12月28日から始まるグランプリシリーズ2012。初開催のガールズグランプリには中村由香里、増茂るるこ、小林莉子が、ヤンググランプリには井上嵩が、そしてKEIRINグランプリには岡田征陽が出場と、東京勢が連日、開催を賑わせそうだ。97期在校1位としてデビューした井上は、S級入りからおよそ1年半が経過。若手の登竜門「ヤンググランプリ」に照準を定め、誰よりも強い気持ちで地元の大一番を迎える。
後悔しないように、自分の持ち味を出していきたい
97期在校ナンバーワン、卒業記念レース優勝と、その潜在能力は在校時から高く評価されていた井上嵩。2010年1月に立川競輪場でデビュー、翌年7月にはS級初昇格を果たし、先行主体のレースでステップアップを図ってきた。
「S級に上がってすぐは、抑え先行という苦手なところを課題として1年間くらいやっていたので、結果としてはこんなもんかなというところで、結果自体には納得していませんね。先輩にも、『抑え先行で勝てないといけないし、逆に抑え先行で勝てれば、自分の得意な形にもはめることが出来る』と言われていたんです。(在校1位として結果を求められる葛藤も)実際にはありましたけど、S級に上がる頃には在校1位と言わることはそんなになくなっていたので、そこまでの重圧はなかったですね」
武骨なまでに抑え先行を貫いてきた1年間。先輩たちのアドバイス通り、確かな手応えを得ることが出来たという。それが近況の1着量産にも繋がっている。
「抑え先行で長い距離をもがいてきたから、自分の得意なカマシ捲りになると、すごく楽だというところもありましたし、僕が主導権を握ってくると思って相手も組み立ててくるので、それを逆手に取ることもできます。僕が動いてからレースが動いていくという感じなので、自分で好きにレースを動かせるようになりました。今はカマシ主体ですけど、もちろん駆ける人がいなかったら僕が駆けます。それに、抑えて駆けても前みたいに8着とか9着とか大きな着を取ることが少なくなってきて、力が付いてきたんだと思いますね。1開催1レースくらいは型にはめることが出来たレースがありますし、松阪記念の最終日も1周半逃げることができました。ペース配分も出来るようになったし、レースも見えて、落ち着けて仕掛けられていますね」
まだ23歳の若武者。吸収できること、吸収しなくてはいけないことは山ほど。その一つ一つをかみ砕いて、一歩ずつ、確実に進んでいく。
「今の課題はレースの組み立てですね。自分がレース前に立てた作戦と違う展開になると、ちょっとまだ焦ってしまうところがあるので、まだそこが甘いです。(克服するには)レースを走るしかないですけど、あとはもっとレースを見て勉強することですかね。強い選手がどういう走りをしているのかは興味がありますし、毎日、パソコンでいろんなレースを見ています。一番目指しているのは関東で言ったら武田(豊樹)さん、最終的には長塚(智広)さんみたいに何でも出来る選手になっていけたら良いかなと思っています」
未来を見据える上で、井上が「ターニングポイントになる」と定めているのが年末のヤンググランプリだ。若手の登竜門として知られ、優勝者には現在の競輪界をリードする面々が名を連ねる。最初で最後のヤンググランプリ出場、さらに地元での開催。譲れない気持ちは強い。
「(ヤンググランプリは)やっぱり一番身近な目標ではあったので、出場が決まったときは、嬉しいとかそういう感情はなかったんですけど、身が引き締まりました。デビューしてちょっと経ってから京王閣でずっと練習をしてきましたし、そのバンクでの大きな舞台なので、気合いは誰にも負けないです。若手の強い人ばかりなので全員を意識しますけど、特に同期の稲毛(健太)、松岡(篤哉)さんには負けたくないという気持ちが強いですね。今年最後のレースなので良い形で締めて、このレースを足がかりに、次の新しい年に良い感じで入れればと思います。今回のヤンググランプリはひとつのターニングポイント的なレースになると思っているんですよ。そこで成長できるところがたくさんあると思うので、自分がそれをどう掴んでいくかだと思っています」
3着に敗れた10年9月のルーキーチャンピオンレース。
今回、リベンジなるか。
一発勝負といえば、井上にとって忘れられないレースが一つある。2010年、9月に岐阜で行われた97期ルーキーチャンピオンレースだ。井上は好位置を確保するも、松岡篤哉の8番手捲りに屈し3着に敗れてしまう。その悔しさも、今回ぶつけたいところだ。
「僕はすごい緊張してしまうので(苦笑)。ルーキーチャンピオンのときはひどくて、もう『脚が三角に回る』どころではなくなってしまっていました。でも、あの一発勝負の緊張感は好きなんですよね。そこも力にして、ヤンググランプリは頑張りたいと思います」
地元の大舞台、気合いでは誰にも負けてないです!
大観衆が押し寄せるであろうグランプリシリーズ2012。熱い地元ファンの前で、井上が大仕事をやってのけるか。新たなスター候補生の激突を、見逃すわけにはいかない。
「応援してくれることはありがたいことなので、その人たちのためにも一生懸命走りたいと思います。後悔しないように、とにかく自分の持ち味を出して、ヤンググランプリ優勝を獲れるように頑張ります。応援よろしくお願いいたします!」
井上嵩 (いのうえ・しゅう)
1989年2月10日生まれ、23歳。身長173㎝、体重82㎏。師匠は守谷三津雄(40期・引退)。在校成績は58勝で1位。ヤンググランプリまでの練習は「いつも通りですが、ちょっと強めにはやっています。どこからでも仕掛けられるようにしておかないといけないので、距離を多くモガク練習をしていますね」