝てないと思います」
-さて、ドミトリエフ選手が自転車競技を始めたきっかけはどのようなことでしょう?
「運動歴はサッカーから始めたのですが、サッカーでは全然目が伸びず、でした。
それから水泳を始めました。それで、水泳の1か月間のチケットを買ったんですけど、知り合いに『自転車クラブに入れば、プールは無料で使えるぞ』ということを聞いて、そこで水泳から自転車につながりました。2年ほど柔道もやっていました。柔道もけっこう好きだったスポーツなんですけどね。柔道をやっていた頃に自転車もやっていて、2つ掛け持ちでやっていたんですけど、どっちか集中してやろうと思った時に自転車の方を選びました」

-自転車を選んでよかったですか。
「どういうことを説明していいかわからないですけれども、とにかく、最初に自転車に乗って感じたことは、自転車と自分は恋人同士だ、相思相愛のスポーツだなって感じました」
-自転車を始めて、そこから競技者として輝かしい成績をおさめていますが。
「自分も人間なので、いつかはリタイヤしなきゃいけない時が来ると思います。でも、自分から自転車を取ってしまうことは悪夢でしかありません。本当に、そんな人生は考えられないです。
もし仮に、自分の国際競技の寿命が終わってしまった時に、もし競輪が自分を呼んでくれたら素晴らしいことになると思います。
でも、現状では自分が自転車から離れることはないと思うし、50歳くらいまではやっているんじゃないかと思います。これが自分の天職だと思います」

8月22日豊橋で行われたエボリューションレースで優勝。
-少し振り返って、初めて日本の競輪を走った時はなかなか勝てなかったですが、あの頃はいかがでしたか?
「すごく難しい状況に陥ってしまって、初めて競輪の試合に出た時はもうパニックになりました。自分は何をしたらいいんだろうか、ラインとか色んなことが複雑に絡んでいて、何がなんだかわからない、パニックが爆発してしまったっというのが最初の頃の正直な状態でした。それから、段々と慣れてきて、自分にとっての競輪は魚が水を得たような状況になっていったと思います」
-何が特に変わりましたか?
「最初の頃と今は大きな差があると思いますが、やはり経験の差が大きいと思います。いくつもレースを経験して、競輪独特の戦法を学んできて、強い選手と戦ってきて、SSの選手とも戦ったりして、そうやって戦って得た経験もありますし、ビデオで勉強したりとかして学んで、段々と自分が何をしなきゃいけないかがわかってきました。それで、先行、捲り、その他の戦法を理解出来るようになりました。長い戦いの中でコンディションがベストでない時もあるけど、その時にどうするのかとか、全力でなくても勝つ方法とか、色々と学んできました。そして、今は絶対的な自信があります。なぜなら、世界チャンピオン (2017年世界選手権男子スプリント優勝)だからです。そういう色んな経緯の中で、勝利を生み出せる秘訣が秘められていると思います」
-最後に、ドミトリエフ選手にとって、競輪とは?
「スピードであり、アドレナリンであり、戦いですね。競輪とは自分にとって、そういうものです」
デニス・ドミトリエフ
1986年3月23日生まれ 身長177cm 体重93kg
スプリントが得意な選手。リオオリンピックで銅メダル。そして2017年香港の世界選手権男子スプリントで優勝をしています。