インタビュー

 GI(4日制以上)タイトル獲得へ、新田祐大が闘志を燃やしている。今年は記念初優勝に始まり、全プロ記念競輪のスーパープロピストレーサー賞を制するなど、近況は上位戦線でもしっかりと結果を残している。成績表にずらっと並んだ「1着」、その数字がGI決勝戦でも輝く日が、もうそこまで来ている。
今年は競輪に集中して恩返しがしたいです

5月の別府記念決勝ゴール。
成田和也を振り切って記念2度目の優勝。
 5月の全プロ記念競輪、そのメインであるスーパープロピストレーサー賞(SPR賞)で新田祐大が圧巻のレースを魅せた。打鍾で先頭に立つと、最終ホームからは武田豊樹との主導権争い。両者の真っ向勝負は最終コーナーまで続き、武田マークの神山雄一郎や飯嶋則之がゴール前で差し脚を伸ばす中、新田は堂々の逃げ切り勝ちを収めたのだった。
「今まで全プロ記念競輪と全プロ(競技大会)を何度か走った中で、SPR賞は初日優秀の選手しか出られないので、今まではS級S班のときしか権利が基本的になかったんです。SPR賞を獲る、獲らないよりも、その舞台に立てていなかったのが今までのレースだったので、今回はそこに立てたことがまず光栄でしたね。今までGI決勝に何度か乗ってはいましたが、力勝負というか、勝ちに行くという感じがあまり無かったんですけど、今年はFIにはじまり、GIII、そして全プロ競輪とちょっとずつ段階を踏む形で自分の力を出せているし、力を出せたことでレースの結果も付いてきたので、徐々に力も付いていると思うし、それを披露する舞台が多くなってきたと感じています」
 確かに今年に入ってからの新田からは凄みを感じるシーンが目立つ。2月の四日市GIIIでは記念初優勝。5月の別府GIIIでは成田和也を振り切って優勝を遂げた。この快進撃の要因はどこにあるのだろうか。
「今まではオリンピックを目指していたんですけど、そこで勝ち取れなかったメダルというものを、オリンピックが終わった瞬間に、どうしても獲りたいと思ったんです。次のオリンピックでメダルがどうしたら獲れるかを考えていった結果、どういうトレーニングをした方がいいのか、1レース、1レースへの気持ちの持ち方や、レースの内容をよく考えて走るようになってから成績が良くなったと思います。タイトルを獲ってもおかしくない力があるとよく言われていまして、今まではとりあえず自分の力を披露するという感じで走っていたんです。力だけならトップ選手とも引けを取らないものがあると思っているんですけど、競輪は動きの中での運もありますし、力勝負もありますし、レース運びが大事だと思うんです。そこが出来ている、出来ていないで力が同じでも、成績が変わってきてしまいますから。そこで少し考えるようになって、そのなかで自分の力を発揮するレースをすることによって、今度は、番手や3番手の後ろの先輩のサポートもしやすくなったと思います。先輩に限らず、付いてくれるラインの力を発揮して、競輪というものの中で戦える状態が出来たのかなと思います」
 もちろんオリンピックでメダルに届かなかったことは、悔しさで一杯だ。だが、日本代表として大舞台に立ったことで、芽生えた自覚があった。
「いろんな人たちとの出会いが多くて。その中には競輪を知らない人も多いので、『新田祐大って誰だろう』と競輪を知らない人は『新田祐大』を調べたりしますよね。そこで成績がイマイチだと、競輪って面白いのかなと思うと思うんです。競輪界トップの一流選手と話をして、そこからレースを見て、結果を見て、そうすることによって少しでも競輪を知ってもらえたらと思っているんです。そのためには、自分が強くならないと、出会った人にも説明が付かないので、自分が頑張らないとまずはいけないなと。そこから始まりました。競輪を知らない人に出会ったときも、今の競輪は名前を知っていても、イメージはあまりつかないので、そこから『すごい!すごい!』と見てもらうことから、興味がそそられると思います。ちょっとした差かもしれないけど、それが繰り返されれば大きな差になっていくので、自分のレースを見て、楽しいと思ってもらえるように頑張らないといけないなと思いました」
見ている方が納得できるレースをしていこうと思います
 原動力のもうひとつは、応援してくれる競輪ファンへの気持ちだ。昨年はオリンピックが主軸だったために、競輪を走る機会は少なかった。今年はその分も、と意気込みを見せている。
「今年はオリンピックがないので、まずは競輪を中心に頑張りたいと思います。競輪も競技も両方出られれば良いですが、(日程が)重複することも多いですし、昨年、五輪に対して競輪を休んだりしたので、応援してくれるファンの方に競輪で走って恩返ししたいんです」
 もちろん、その恩返しの一番は「4日制以上のGIタイトル奪取」だろう。
「今年の目標として掲げているのは、グランプリ出場、そしてグランプリ優勝なんですけど、そのためには賞金ランキングで乗るか、GIを獲ることが必要。そうなったときに今は賞金で上位にいるけど、GIを獲らないと難しいと思っています。GIを獲ることは、グランプリに確実に出られるということなので。ただ、やっぱりGIになると全プロのときよりも、もっと激しいレースになると思いますし、今回だけで気持ち的に緩まずに、油断せず、もっと強い相手を想像していかないといけないと思っています」
 脚力という観点からはすでにトップなのは間違いない事実。あとは、「競輪」で勝つための一手が必要だ。
「競輪で重要なのはラインなので、その強みを出せるようにならないといけないですね。勝ちにこだわって、その中で、負けてしまうのは悔しいですが、今は1レース、1レース考えて走るようになって、見ているファンの方にも納得してもらえるようなレースをしたいなと思っています。自分だけの競輪という感じではなく、周囲も引き込んでいくようなレースですね。ラインの誰かが1着かも知れないけど、まずは自分の1着を想像していないと1着は取れないと思っています。そうしてからは積極的なレースも出来ていますし、ラインで決まることも多くなっています。これからも1着を心がけていきたいです」
 機は熟した。あとは大舞台の表彰台の頂点に立つ、ファンの多くが待ちわびているその瞬間を実現させるだけだ。
「競輪場で応援して下さる方、画面を通して応援して下さる方も多いと思いますが、いつも感謝しています。それを恩返しできるようにと思って毎回走っています。頑張っている姿と毎回のレースを楽しみに見て欲しいです。そして自分のダッシュ、スピード持久力を活かしたレースを見ていただいて、『競輪って楽しいな』と思えるような新田祐大という選手の走りを目に焼き付けてもらいたいなと思います」
新田祐大 (にった・ゆうだい)
1986年1月25日生まれ、27歳。在校成績は2勝で52位、師匠は班目秀雄(引退)。最近の練習は「全プロが終わって、富山FIもあって、間隔が短くあまり時間がないので、本当に調整になってしまっていますが、その中でも勝たないといけない。練習の量は落ち気味ですが、それも上手く活かしたレースをしつつ、さらに目標のGIに合わせて練習も組み込んでいかないといけないと思っています。難しいですけどね」