インタビュー

飯野祐太が4月の共同通信社杯で、ビッグレース初の決勝進出を果たした。ここまでヤンググランプリ08を制するなど、その類い希なパワーを武器にして成長を続けてきたが、近況は先行基本ながらも、柔軟なレース運びも繰り出している。検車場でもひときわ目立つ鍛え上げられた鋼の肉体のパワーゲージは今まさにマックスチャージ。今後もその走りから目が離せない。
仲間のアドバイスを受けて変えた新フレームが更なるパワーを生んだ
 強さに偶然はない。飯野祐太はありあまるパワーを駆使してS級戦線で奮闘を続けている。だが、ビッグレースではヤンググランプリの優勝はあるものの、不思議なことに決勝進出は一度もなかった。そのパワーを、どう成績に繋げていくか。2つのキッカケが、飯野の前にある「壁」を打ち破ることになった。
「今年の1月はそこまで動けていなかったんですけど、3月の地元・いわき平記念から段々動けるようになって来ました。キッカケは、いわき平記念から新しいフレームを使っていること。そのフレームが良い感じに流れて、自分に合っているんですよ。山崎(芳仁)さんや鈴木謙太郎と松山の全日本選抜の時にいろいろ話をして、『こういう風にした方が良いよ』とアドバイスされたんです。(開催が)終わって、すぐにマキノさんのところに行って、新しくフレームを作りました。今までは、そこまでフレームを試したことがなかったんですけど、今回試したら、すごく良かったので、これなら自分に合っているフレームがもっとあると思うので、これからもどんどん試していこうかなと思っています」
 1つのキッカケは相棒ともいえる好相性の新車と出会ったこと。もう1つは昨年からコツコツと積み重ねてきたトレーニングの開花だという。不振脱却として取り入れた当初は「もしかしたら時間がかかるかもしれない」と語っていたが、大きな効果がもたらされた。
「ウエイトトレーニングの成果は、すごい出ていますね。もともと適性でウエイトだったんですけど、それもあって、ずっと力任せに踏んでしまっていたんですよ。だから2~3年くらい前に、ウエイトトレーニングの量を減らして、自転車のスキルアップを狙っていたんです。それが何となく分かってきたので、昨年の3月くらいからまたウエイトを再開したら、すごい自転車に力が伝わるようになりましたね。ウエイトは一時期やっていなかったんですけど、脳が覚えていたんですかね、マックスのパワーが1カ月半くらいで戻ってきました」
 この好循環はさまざまな波及効果を生んでいる。
「自分でも自在性が出てきたかなと思いますね。意識してやっているわけではないんですけど、昨年の伊東記念(12月)があったときくらいに、競走の間隔がすごい詰まっていて、練習がそこまで出来ていなかったんですよ。それでも先行基本に戦っていたんですけど、それで戦っていたら、勝手に身体が自在に動いたんです。まだヨコはそこまでやろうと思わないですし、先行基本でやっているのに、狙ってやっているわけではなく、身体が勝手に動くようになってきたという感じですね(笑)。もちろん自分の中ではこれからも先行基本で戦っていきたいと思っていて、捲りはそこまで必要ないとは思うんです。捲りはやっぱり状況が厳しい時に出せばいいかなと。先行基本で走って、例えばカマされたときに番手に飛びついていく、そういったことが一番の脅威かなと思いますからね。先行基本で戦っていけば、何でも出来るし、戦法の幅も広がっていくと思います」

4月の共同通信社杯・準決勝。
3着で初のビッグレース決勝進出。
 4月の共同通信社杯では、予選を2着2着で突破。準決勝は捲りで3着に入線して、デビュー以来初となるビッグレース決勝を決めた。決勝で5着に敗れたものの、あの舞台を経験できたことはとても大きかったと語る。 「初日は、先輩の小松崎(大地)さんと連係して、頑張ってくれるということなので、2人で決まるように走って、結果は2人とも二次予選に上がれました。でも二次予選、準決勝はたまたまですね。自分に展開が向いたというのもありますけど、それで届いたような感じでした。決勝は収穫がありましたね、いろいろ。決勝は自分では冷静にいたんですけど、いざ走ってみたら全然冷静ではなかったんです。いつもよりシューズを履くのも早くて、発走機についた時に、すごい緊張して、汗がすごい出ていた感じでした。今まで特に緊張したことが無かったんですけどね。謙太郎にも『楽しんできた方が良いよ』と言われていて、少しは楽しめたかなとは思いますが、緊張の方が大きかったです。決勝に乗れたことは少しは自信になったんですけど、二次予選も準決勝も展開に恵まれたと思うので、もっと先行基本で戦って勝ち上がれば、もっと自信にはなると思います」
 さらに、あの決勝で今後取り組むべき一番の課題も見つかった。 「共同通信社杯の決勝で思ったのは、ひとつの判断力。ワンテンポ遅れただけでも後方になっちゃうと感じました。村上(義弘)さんがカマシにいったときに、3番手の岡田(征陽)さんが1車身くらい遅れていたんですよ。それを見て『ああ、遅れている』と思ったときに身体が動かないで、『いかないと!』と思っていたら、深谷(知広)はもう来ていましたから。その反応の違いですよね、やっぱり。あそこでパッと仕掛けられればいいんですけど、深谷は自分より後ろにいたのに先にいかれてしまったので…。二次予選のときも、作戦通り後方から抑えて、早めに脚を使わせて、カマシを狙っていたんですけど、村上(義弘)さんを目がけていった時に、ハッと思ったら、遅れて8番手になってしまって…。これは鍛えるというより、経験だと思います。後は走る前にどれだけイメージできているかだと思います。(イメージトレーニングは)けっこうやっていて、逃げ切った一番良いときのレースを競走前に見たりして、この感覚だなとイメージしていきます」
先行基本に、一戦一戦を大事に走っていきます!
 もちろん、今後描いていくのはビッグレースで今以上の活躍をする自分の姿であろう。パワーチャージを完了させた飯野が、それを実現する日も近いのではないだろうか。 「今は昨年の伊東記念決勝3着で競輪祭の権利を取ることが出来たので、そのときから、競輪祭までに結果を出そうと思ってやっているので、そこを目標にしています。まだまだ半年くらいありますけどね。あとは一戦一戦、大事に戦っていくことです。これからも先行基本で、いろいろやっていこうと思いますので、応援よろしくお願いします!」
飯野祐太 (いいの・ゆうた)
1984年9月20日生まれ、28歳。身長174㎝、体重84㎏。在校成績は2勝で55位、師匠は平沼由充(83期)。最近の練習は「午前はバンクや街道で練習仲間のみんなと、午後からはウエイトやパワーマックスをやっている感じですね。共同通信社の1カ月前にウエイトを抜いたら、けっこう良い感触があったのて新しい調整方法が見つかりました。GIでもこれを試していこうかなと思います」