インタビュー

伏見俊昭が正念場を迎えている。9月25日現在の賞金ランキングでは17位。苦戦を強いられている感は否めないが、こういった逆境を乗り越えて、そのたびに輝きを増してきたのが伏見という男である。残すところ3カ月、今年もグランプリを目指し、静かに闘志を燃やしている。
調整法や気持ちのもっていき方を自分で見つけないといけない
「ちょっと成績が安定せずに、だいぶ苦しい一年ではありますね」。
 今年これまでの戦績について、伏見はそう切り出した。意外なことだが、ここまでビッグレースでの決勝進出がなく、成績的には劣勢に立たされている。その理由をこう語る。
「今年のはじめ練習中に落車をしてしまって、それから何だか波に乗れないような感じでした。そこにきて、高松宮記念杯での落車もあって、体と気持ちがちょっと付いていってないのかなという感じですね。落車はあれだけの衝撃ですから、そこから微妙にバランスが崩れてしまって、それが蓄積されていって…。いろいろ悩むところもあるし、考えるところもありますからね。もう、ずっと考えていますよ。練習は変わっていないんですけど、日によってバランスが悪かったりするので、そこは年齢もあるんでしょうね。37歳になって、40歳に近くなってきていますし、いろいろ考えていかないといけない年齢だと思っています。夏バテ気味だった8月は、今思えば見えない疲れも残っていたのかなと感じるところもありますしね」

5月全プロ記念競輪SPR賞のゴール。
(3)伏見が圧巻の強さで優勝。
 そういった微妙な変化が、成績の波を大きくしてしまっていた。
「オールスターで決勝に乗って、賞金の上積みが出来れば、グランプリ争いに食い込めるかなと考えていたんですけど、準決勝で失敗してしまって。あのときも、どこか入れ込んでいたところがあったんだと思います。そのあと中3日で防府記念だったんですけど、そこでは開き直って楽に走ったら、しっかりと成績がまとまったので、メンタルの面でもだいぶ左右されるのかなと思いました。練習量もモチベーションも変わっていないですし、スピードもバンク練習でのタイムも昨年と比べて遜色ないんです。防府記念だけではなく、全プロ記念競輪、サマーナイトフェスティバルも良かったんですけど、今年は良いときと悪いときの波があるなという感じがしています。宇都宮記念でも準決勝で深谷(知広)君を捲れていますし、良い時は良いんです。ただ、昨年までは悪くても悪いなりに成績をまとめられていたのに、今年は悪いときはとことん悪くて、その開催中の修正がきかなくなってしまうんですよ。そうしたことが、ここまでうまくいかなかった原因かなというのはありますね」
気持ちを切らさず、コツコツと積み重ねていくだけです
 若い頃からスター街道を猛進してきた伏見だが、年齢的にもベテランの域に達してきた現在、うまく心と体のバランスを取ることが大切になって来ているという。
「巧い人は、練習をやるときはやって、抜くときは抜いて調整していくんですけど、年齢が上の選手に『調整ってどうですか』と聞くと、『やりすぎはよくない』とみんな口を揃えて言うんですよ。もちろん、やらなくちゃいけないときはやらなくてはいけないと思うんですけど、あとはメリハリが大切ですね。いつもいつも、練習をやるだけではダメで、これまでも焦って練習を多めにやったり、疲れているのにその疲れを見て見ぬふりをして練習したり、ケアをせずにやっていたりしましたからね。気持ちを入れ込みすぎても空回りしちゃうし、抜きすぎても、勝ちたい気持ちが強くないと勝てない。そういう調整法や気持ちのもっていき方を自分で見つけないといけないし、そのバランスがすごく難しい。日々勉強ですね」
 今年のGI戦線は競輪祭を残すのみとなった。07年からは5年連続で出場しているグランプリ。通算10回目の出場を目指し、今まで通り、やることをしっかりやる構えだ。
「(GIを)獲らなければ厳しい状況になっているので、競輪祭は本当に勝負駆けですよね。でもジタバタしても何も変わらないし、急に強くなることもない。今年、苦戦していることも良い方に受け止めれば、良い勉強になっているので、この経験が今後に繋がればと思っています。どういう練習をすればいいかは自分でも分かっていますし、練習は嘘をつかないので、まずは鍛錬をしっかりと。気持ちを切らさずにコツコツと練習を積み重ねて、一走一走、集中して走っていくだけです。日頃の積み重ねが最後にはものをいうと思いますからね。グランプリに乗るために一年間頑張っているので、悔いを残さないように、(10月、11月の)記念でも競輪祭に繋がるようなレースを心がけて、最後まで諦めないで頑張りたいと思います」
伏見俊昭 (ふしみ・としあき)
1976年2月4日生まれ、36歳。身長181㎝、体重86㎏。最近の練習は「午前中は、街道でモガキ主体ですね。午後はウエイトトレーニングです。それと、ちょっと前までやっていたんですけど、最近はプールでの練習もやっています。泳いだり歩いたりして、体に強い刺激をいれています」