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吉田有希(茨城・119期)
119期の中でS級に一番のりした吉田有希選手。S級初戦でも山口拳矢選手から逃げ切り1勝をあげ、さらに注目をあげました。青森FIの3日間、しっかり自力を活躍できることを示しているにもかかわらず、本人は恵まれただけと謙虚そのもの。強いのに『目立たずにしれっとやっていきたい』、『脚と顔じゃ勝負できないのでコメントで勝負しようかなと思っていたんですけど』なんて言っちゃう吉田選手、脚だけでなくコメントの面白さも大注目です!!
兄に『上で待っているから』って言われたので、それを目標に頑張ってました

-119期で1番目に特進を果たした感想はいかがでしたか?
「そうですね、何で僕なのかなっていう感じですね(苦笑)。同期の他の選手の方が脚もあるし、レースも上手いですし、ちょっと僕には荷が重いというか、そんな僕が1番っていう器じゃないですね。『やったー』っていのはないですね、3番、4番目でよかったです(笑)」
-特進したこと自体は嬉しい?
「師匠(吉田拓矢)が、S級で戦っているので、それに少しでも近づけるというのは、やはり目標なので、嬉しいですね」
-特進を決めた宇都宮の決勝はなかなかギリギリで届いた感じでしたね。
「最終バックあたりで『これはダメかな』って思って、でも、とりあえず出てみようって思ったら、思いのほか自転車が伸びてくれて、奇跡的に1着が取れました」

-劇的なレースでした。
「自分でも、よく届いたなってちょっと思いました(笑)」
-師匠でもあるお兄さんからは何て言われましたか?
「開催が終わってからすぐ連絡して、メールで『よく届いた、良かったよ』って言われました」
-それだけ?
「はい、それだけです。そういうのはあんまり自分とかには言わないんで(笑)」
-そうなんですね。
「デビューしてからすぐに『上で待っているから』って言われたので、それを目標に頑張ってました。兄貴は口数が多く語るタイプではないですね」
-では、岐阜で『自分のことより、弟の方が心配ですよ』って言っていたのは?
「それは僕の耳には届かないですね(笑)」
-では、S級を走ってみてどうでしたか?
「青森はトップレベルの自力選手も多く、番手の方々もしっかり脚があって、技術もあって、本当にGIIIみたいなすごいメンバーだったので、1日1日勉強することが多かったですね。初戦は思い切りポンコツぶりを発揮して、脳筋パニックレースをしてしまいましたねぇ(笑)」
-ですが、2日目にはあの山口拳矢選手を倒すという活躍を見せてくれました。
「いや、でも、奇襲みたいなレースだったんで。初日があんなレースだったので、かからないと思って簡単に逃がしてくれたから、それが上手くハマって、展開が向きました」
-周りはそう思ってないし、評価はすごくあがってますよ。
「いやいや、風がよかったおかげですよ、僕の脚じゃなくて」
-決勝戦もすごいメンバーとの対戦でしたね。
「北の新山(響平)さん、山崎(芳仁)さん、飯野(祐太)さん、佐藤(友和)さんと、自分が自転車を始めた頃から知っている超一流の選手の方々ばかりだったし、番手についていただいた雨谷(一樹)さんもすごい選手って分かっていますし、北野(武史)さんもトップでずっと走ってらっしゃるし、その中で僕1人なんというか、三輪車でハーレーに挑むみたいなそのくらいの差がありましたね(笑)」
-レース振りはそんなことなかったですよ。
「でも、焦っちゃって、行くのも早かったし、反省点も多かったですね。S級は、A級戦やチャレンジ戦と流れやスピード感も違うので、上手く対応はできなかったんですけど、毎日ちょっとずつ走り方を変えて、一回一回全力で挑んでみました。青森はすごい選手ばっかりで、新山さんとか拳矢さんとかカッコいいじゃないですか、脚と顔じゃ勝負できないのでコメントで勝負しようかなと思っていたんですけど(笑)、とりあえず決勝に乗れちゃったので、頑張ってみようって感じでした」
-S級を走って、見えた課題はありますか?
「ペース配分ですかね。先行して、バック線がゴールではなく、ホーム線がゴールなので、3着以内に入れる方法を考えると持久力とともにペース配分も大事になってくるのかなと思います。やっぱり相手が嫌がるようなレースをしていかなきゃいけないのかなって、考えさせられますね」
-今の目標は?
「まだ若手で失うものは何もないので、とりあえずガンガン先行して、それに結果を残せたらいいなと思っています」
-お兄さんと一緒のところで走りたいという気持ちは?
「いやー、一緒に練習している感じ、及ばないなって、僕が走れるレベルじゃないなって思うので、いずれは一緒に走れたらいいなと思っています」
-いやいや、勢いは大事ですよ。
「いや、たまたま流れが向いてくれただけの準決勝だと思うので、自信とかは全然ないですね。新人なんで力を出し切ることだけを考えて走りたいと思います」
-たぶん見ている人は『強い』って思っているので吉田選手ご本人の感覚とは乖離していると思いますよ。
「強いって自分から言える立場じゃないっていうか、そんなこと一回も思ったことないので、強くなっていけたらなと思います。同期のレースを見ていると『すごい、強いな』って思いますね。犬伏(湧也)さんとか志田(龍星)さんとかレベルが違うので、僕は離されないように。僕は目立たないように、しれーっとやっていきたいので(笑)。
すぐにタイトルを獲るとかそういうのは全然なくて、関東で優勝者を出せるような選手にまずなりたいですね。ビッグレースに出れるようになれるかわからないですけど、前を任してもらえる選手になりたいですね」
-いやいや、関東の先輩たちは頼もしい後輩が出てきたと喜んでいると思いますよ。
「いやいやいや(笑)。『こいつバカじゃねーの(笑)』とか『なんだ、この初日は!?』って言われてますよ(笑)。
栃木の眞杉(匠)さんや埼玉の黒沢(征治)さんとかすごい先行選手だと思うし、ああゆうようになりたいなとは思います」
-まずはS級のレースに慣れて、一歩ずつですね。
「落ち着いたレースをできるように、全力を出してタレるレースではなく、落ち着いて、相手をしっかり見て、色んなレースをできるようになりたいです」
-ラインの選手とワンツー勝負ですね。
「そうですね、そういう選手にならなきゃいけないなって思いますね」
-ファンにメッセージをどうぞ。
「なんとかS級に18連勝であがることができました。……あんまり期待しないでください」
-何を言っているんですか!(笑)
「いやぁ(笑)。自力で勝負できるように頑張ります!」
-期待するなはムリですよ(笑)
「いやぁ、本当に注目されるのはムリです(笑)。それでなくても『吉田拓矢の弟』ってことで強いんじゃないかって言われるんで。『お兄ちゃんよりも強いんでしょ』って言われるんですけど、その度に撤回しまくってます(笑)」
-なぜなら、それを吉田拓矢選手がそう言っているから(笑)。
「勘弁してほしいです(笑)。本当に練習で一回も勝ったことがないですから!」
-でも、お兄さんは一緒に走るのを待っていると思いますよ。
「早く兄貴をアシストできるようになりたいですね!頑張ります!!」
吉田有希(よしだ・ゆうき)
2001年9月8日生まれ。身長168.5㎝ 体重86.4kg
Q.相談するお兄さんが身近にいるのは大きなアドバンテージになるのでは?
A.「そうですね。でも、まだあまりレースのことは聞いてないんです。一応、自分で考えてみようと思ってます!聞くことは簡単なので、まず自分で考えて改善点を見つけようと思っています。うちの兄貴も色々と考えて、もし壁にぶち当たったら他の選手に聞いてみるという感じだったと思うので、自分で考えて、ここぞという時にどうすればいのかって聞いてみたいと思います。レースは生ものだし、そのレースによって戦い方も走り方も変わってきますし、一概には言えないだろうし、走るのは自分なので、感覚的に磨いていくしかないのかなっていうのはあります」