インタビュー

オリンピックに沸いた2012年。中川誠一郎も日本代表としての看板を背負い熱い走りを見せた。ナショナルチームに復帰して掴んだ夢の舞台は、中川にとって大きな経験となった。競輪に復帰後も、抜群のスピードを武器に1着量産。念願の初タイトルも夢ではないところまで来ている。一回りも二回りも大きく成長した中川が、2013年の競輪界を大きく賑わす存在となりそうだ。
オリンピック前は5年分くらい練習をしました(笑)
 2012年はロンドンオリンピック出場という夢が叶った年であった。「妹(中川諒子・102期)の誘いがあったから」と中川誠一郎は自転車競技に再度、本格的に取り組んでナショナルチームに復帰、そして目標にしていたオリンピック出場までこぎ着けた。結果はチームスプリント8位、スプリント9位に終わりメダル奪取には至らなかったが、あの舞台を経験したことは大きなことだったと振り返る。
「2012年はもう、オリンピックのことしか考えていませんでした。メダルには届かなかったんですけど、出場することは出来ましたし、経験できたことは本当に大きいですね。オリンピックはずっと目標だったので、ひとつ達成できたというのはありますし、すごく貴重な経験をさせてもらいました」
 オリンピック後、競輪に復帰。「特に変わったところはないと思いますよ」と本人は語るが、以前にも増した破壊力ある走りを何度も披露。優勝こそ10月青森FIのみに留まったが、直近4カ月の勝率も53%と、まさに1着量産態勢に入っている。
「競輪に復帰後は、1場所、2場所は噛み合わなかったところもありましたけど、ずっとトレーニングをやってきましたからね。競技の練習は、違う自転車を使いますけど、自転車なので似たところがありますから。競輪と一緒というわけではないですけど、同じようなものだとは思っています。その成果が出てきているという感じはしましたね。(オリンピック前に集中して)3カ月も練習しましたし、そんなことはめったにないこと。それだけ練習をやったので、『練習はすれば強くなれるんだな』ということを感じました。3カ月で、5年分は練習したと思いますね(笑)。それにオリンピックには日本代表としていったわけだから、競輪でもある程度の結果を出さないといけないというのは思っています」
 10月、地元の熊本記念では3連勝で決勝に駒を進めた。練習の成果とともに、様々なことが良い方に噛み合ってきたことも大きいという。
「熊本記念のときは、(吉本)卓仁が頑張ってくれたのが大きいと思いますけど、最近は気持ちとレースがけっこう噛み合ってきていますよね。以前は、空回りしてしまったり噛み合わないときもあって、それで迷っておかしくなってしまったというのがけっこうあったんです。いくら練習してもうまくいかないときは悩んでしまっていたんですけど、今は良い感じで噛み合ってきて、結果も出てくるからやる気も出てきます。レースが噛み合うと気持ちも体も良い感じになるし、後半復帰してからはそういうことが出来てきたかなと思います」
今年も競輪と競技を両立していこうと思っています!

9月オールスター競輪の一次予選。
(6)中川は捲りで快勝した。
 まさに「覚醒」といったところであろうか。そんな中川が競輪でひとつの指標にしていることがある。それがGIの決勝戦進出だ。意外だが、GIIは2度決勝を経験しているが、GIではまだ手が届いていないのだ。
「なんとか早くGIの決勝に乗りたいです。乗れていないのが今の実力だと思っているんですけど、競技でせっかくあそこまでいけたんだからそこに追いつけるような形で競輪もしていきたいんです。そのためには、まずGI決勝に乗ることだと思います。乗れていないというからには何かが足りないんでしょうね。後半は少し成長できたと思いますが、決勝に乗るにはあとちょっとだと思うので、その足りないものを探して純粋に求めることだと思います。気持ちの面もそうですけど、自分の持ち味、長所を活かして脚だけでないところも競輪はあるので、もうひとつ強くならないと。そこがまず目標で、ひと開催でも早くGI決勝に乗りたいです」
 そう強く13年の目標を掲げた中川。では、競技の方はどう考えているのだろうか。
「これからも(競輪と競技を)両立していこうと思っています。何年続けるかは分からないですけど、とりあえず今は辞める気もないですし、今年も続けてみていけそうだったらまたもう一年というスパンで今は考えています」
 2013年、いやこの一年に限らず、今後の競輪界に大きな潮流を作り出すであろう中川。大ギア隆盛の今の競輪に対しては「僕は基本的にタテが得意なので、それを活かした攻め方、僕にあった走り方が見つかった」と楽しみなコメント。競輪、競技の両面での大活躍を期待したい。
「オリンピックでああいう違う雰囲気を味わえて刺激になりました。あそこまでいく過程で成長出来たと思うので、これを活かさないのはもったいないし、出したいですね。やれることをやっていって、13年はひとつ上のレベルにいけるように頑張りたいです。まずは少しでも早くGI決勝に乗れるように頑張ります」
中川誠一郎 (なかがわ・せいいちろう)
1979年6月7日生まれ、33歳。身長174㎝、体重77㎏。師匠はは瀬口慶一郎(77期)。在校成績は38勝で4位。妹である中川諒子については「もちろん刺激はもらっています。ガールズグランプリに出場していたので、僕も13年の一番大きな目標はグランプリなので、妹にも追いつけるようにも頑張ります(笑)」